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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第1章:魔女の王と娘
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6:原初の魔法

 ジャンヌが本当に異端審問官にとって討ち滅ぼすべき敵である、『魔女の王』であると知ったリリーは目を大きく見開いたまま動けなかった。


 よく見ると眼球のみが、小刻みに震えている。


「なっ、なん、で・・・?」


 喉から搾り出した声でリリーはジャンヌに聞いた。


「何がだ?」


「なん、で・・・ひっ、人を・・・?」


 ❝なんで人を殺したか?❞


 リリーはジャンヌに聞きたかった。


 何かきっと、どうしようもない理由があったはずだと思いたかったからだ。


「何故か・・・。そうだな。()()()()()ことに似ている・・・かな?」


「かっ、蚊って・・・。」


 要するに深い理由はない。


 ()()()()()()()()()()()


 そういうことなのだ。


「やだ、やだ、やだ・・・。」


 真っ青になった唇を引きつらせ、目から涙を流すリリーに、ジャンヌは困惑した。


「120年も前の話でお前はまだ生まれてない。なのに何故泣く?私が殺した命を憐れんでか?それとも私が怖くなったか?」


 理解してなく、ただ疑問符ばかり投げてくるジャンヌから、リリーは顔を背ける。


「分かんない・・・分かんないよぅ・・・。」


「ふ~む・・・。それでは話が進まんな。感情とは複雑だ。」


「人の心というのは、そう易々と分かるほど単純には出来ておらんよ。」


 困るジャンヌにマリアが言う。


「知ったような口を利くじゃないか?」


()()()()()()()()()()()()のじゃ。分からぬものをただ感じるだけで、人は未熟ながらも人として成り立っておる。それすらも理解できぬお前は・・・なんと悍ましく、憐れなものよ。」


 慰めるような口ぶりをするマリアに、ジャンヌは癪に障った。


「人の土地にズカズカと入り無礼をはたらく鼠如きに言われたくない。」


 腹を立てる顔を見せるジャンヌを、マリアは何故か「かかっ!」と笑った。


「何が可笑しい?」


「わしの聞いた話では、お前はそのように感情を表に出すことはないはずだったがのう。」


 マリアはジャンヌが両手に抱えるリリーを見た。


「子を産み少しは()というものを感じたか?」


 不機嫌そうなジャンヌの顔が、再び無表情に戻った。


「もういい。害獣と話す時間はない。」


 リリーを足元にそっと下ろし、ジャンヌはマリアと向かい合う。


「去れ。そうすれば、今回は見逃してやる。」


「断れば?」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


 ジャンヌの白と藍色の髪が光り始め、右手にバリバリと青い、炎と雷のようなエネルギーが収束する。


「こうだ。」


 掲げたジャンヌの右手から、青い熱線が発射された。


 マリアは立てていた剣を瞬時にしっかり握り、それを弾いた。


「防ぐか?少しはやるようだな。」


「これが噂に聞く・・・。」


 ジャンヌの固有魔法・原初。


 火・水・雷・土・風・空間・時間・生命の八大魔法よりも更に古い、この世で最初に生まれた属性。


 その実態は物質を構成する上で欠かせない要素・・・つまり原子核である。


 ジャンヌは魔法によって体内の原子核を分裂させ、その際に生じたエネルギーを内包、放出することができる。


 その威力は、たった一発で人体なら容易に塵にできるほど。


 ちなみに原初の魔法を所有・使用できるのは、ジャンヌただ一人。


「リリー。」


 ジャンヌは地面にペタンと座るリリーの方へ振り返った。


「誕生会はこの小鼠を消し飛ばして、家を建て直してからにしよう。危ないから、そこから動くなよ?」


 ジャンヌはリリーに忠告すると、一直線にマリアに向かって駆け出した。


「まっ、ママ待って・・・!!」


 リリーの制止に、ジャンヌはまるで聞く耳を持たない。


「今宵こそ引導を渡してくれる。魔女の王・ジャンヌ!」


 マリアも剣を構え、ジャンヌに向かっていった。


 ジャンヌの青く輝く右腕と、マリアの白く煌めく剣がぶつかった瞬間、眩い閃光とともに衝撃波が走った。

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