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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第3章:禁じられた魔女たち
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66:久遠の館

 夫婦を追いかけると、彼らは公園の森の奥にある廃聖堂に足を踏み入れた。


 庭は落ち葉や枯れ枝で荒れ放題で聖水を汲み取るための水場の水は枯れ果て、美しいステンドグラスの窓には外からでも分かるくらい蜘蛛の巣が張ってある。


「ここが『久遠の館』ってヤツみたいだね。」


 ようやく問題の建物を見つけたリリー。


 さて。次はどう出るべきだろうか?


 このまま中に侵入するか?


 それともサクァヌエルに頼んでフィンリーに知らせるべきか?


「どうしたらいいと思う?」


『そうだね。フィンリーにはいつでも伝えられる。リリーは戻った方がいいと思う。』


「やっぱりそう?ん~‥‥‥でもなぁ‥‥‥」


 最適解をサクァヌエルから聞いたのに、どうもリリーの歯切れが悪い。


『どうしたリリー。何か引っかかることでもあるのかい?』


「いや~その~‥‥‥ボク的には、中に入ってもいい気がする。」


 あまりに無謀な提案に、サクァヌエルは『え!?』と声を上げた。


『何を考えているんだよ!中にどんな危険があるか分からないじゃないか!!』


「でもボクの今回の仕事はおとり捜査だよ!?おとり捜査だったら、引っかかったフリをして、中に入らないとダメなんじゃないの?」


『でも君はここまで引っかかることなく久遠の館を見つけたじゃないか。だったら僕がこの場所のことをみんなに知らせて君は帰ればいい。おとりの役目をする必要はなくなったんだ。』


「え~!!でもそれじゃあフィンリーせんせいに怒られない~?」


「‥‥‥リリー。本当のことを言ったらどうなの?」


「‥‥‥え、なにが?」


 核心を突かれたみたいで、リリーはしらばっくれる。


『とぼけるなよ。君、さっきあの夫婦の妻にかかっている魔法を見た時、()()()って思ったでしょ?僕とリリーは感情を共有してるんだ。隠そうとしたって無駄だよ。』


 観念したリリーは「はぁ~‥‥‥!!」と大きくため息を吐いて、頭を強く掻いた。


「‥‥‥『人形魔法』だよ。」


『‥‥‥え?』


「あの奥さんの関節のところに赤い糸みたいなのがグルグル巻き付けられてたの。あれは人形を操る糸なんだ。」


『人形?でもあの女の人‥‥‥』


「そう!!完っ全に()()()()()()()()()()()!!」


 サクァヌエルが言わんとしたことを、リリーが遮って先に言った。


 そこから彼女のお得意のマシンガントークが始まる。


「人形魔法っていうのはその名の通り人形を操る魔法なんだ!!タイプとしては元からできてる人形を操んのと、魔法で一から人形を作ってそれを操るのに別れてんるんだけどね。あの人形はおそらく魔法で作ったタイプのものだろう。だけどあんなに人間そっくりに作られた人形を見るのは初めてだ!!一回ママの人形魔法を見せてもらったんだけど、ママですら頭と胴体、腕や足といった人間の分かりやすいパーツを再現するのが精一杯だったのに、あの人形は髪の毛とか目玉とか耳とかその細かい部分まで本当の人間に見える!!人形魔法においてはママより腕がいいかもしれないよ今回の魔女は。そもそも人形を一から作るには土魔法や生命魔法の派生の木魔法とかの猛特訓が必要で‥‥‥」


『タイムタイムタイム。』


 声だけしか聞こえなかったので何とも言えないが、サクァヌエルは立てた左手に横にした右手を乗せてサインを送った。


『リリーが興味深々なのは分かった。だからあの廃聖堂に入って『久遠の館の魔女』の魔法をもっと間近で見たいと?』


「そっ!ねぇ~いいでしょ~?ちょっと覗くだけでいいから~。」


『‥‥‥リリー。』


「え!?いいの!?」


『ダメに決まってるでしょ。』


 少し間が開いて、もしかしたらいけるかもしれないとムードが流れていたのでリリーは落胆した。


「ちぇっ。やっぱダメか。」


『危なっかしいったらありゃしないよ。さっきも言ったでしょ?ここを見つけた時点で僕達の役目は終わったの。いい?』


「はぁ~い‥‥‥。」


 サクァヌエルの言う通りにすることを決め、リリーは館から離れることにした。


「何か御用?」


「うおっ!?」


 後ろを振り向くと、バラのように紅い髪を持ち、白いフォックスファー付きのコートをジャケットを羽織った妖しげなオーラを醸し出すスレンダーな女が立っていた。


「こんな時間に女の子が一人で‥‥‥。どうしたのかな?」


「ええっと‥‥‥あなたは?」


()()()()()()()()()()者よ。名前はエタラバナ。よろしくね。」


 リリーはギョッとした。


 どうやら件の失踪事件を起こしている魔女と出くわしたみたいだった。


「りっ、リリークローバーですっ。よっ、よろしくお願いしますぅ‥‥‥」


 リリーと握手をしたエタラバナはニタァと何とも不気味な笑みを浮かべた。


「あなた‥‥‥誰か会いたい家族はいるのぉ~?」


 どうやら。おとり捜査のおとりの本領を発揮する時が来てしまったみたいだ。

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