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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第3章:禁じられた魔女たち
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76:勇気の奇蹟

 エタラバナと戦うフィンリーをサポートすべく、それぞれの持ち場に向かったリリー、アイリス、ディアナ。


「ささってと!」


 リリーとアイリス、そしてジャンヌはエタラバナの人形に魅了されてしまった失踪者の下へと着いた。


「うしっ!そんじゃサクァヌエル。この人にかけられた『人形の魔法』を調べて!」


『了解した』


 ダガーナイフの切っ先を失踪者にそっと当てたリリーは、例によってサクァヌエルに『人形の魔法』の構造を分析させた。


 構造さえ分かれば、解呪することができる。


「どうだリリー。解けそうか?」


 リリーの心の中で何回もこの手法を見てきたジャンヌの精神が宿った人形が問うた。


「ういっ!?」


「どうした?」


 素っ頓狂な声を上げた後、リリーは眉頭にシワを寄せた。


「ママどうしよ・・・。この魔法、思ってた以上にバチやばに複雑・・・。こりゃボクに解けるかどうか・・・」


「なんとかできんのか?」


「ん~・・・。時間かければどうにかなるかもしれないけどそれまでエタラバナが大人しくしてくれるかどうか・・・」


 リリーは横目に、フィンリーとディアナと対峙するエタラバナを見た。


 フィンリーは冷静に構えているが、ディアナにはやはり緊張と不安が見て取れる。


「さぁ。これでお前を倒す準備が整った。そろそろ覚悟を決めておいたいいんじゃないか?」


 エタラバナに敗北を受け入れるかのような物言いをするフィンリーだったが、対するエタラバナは口元んに手をやって上品に、しかし侮辱するかのような笑いをした。


ディアナ(そっちの子)は準備ができていないんじゃなくって?」


 ディアナを見ると、眉尻が下がって手はプルプル震えており、息も荒い。


 目の前の『禁位の魔女』エタラバナに恐怖の色が拭いきれてないのが見て取れた。


「あっ、あなた如き・・・!!ちっ、ちっとも怖くなんかありませんわ!!」


 エタラバナの挑発に乗って、気休め程度の威勢を見せるディアナ。


 エタラバナはそんなディアナに目を見開き、『くぱぁ・・・!!』と鋏角に守られた口を四方に開いて威嚇した。結果ディアナは更に萎縮してしまうことになってしまった。


「ふふっ。可愛いっ♪」


 ディアナが怖気づいた隙を狙って、またもやエタラバナは失踪者達の周りに麻痺毒の綿毛を撒き始めた。


「くっ・・・!まずいな・・・」


 リリーは失踪者の魔法を解呪するのに手一杯だ。となると、このジャンヌとアイリスで失踪者を守らねばならない。しかし、これほどの綿毛を果たして捌き切れるかどうか・・・。


「わっ、私に任せて・・・!!」


 アイリスが片手盾が付いたメイスを抜いて、それを天高く掲げた。


「ぐっ、グヴオエーラ!!『勇気よ皆に(レオデート)』!!」


『あいよアイリスっ!!』


 メイスから燃えるような髪を持つ少女の天使、グヴオエーラが出てきてジャンヌとアイリスに赤い光の粒子を振りかけた。そうしたらジャンヌとアイリスの力が飛躍的に向上し、先程とは見違える速さで麻痺の綿毛を叩き落とし始めた。


「そうかその手があったか!!助かったぞアイリス」


「いっ、いえ!とっ、当然のことを、、しただけですから!!」


 これがアイリスの概装天使・グヴオエーラの『勇気の奇蹟』の力である。


 自分の心の中の勇気をそのまま自分の力に還元できるのである。そしてそれは、ともに戦場を駆ける仲間にも付与することができる。


 引っ込み思案だが、勇気に限ってはクローバー寮の三人の中では一番強いアイリスにとって、まさにおあつらえ向きの天使だ。


 グヴオエーラの奇蹟で力が増強されたアイリスとジャンヌによって、エタラバナ自慢の綿毛はその力を発揮する前に、粉々になって『はらはら・・・』と床へと落ちてゆく。


 その間に、リリーはサクァヌエルの奇蹟によって『人形の魔法』の解呪に専念する。


 鉄壁の守りの布陣がここに完成したのだった。

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