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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
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47:学長の策略

 場面は変わり二日前の夜。


 マリアが聖天教会の幹部たちにジャンヌ討伐戦の経緯を報告するところに戻る。


「わしからはこれで以上じゃ。誰ぞ質問はないかの?」


 マリアの前に列する重鎮たちの顔は、皆険しかった。


 訝しむ者と怒る者しかいない。


「ガブリエル。貴様己がしでかしたことの重大さを分かっておらぬようだな?」


「なにがじゃ?」


「教会が四百年かけて滅ぼすことができなかった魔女の王を倒す機会をみすみす失ったのだぞ!!下らぬ情なぞに絆されたばかりにな!」


「絆された・・・とは語弊があるのう。わしはただ、死にゆく子を蘇らせたジャンヌにかつての脅威は残されていないと思い放逐しただけ。」


「そのジャンヌの娘、果たして其方の学院に入れてよいのですか?」


 先程とは別の女性の重鎮がマリアに指摘した。


「かの者が全くの無害であるという確証は、まだどこにもありません。もしや異端審問官養成学院にとって、大変な脅威になり得るかも・・・。」


「確かに。その可能性はあるかもしれんな。」


 あっさりと安全がまだ100%保障できないと抜かすマリアに、幹部たちはどよめく。


「我が身を滅ぼすやもしれんと分かった上で引き取ったのか!?」


「即刻処刑してしまえ!!」


「教会にとっての滅びの種は早い内に摘み取るのが道理でしょう!」


 幹部連中の動揺は一気に全員に伝染し、鎮まる気配はない。


 するとマリアは、生来持つ聖なる強大なオーラを放ち、彼らを無理やり黙らせる。


「キーキー喚くな。若造どもが。立場はお主らが上じゃが、力においてはわしが勝ってることをお忘れで?」


 マリアの鋭い眼光に睨まれ、目の前の幹部たちは一斉に口をつぐむ。


「まあ、お主らが自身の身を案じるのは分かる。ではわしから、揉んだ気をほぐす助言をしてやろう。」


「安心させてやる。」というマリアの言葉を聞き、幹部たちの目の色が変わった。


「リリーを治癒させるためにジャンヌは自らの生命魔法の極致を渡したという。()()()()()()()()を。」


「そっ、それはつまり・・・!?!?」


 マリアの言葉に、幹部たちはテーブルから身を乗り出して注目する。


「ジャンヌが魔女の王と呼ばれる所以は奴が操る原初の魔法だけではないことをお主らは知っておろうな?心臓を貫かれようが首を飛ばそうが・・・()()()()()()復活してしまう、この世の理から外れる不死性もある。その力、ジャンヌが四百年にわたって研鑽に研鑽を重ねた生命魔法の殊宝は、今はその娘の中にある。ジャンヌはもはや、()()()()()()()()()()()()()のじゃ。」


 ジャンヌが死なない魔女から()()()()()になったという事実に、幹部たちは安堵の笑みを浮かべる。


 そんな彼らに、マリアはもう一押しする。


「そこでわしから提案じゃ。ジャンヌの娘についてはわしに一切を任せる。あやつのあの並々ならぬ想いは、必ず母親を見つけるじゃろう。そう遠くない内にな。あやつを(しるべ)にしてわしがジャンヌを見つける・・・というのはどうじゃ?」


 マリアの提案に、幹部たちは一応の筋は通るので同意することにした。


 しかし最後に、ある懸念が残る。


「してガブリエルよ。見つけ出したジャンヌをどうするつもりだ?」


 聞かれたマリアは、前を向き、幹部たちに向け宣言する。


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「無論、わしが殺す。今度こそ逃がしはせん。」


 これで幹部たちの心配は晴れることになった。


 殺せる魔女に弱体化したジャンヌならば、マリアでも容易く殺すことができると確信しているからだ。


 何故ならマリアは教会誕生以来で、()()()()()()()()だからだ。


「では次はしくじるな。必ずジャンヌを滅ぼせ。たとえ娘の眼前でもな。」


「ご下命通りに。」


 頭を下げたマリアは、なんとも下卑た笑みを浮かべた。





 ◇◇◇





 そして再びハットブルー山の麓の風穴。


 マリアはジャンヌの不死性について、リリーたちに説明した後だった。


「ボクの中に・・・ママの、力が。」


 別れの際にジャンヌから渡された誕生日プレゼントの真価を知り、リリーは胸に手をそっとやる。


「良い物を餞別にもろうたな。大切に、そして賢く使うのじゃぞ?」


「・・・・・・はい!」


 リリーは決意に溢れる表情で大きく頷く。


「でっ、でも・・・そっ、そんなすごいもの、持ってたら、、教会は、、黙ってないんじゃ・・・。」


「そっ、そうよ!捕まって実験台にされるかもしれないし、ジャンヌをおびき寄せるのに利用されるかも・・・!!!」


 アイリスとディアナの心配につられて、リリーもドキっとする。


「そっ、それはダメだよ!!ボクのせいでママになにかあったら・・・。」


 これから先を案ずる三人に、マリアは「ムフフ・・・。」と意地悪そうに笑った。


「心配せんでも、もう手は打ってあるわい。」


「せんせい。手ってなに?」


「お主らが気にすることはない。」


 全てはマリアの策略だった。


 ジャンヌの不死性がリリーに譲渡されたと分かっていたマリアは、予め上層部に釘を刺していた。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。


 ()()()()()()()()()()()()()()という事実をちらつかせ、教会を牽制することがマリアの本当の目的だった。


 もちろんマリアは、リリーがジャンヌを見つける確証はある。


 しかしジャンヌも、みすみす殺されるようなタマではない。


 万が一かち合っても、必ず生き残る。


 だってジャンヌには、()()()()()()ができたのだから。


「母娘の愛を阻むことは何人も許されぬ・・・。」


「何か言った?せんせい。」


「いや、何でもない。」


 ガラス玉のような目で聞いてくるリリーに穏やかな微笑みを向けながら、マリアはごまかした。

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