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復讐者たち~元公爵令嬢と生意気ネクロマンサー シーズン3~  作者: そら・そらら


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33/46

33.ナイフ

「エドガーはリフと一緒に兵士の所に行ってくれ。事情を話して、ナベプタの家まで確保に向かわせる。それで大人しく逮捕されれば終わりだ。死んだ奴の冥界送りはまあ、なんとかする」

「わかりました。なんとか、とは?」

「そいつが未練を持っていたとして、ナベプタが捕まり罰を受けるだけで満足するかは微妙だから。とにかく、捕まえに行く時はエドガーも同行しろ。死者のために祈ってやれ」

「わかりましたよ。レオンは何をするんですか?」

「万が一、ナベプタが既に動き出している可能性に備える。ルイとユーファと一緒に、街を見回る」

「この街、広いわよ。ナベプタと都合よく会うなんてあるかしら」

「さあ。可能性は低いな」

「そうよねー」


 気楽な仕事だ。


「出くわしてしまったら、今度もボコボコにぶん殴って散々痛めつけて、死者の恨みを晴らさせてもらおう」


 死んだマデロスという男の葬儀は、きっとまだ行われていないのだろう。死体はもう見つかってはいると思うけど、犯罪の証拠ということで兵が持っているはずだ。

 だからそいつの霊は今も現世にいて苦しんでいる。ナベプタに憑いている可能性が高い。殺された原因である彼をボコボコにすれば、マデロスという男は満足するはず。


 会ったことの無いその男の心情なんかわからないけどね。


「私は留守番ですね! お夜食作って待ってますね!」


 リリアは楽な仕事でいいわね。文句はないけど。


「さあ。さっさと終わらせるぞ」


 レオンの言葉に、みんな立ち上がった。



――――



 久々によく寝られたナベプタが目覚めた時、まだ日は高い位置にあった。真昼だ。

 不意に、ドンドンと扉が叩かれて、彼は飛び上がってしまった。


「わたしです。アーシャです。ナベプタさんいますか?」


 ああ。聞きたい声だ。扉まで小走りに向かって開ける。


「良かった。ナベプタさん会いたかった!」

「おっ」


 顔を見た途端、アーシャは抱きついてきた。思わず変な声が漏れる。

 不安そうな顔の彼女。


「い、一体。なにがあった?」

「役所がビョルドンの拠点に踏み込んで捜査を行いました。ビョルドンは組織の壊滅を恐れて人員を逃し、自身も逃亡しています。みんなに声をかけている様子です。しばらくバラバラに身を潜めて、ほとぼりが冷めたら集まろうと」

「みんなとは、アーシャにも?」

「わたしには、そばにいてほしいとビョルドンから遣いが来ました。世話係とか、そんな仕事を任されるのでしょう。その。身の回りの世話以外にも……」


 言い淀んだアーシャは自分の体を抱きしめた。


 あの男。娘みたいな年の差の女の体を本気で求めているのか。なんて非道な。許せない。


「ビョルドンも不安なのでしょう。お気に入りだけで周りを固めて、どこかに潜伏しているんです。わたしは、彼の命令に背いて逃げました。あなただけが頼りなんです、イビルスレイヤーさん。わたし、怖い……」

「大丈夫。俺が守る。絶対に」


 今度はナベプタから、アーシャの体を抱きしめた。


「ナベプタさん。これからのことを話しましょう」

「あ、ああ。何をすればいい?」


 そう言われて、体を離す。妙に冷静な口調だった。


「これはチャンスでもあります。ビョルドンの組織が危機に陥っているので、壊滅させるなら今です。なので、これを」

「これは……!」


 アーシャがナベプタに何かを手渡した。


 ナイフだった。よく研ぎ澄まされているのか、白い刃がきらめいている。


「ナベプタさん。単にぶつかりに行くだけでは倒せない相手もいます。けど武器があれば別です。これを腰の高さに構えて、全力で敵にぶつかりに行ってください。そうすれば、相手をほぼ確実に殺せるか、動けない程の傷を負わさられます」

「でも。武器は……」

「お願いします、ナベプタさん。わたしのためだと思って」

「……ああ」


 ただ闇雲にぶつかりに行くだけではない。明確な殺意を持っての攻撃。

 ナベプタがそれに抵抗を持ったのは、感性として当然だった。


 けれどすぐに思い直した。それがなんだと言うのか。ナベプタは既に人を殺している。死んで当然のクズだ。これから殺すのもそうだ。アーシャのような可哀想な少女を囲って食い物にしようとする悪人と、その仲間。殺すしかアーシャを守れないなら、やるしかない。


「わかった。やる。誰を殺せばいい?」

「来てください。ビョルドンの組織の幹部たちの居場所はわかっています。仲間たちがおびき寄せた者もいます」

「仲間たち?」

「なんと言いますか。組織内にもわたしに同情する人はいるんです。ビョルドンの仲間ではありますから、完全に信頼はできません。でも利用できる」


 そうか。力関係があるんだな。アーシャは可愛らしいから、守ってやりたいと考える男が他にいるのは理解できる。

 それが少しだけ嫌だった。アーシャは俺のものだ。


「ですがナベプタさん。本当に信頼できるのは、あなただけです」


 その言葉が聞きたかった。

 アーシャについていき、家を出る。その際彼女は少し振り返って。


「ところで、リフはどこですか?」

「ああ。外に出しているよ」

「どこにいるか、ご存知ですか?」

「いや、わからない」

「そうですか……気をつけた方がいいかもしれません。彼、頭は回りますが子供です。わたしたちのこと、兵士に密告するかも」

「えっ」

「既に人を殺していて、これからも罪を重ねるとリフの前で言ってしまいました。彼はわたしに懐いている。わたしの援助がなければ暮らしていく術もない。家もない。だからわたしたちを裏切ることはしないと思うのですが……」


 少なくとも、住む家から追い出してしまった。行き場を失ったリフが助けを求めて、その過程でナベプタたちのことを話すことは十分に考えられる。

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