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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第3章:禁じられた魔女たち
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73:麻痺綿の輪舞

『蜘蛛の魔女』としての本性を現したエタラバナにリリーは驚愕した。


「なっ、なにあのカッコ!?まんま蜘蛛じゃん!!」


「驚くことではない。悪魔の血が混じっている魔女には『本来の姿』というのがある。私もそうだったであろう?」


 そういえば確かに、ジャンヌもマリアと戦っている内に徐々に人間離れした姿になっていったのをリリーは思い出した。


「じゃあゴンドルの森でマリアせんせいと戦った時のママのアレも本当の姿なの?」


「まぁ私の場合はあれでざっと()()()()()だったがな。」


 100%フルで変身した時のジャンヌの姿がどんなものか想像して、リリーはゾッとしない。


 二人が雑談している間に、エタラバナはその蜘蛛の身体から生えた足をバレエダンサーのように巧みに使ってリリーとジャンヌの周囲を舞った。


 醜い風貌なはずなのに、リリーはその細やかな動きに目を奪われ、つい「綺麗・・・」と思った。


「見惚れている場合かしら?」


 リリーの気持ちを見透かしたエタラバナが忠告すると、リリーとジャンヌの周りにエタラバナがばら撒いたタンポポの綿毛のようなものが舞っていることに気付いた。


 エタラバナは、両腕を左右に広げて赤い花でできたような杖を作った。


「ダンケ・パラリシス。」


 まるで杖を使って舞う綿毛に着火するような動作をしながら唱えると、辺り一面にスタンガンのような電気の火花が散った。


「いった!?ビリビリする!!」


 焦るリリーを見ながらエタラバナは「ふふっ・・・。」と笑った。


「どう?私が麻痺魔法で作った綿毛ちゃん達の威力は?痺れて全く動けないでしょ?」


「ん~・・・!!ってあれ?痺れがなんか引いてきた。」


「・・・・・・・なぁんですって!?」


 びっくり仰天するエタラバナを見て、ジャンヌを「くっくっくっ。」と喉を鳴らして笑った。


「生憎だったな。その子には毒の類いは一切効かないぞ。お前の大技の舞いは不発に終わったわけだ。ちなみに私は人形だから最初(はな)から効かんぞ?」


 どこまでも相性の悪い手合いだと思い知らされ、エタラバナは苦々しく感じた。


 しかし、すぐに不敵な笑みを浮かべ・・・。


「あらそう?だったらこれはどうかしら!?」


 エタラバナは再び麻痺毒の綿毛をばら撒いた。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 完全に愛する者を模した人形の虜になっている人達は、危機的状況にも関わらず一切逃げようとしない。


 それを見たジャンヌは、今までにないくらい焦って、綿毛を払い落しに向かった。


「ママどうしたの!?」


「死なないお前でも少しは痺れた綿だ!!他の普通の者が食らったらどうなる!?」


「・・・・・・・ヤバい!!」


 恐らく肺まで麻痺すること間違いなしだろう。


 もしそうなれば・・・。


 血の気が引いたリリーはジャンヌと一緒になって綿毛を払い落しに無我夢中で駆け回った。


 人形の魅了が強すぎるので犠牲者を建物から出すことは不可能だ。


 つまりこの方法でしか守る手段がない。


 エタラバナが連れ去った犠牲者を守るために綿毛を払い落すことに全力を尽くすジャンヌとリリー。


 エタラバナはその様を頬杖を付きながら呑気に眺めている。


「よし!!あと少しだ!!頑張れリリー!」


「うん!!」


 あと少しで捕まっている人全ての周りに纏わり付いた綿毛を払い落そうとした、その時だった。


 リリーの両腕にエタラバナが人形を操るのに使っていた赤い糸が巻き付き、エタラバナが勢いよく引っ張るとリリー両腕が大根みたいに「スパン!!」と切り落とされた。


「え?」


「あなたの方が厄介そうだから、こうさせてもらったわ。」


 切り落とされた腕を呆然と眺めるリリー。


 しかし事を理解して・・・。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!ボクの・・・手が・・・手があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 痛みは全く感じない。


 リリーを絶叫させたのは、斬られた腕の断面から露わになった骨の先と、そこから滝のように流れる大量の血だった。


「リリー!!しっかりしろ!!」


「はっ・・・!!はっ・・・!!はっ・・・!!」


 過呼吸になったリリーを、ジャンヌが必死になだめようとする。


「まっ、ママっ・・・!!」


「大丈夫!大丈夫だ!!」


 ジャンヌの必死の呼びかけによってリリーが落ち着きを取り戻したおかげで、リリーの腕の断面から新しい指が顔を出していた。


「切られた腕から新しい腕が生えて来るなんて・・・。相当な化け物ね、その子。」


「貴様・・・私の娘に何をしてくれ・・・っ!?」


 驚愕するエタラバナにかかろうとするジャンヌだったが、失踪者の周りに新しい綿毛が舞っていることに気付き、動きを止める。


「いいのかしら?振りだしに戻っちゃったわよ?」


「っ!最初からそのつもりだったな?」


 エタラバナの本当の目的はリリーとジャンヌを持久戦に持ち込むことだった。


 このまま失踪者を庇って戦い続ければ、先ほどのリリーのような隙を突くことができる。


 そしてそのままジリ貧へ・・・という算段だ。


「さぁ~て。どこまで持つか見ものね。」


「くっ・・・。」


 卑劣な罠と、それにまんまと乗っかってしまったことに、ジャンヌは歯がゆい気持ちになる。


 対峙するジャンヌとエタラバナ。


 すると、目の前のショッキングな光景に意識朦朧とするリリーにある光景が文字どおり()()()()()()()


 ステンドグラスを割って廃聖堂に突入する三つの影。


 翼をはためかせる彼らはリリーの目に、まるで三人の天使のように見えた。


「これはまた・・・ずいぶんややこしい状況だな。」


「何あなた達?今いいとこなんだから邪魔しないでくれる?」


「これは失礼。」


 エタラバナの目の前の男は、懐から手帳を出してそれを彼女に見せた。


「聖天教会庁異端祓い局のフィンリー・キングストンだ。テカーノヴァ街における失踪事件の犯人として、お前を捕らえにきた。『人形使いの魔女。』。」

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