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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
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56:悪意の投擲

「スタートしました!!各ペア問題のない滑れ出しですね~!さぁここで、ツインハイトのルールについて改めて解説します。各ペアは当コロシアムを2ラップ周回。最終ラップで一位だった選手が優勝となります・・・が!!レース中のペア同士のコンビネーション力と競技中に行なうパフォーマンスも採点基準に入りますから気は抜けません!逆を言えば、レースで一位ではなかったペアにも逆転のチャンスがあるっていうワケです!!くぅ~目が離せませんねぇ~!!さて一体どのペアが今レースの一位を飾るのでしょうか!?」


 レースが始まり、コロシアムが熱気に包まれる。


 リリーが少し遅れがちなディアナをリードする。


 早速目の前に第一コーナーが見えてきた。


「第一コーナーだよディアナ!()()()()()()!?」


「言われなくても!」


 自信に溢れるディアナの返事を聞いて、リリーも得意気に笑った。


 そして、ヴィキに教わったことを頭の中で反芻する。


「いいか?まず最初の山は第一コーナーだ。ここはあえて無視しろ。体力温存のためにな。」


 リリーとディアナはヴィキに教わった通り、第一コーナーを三着で通過する。


「今のところ優勢なのはオリーブ寮です。さぁ果たして、次の第二コーナーでレースが動き出すのか!?」


 第二コーナーに差し掛かったところで、リリーとディアナは手をギュッと強く握る。


「勝負をかけるのは第二コーナーだ。テメェの天使に心ン中の熱を流すイメージを持て。天使はきっと応えてくれる。」


 自分の中の熱・・・自分の中の熱・・・。


「サクァヌエル・・・行くよ!!」


「レガリエル・・・勝ちに行きますわ!!」


 リリーとディアナは、自分の中の「勝ちたい。」という思いをそれぞれの天使にぶつけた。


 次の瞬間、翼が大きくはためき、一気に加速する。


 会場がどよめいた。


「おっ・・・おおっと~!!!クローバー寮第二コーナーでオリーブ寮を抜いて一位に躍り出た~!!一回生ペアがまさかの暫定一位・・・これは大きな番狂わせだ~!!!」


「やっ、やったねディアナ!!ボク等一位だよ!!」


「お見事でしたよ、リリー。」


 喜ぶリリーに、ディアナはウィンクを送った。


 こうして1ラップ目は、クローバー寮の一位で終了した。


「このまま一気に引き離すよ!!」


「ええ!!」


 ゴールを過ぎたところで二人は更に加速する!!


 二人を応援する声が、観覧席に広がりつつあった。


 一回生、魔女の子と異端審問官名家の子。


 経験が浅く、相容れないと思っていたペアがあそこまで見事なレースを見せてくれたのだ。


 会場が湧くのは・・・当然。


 このままゴールまで逃げ切ろうと考えていたその時だった。


「ああっ!!ここでイベリス寮の姉妹ペアが一回転しながらゴール!!これは配点が高いぞ~!!」


 なんとイベリス寮のクロエ、アリッサの姉妹がゴール前でパフォーマンスを決めたのだ。


 こうなると、イベリス寮に逆転のチャンスが生まれてしまう。


「どうする!?ボク等もなんか技やる!?」


「カイさんから言われたことを守って下さい!!」


 リリーはドキっとした。


 レース前、カイから念押しされたことがあった。


「君たちはまだパフォーマンスはやらない方がいいよ。初出場だからね。」


「それは別にいいんじゃねぇかカイ?あたしらだって初出場でパフォーマンスしただろ?」


「この子たちはまだ七歳だよ?僕達じゃ事情は違うし危険だ。とにかく、逃げ切るだけを考えて。」


 カイに言われたことを思い出して、リリーは少し落ち着く。


「そっ、そうだったね。ごめんディアナ。」


「とにかく、今は一着で逃げ切ることを考えましょう。」


「うん!!分かった!!」


 2ラップ目の第二コーナーで一気に引き離せるように、リリーとディアナはペースを抑えて第一コーナーを通過した。


 一方その頃、観覧席でレースを見ていたボレアリスは、リリーとディアナのペアを目で追っていた。


「そろそろだな。」


 第二コーナーに二人が差し掛かったところで、ボレアリスは懐からスローイングナイフを取り出した。


「オドサキエル・・・()()。」


『よろしいのですか?ご息女でございますよ?』


「狙うのはジャンヌの娘だ構わん。いいから()()


『・・・・・・・。承知しました、旦那様。』


 ボレアリスに急かされたオドサキエルは、リリーに向かって投擲()()


「第二コーナーですよリリー!準備はよろしくて!?」


「バッチリだよ!!このまま・・・え?」


 リリーの手首を、スローイングナイフになったオドサキエルが貫通する。


 リリーの手首の筋と、動脈を斬りつけて。


「おっ、オドサキエル!?」


『申し訳ございませんお嬢様。』


 オドサキエルが飛んできた方角を見ると、観覧席のボレアリスが「分かったか?」と言いたげな笑みを浮かべて、こっちを睨んでいる。


「ディアナ・・・。」


 手首の筋を斬られたことによって、リリーはディアナの手を離してしまった。

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