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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第3章:禁じられた魔女たち
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68:制御不能のガードロボット

 少し棘のある目鼻立ち、藍色の毛先の白髪、燃えるような灼眼。


 間違いない。


 リリーがずっと会いたいと焦がれていた母、ジャンヌだ。


「寂しい思いをさせてしまったね」


 ジャンヌは両手を広げ、リリーを抱きしめようと近づいてきた。


「ママ・・・」


 リリーは優しい顔を向ける母親に甘えようと、ゆっくり近づいて行く。


 しかし寸前で躊躇して、両手を突き出して下がった。


「どうしたんだい?」


「危ない危ない!!お前はママじゃない!人形魔法でボクの記憶を読み取ってできた偽物だ!!なるほどこうやって人形を本人そっくりに作ってるのか~!考えたな!!」


 顎に手をやってジロジロと眺めるリリー。


 しかし強がるリリーを、ジャンヌは優しく、ふわっと抱きしめてきた。


「え・・・ええっ・・・!?」


「ずっとこうしてもらいたかったのだろう?」


「だっ、騙されるもんかっ。ボクはママを見つけて、「わ!?」と驚かすために異端審問官養成学院に入ったんだ。こんなことをしてほしくて、入ったんじゃ、ない」


 拒むリリーだが、言葉とは裏腹に、目がだんだん潤んでくる。


「その必要はないじゃないか。だってママはここにいるだろう?」


「違う・・・!!違う・・・!!違う・・・!!」


「これからは、ずっ~と一緒だよ。リリー」


 ・・・・・・・


「わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!」


 最後のトドメの言葉を聞いた途端、リリーは堰を切って泣き出してしまった。


「ママっ!!どうしてボクから遠くに行ってしまったのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!もうボクを捨てないで!!お願いだから一緒にいてえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」


 泣きじゃくるリリーの頭を、ジャンヌを模した人形はさわさわと撫でる。


「どうやら会いたい人と会えたみたいだね~?」


 礼拝堂の奥から、にまにました顔でエタラバナが出てくる。


「これで分かったでしょ?もう二度と会えないと思っていた人に会えた時こそが、何物にも代えがたい幸せだって」


 腰に後ろ手をやって、エタラバナはリリーに勝利宣言をする。


「これであなたはお母さんと永遠に一緒・・・っっっ!!!」


 ジャンヌの顔を見た途端、エタラバナの顔が凍り付いた。


「そっ・・・その瞳に髪・・・!!まさかあなたって・・・()()()()()が言っていた、ジャンヌの・・・!!!」


 狼狽えるエタラバナは、リリーの素性に心当たりがあるかのような言動を見せる。


 彼女を手引きした()()()()()のことも一緒に。


「リリー。これからずっと一緒一緒一緒一緒一緒いっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょリリーリリーリリーリリーリリーリリーリリーリリーリリーリリーリリーリリーリリーいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょいっしょ・・・」


「まっ、ママ・・・!?」


 ガクガクと痙攣したジャンヌ人形は、同じ単語をバグが起きた機械みたいリピートし続けると、首が『ガクン!』と前に折れる。


「まっ、ママ!!大丈夫!?」


 理解できない事態に、リリーはひどく混乱してジャンヌの身体を何度も何度も揺する。


「もっ、もういいわ!!その子の相手は私がやるからお前引っ込んどいで!!」


 ・・・・・・・


「私に命令するな。クモが」


 ジャンヌの人形が恐ろしげな眼光でエタラバナを威嚇する。


 いやこれは・・・果たして()()と言えるのだろか。


 この突き刺し、燃えてしまうような威圧感。


 まるで()()()()()()()ではないか。


「ママ?」


「魔女狩りが魔女に誑かされるなんて何て失態。手の内が分かったのであれば早々におとりから引き下がるべきであろうが」


 ジャンヌが『コツン』とリリーの額に軽く叩く。


「なっ、なんで・・・?」


「とにかく今は()()()()()に伝えるのが先決だろう」


「え?今なんて?フィンリーにって・・・今ボクの前にいるのはママで・・・ええっ!?」


 知りたいことが多すぎる。


 何故ジャンヌの人形が意思を持ったかのように自立行動するようになったのか?


 何故ジャンヌが知りもしないはずのフィンリーの名前を知っているのか?


「りっ、理解できないわ。「ジャンヌの娘にジャンヌの不死の力が宿っている」って話は聞いていたけど、なんでその娘が触れた人形がジャンヌみたいに動けるの!?」


「その()()()()()宿()()()()()ことと()()()()()()()ことがカギとなっているのさ」


「どういう・・・はっ!まっ、まさか・・・!?」


「やっと気づいたみたいだな、クモ」


 リリーに込められたジャンヌの不死魔法は、生命魔法をベースにジャンヌが編み出したオリジナルの魔法。


 いわば精神の塊、魂の断片。


 それを宿したリリーがエタラバナ手製の人形に触れた瞬間、彼女の人形魔法が暴走し、人形にジャンヌの精神そのものが上書きされてしまったのだ。


 尋常ならざるジャンヌの精神だからこそ起こってしまったイレギュラー。


 エタラバナがリリー縛り付けるために作った人形は、造物主の手を離れた制御不能なガードロボットと化した。


「私の娘をつまらぬ手品で懐柔しようとした代償は高く付くぞ。覚悟はできているだろうな?」


 その敵意は、愛娘を傷つけんとする全てに向かう。

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