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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
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EX:母の日、ジャンヌの場合

 5月11日の夜。


 家のリビングでジャンヌが暖炉の前で魔導書を読みながらまどろんでいる。


 外は雨が降っていて、空気も少しひんやりしている。


「ん?」


 ふと見ると、もう寝たはずのリリーは起きて、ジャンヌの服の裾をぐいぐい引っ張っている。


「どうしたリリー?もう寝る時間だろう。」


「んんっとね・・・その・・・。」


 リリーが後ろに何かを隠し持ってもじもじしている。


「後ろに何を隠している?」


 ジャンヌが諭すように聞くと、リリーは隠していたものをジャンヌに見せてきた。


 それは、銀細工のカーネーションらしくものだった。


 ()()()ものというのは、花弁がぐちゃぐちゃで枝の表面にも凹凸が目立ち、ギリギリカーネーションに見えるものだったからだ。


「今日は『母の日』って言って、お母さんにありがとうって言ってカーネーションを渡す日、なんだよ?ボク、ママに「いつもありがとう。」って言いたくて、この間教えてもらった『鉄の形を変える魔法』でカーネーション作ったんだよ?鉄の石から。」


 銀ですらなかったことにジャンヌは意外に思ったが、六歳の子どもが頑張って作ってくれた感謝の品を受け取らないのも悪い気がしたので、素直に受け取ることにした。


「よくできてるじゃないか。」


 褒められたリリーは、ぱあっと明るい顔になった。


「ホント!?」


「ああ。本当だとも。」


「でしょでしょ!?だってママが教えてくれたおかげだもん~♪ボクがいい材料を見つけたってのもデカいと思うけどね?」


「フフッ。そうだな。しかし形がどうにも不細工だな。」


「なっ、なんだって!?結構頑張ったんだよ!?」


「確かに頑張ったのは伝わる。しかし・・・まだまだだな。これは教え甲斐がある。」


 上げてから落とされたことに、リリーは顔をぷくっと膨らませた。


「じゃあ今度は、もっとバチやばにすんごいカーネーション作ってプレゼントしてやっからな!!その時を楽しみにしとけよ!!」


 リリーはプンプン怒りながら寝室に戻っていった。


「その時が来るのを楽しみにしてるよ。」


 ジャンヌはそう言ってリリーを見送った後に、鉄細工の不格好なカーネーションをグラスに入れて暖炉の上に飾った。


「感謝の気持ち・・・か。よく伝わったよ、リリー。」


「これが娘にプレゼントを贈られる気持ちか。」としみじみ思いながら、ジャンヌはリリーがくれたカーネーションをしばらく見つめるのだった。

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