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復讐者たち~元公爵令嬢と生意気ネクロマンサー シーズン3~  作者: そら・そらら


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13.覆面デブの噂

 リリアは街の貴族のメイドたちと仲がいい。お金持ちの後ろ暗い話なんかも聞くそうだ。

 もちろん、こういう平和な話題も多く、流行の情報も入ってくる。本当に、燻製ブームが来てるんだろうな。



 さらに数日後。私とレオンの休日が来た。


 ニナは母と兄と相談してシフトを決めているのだけど、なぜか気を回した感じで、私とレオンの休みを重ねて設定している。


 まあね。私たち、仲はいいから。大抵は一緒に行動してるから。

 でも。


「デート楽しんできてねー」


 おいこらニナ。それは違うからね。デートじゃないから。ふたりで出掛けるだけだから!


 というわけで、レオンと私とで街を歩く。何か美味しいもの食べたいな。流行りの燻製以外で。


「ほら見ろよ。屋台の燻製屋だ」

「本当だ。あそこの店主、前は別の商売してなかった?」

「してた。流行りを見て切り替えたんだな」

「売れるといいわねー」


 庶民の間でも流行しているのは本当で、屋台には列ができていた。

 独特な香りは人を引きつけるようだ。


 ところで、巷には燻製以外にも人々が話題にしていることがあって。


「覆面のデブ?」


 遅めのランチに寄ったナディアのお店で、そんな話を聞いた。


「そうなんだよー。なんか、最近よく聞くんだよねー」


 客足も落ち着いた頃にやってきた私たちに、ナディアは雑談をする余裕があるらしい。

 それよりも、なんだその不審者は。


「正義の味方を名乗ってるらしいよー。勇敢なるイビルスレイヤーって自分で言ってる」

「うわダサぇ! 自分で名乗ってるのが、さらにダサい」


 レオンが笑いながら反応した。謎のデブへの嘲笑を隠しもしない。そんなに笑うことないでしょう。

 気持ちはわかるけど。私だって、なんかダサい名前だって思ってる。


「で、その勇敢なるイビルスレイヤーさんは、何をやってるんだ?」

「悪を成敗する、みたいなことだってー。正義の味方だからねー」

「自警団みたいな仕事かな。悪って?」

「酔っぱらって女の子に手を出す男の人とか。お店にクレームつける人とか。ナンパしてる人とか。そんな感じだよー」


 まあ、好きになれない人たちではある。


「そういう人たちを突き飛ばして怪我させて、悪いことはやめなさいって言うんだって」

「暴力だな」

「そうねー。暴力はいけないわね」


 それが一般論というやつだ。レオンの場合、必要な時は遠慮なく暴力を振るってるから、この点に関しては謎の不審者を非難できないんだけど。気にする子じゃないわよね。


「他にはないのか? そいつの情報」

「何者なのか訊かれなくても、自分から名乗ってるらしいねー」

「うわ面白い。このダサい名前を格好いいって思ってないと出来ないよな! しかも押しつけがましい!」

「太った男の人らしいけど、詳しいことはわかんないんだって。夜だけ活動するから、暗がりでよく見えなくて。案外、太ってなくてマッチョな男の人かもしれないねー」

「体格がいいとしか知らないわけか。他には?」

「女の人には優しいって」

「下心が見えてるなー。モテたいって気持ちを隠せてない。だったら素顔で活動しろよ」


 なんというかレオンにとっては、全部が馬鹿馬鹿しい相手らしい。


「確かに変な人ではあるよねー。でも、助かったって人も多いんだよ? うちのお客さんの女の子なんだけど、悪い男に連れ去られかけたんだって。でも助けてもらったって」

「それは良かったわね」

「どうやって助けたんだ?」

「大きな体で突き飛ばして、その後も何度もぶつかって壁に押しつけたって」

「そうか……そんなやり方してたら、いつか死人が出る」


 レオンの懸念はいつもそれだ。


 勇敢なるイビルスレイヤーなる人物が、街の悪い人間を相手に暴れている。何者か不明だけど、ただの一市民で、権力者や治安維持の兵士などではないのだろう。だから本来その仕事をする立場ではないから、許される行為ではない。


 悪を倒しているから善行なのかもしれない。でも、容認すべきではない。


「正義が暴走すると怖いからな。自分が正しいと思い込めば、敵対する相手に何をしても良いと考えるようになる。エスカレートして、死者が出る。殺されたら無念だから、簡単には冥界には行かないぞ」

「それを送るのは大変そうね」

「しかも、俺としても助けたくはない」

「悪人って思われるような行動を取る人だものね。レオンもやる気は出ないか」


 善人を送るのは進んでやるけれど、レオンにも好き嫌いというのはある。


「いつか面倒なことになるぞ」

「そうね。止めるべきね。でもどうやって?」

「そりゃ、ボコボコに殴って、お前は英雄なんかじゃないと教えるんだよ」

「本気で言ってる?」

「ちょっとだけ」


 暴力はいけないのよ? こいつは、死者のためなら平気でやるけど。


「まあまあ。今のところ死んだ人はいないから。感謝してる人も多いし、放っておいてもいいんじゃないかなー?」


 ナディアの言葉に、私たちは黙るしかなかった。


 たしかに。怪しい市民がいたとして、私たちには探してボコボコにする権利は無い。実害が出たら別だけど、それまでは無関係な人間だ。


「わかってるけど。もう少し詳しく知りたい。というか、会えないかな」

「あんまり深く関わるの、良くないと思うわよ」

「でも……」

「……わかったわよ。今日だけね。夜の街で探してみましょう」


 レオンが気にしてるなら、私も協力してあげたい。死者が絡む問題なら、彼は私に気を遣っているわけだし。


「ふふっ。ふたりとも、今日も仲いいねー。お互いが大好きなんだねー」

「ちょっ! そんなんじゃないから! 私はただ、クソガキのわがままに付き合ってるだけだから!」

「うんうん。わかってるわかってるー」

「わかってない人の言い方!」


 頬杖ついてこっちを見つめるナディアは楽しそうで。怒る私を見て、さらにからかってくる。

 というか、レオンも何か言いなさいよ。あなたも、からかわれてるのよ! なんでちょと嬉しそうにしてるのよ!?

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