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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
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39:血病に侵された里

「お~い!楽しんでるとこすまんが早う来てくれ。」


 マリアに呼ばれたリリーとアイリスは笑うの笑うのをハッと止めて兄妹たちのところへ向かった。


「危ないところを助けてくれて、ありがとう。」


 自分達のピンチを救ってくれたリリーに兄は礼を言い、まだヒクヒクと泣いている妹の頭をペコリと下げさせた。


「あ~・・・うん。どもっ。」


 母以外から感謝されることに慣れていないリリーは歯切れの悪い返事をした。


「それで、あなた達は?」


「ボク達は異端審問官だよ。魔女がここで悪さをしてるんだっ・・・むぐっ!?」


 慌てたアイリスがリリーの口を塞いで言葉を遮る。


「わしらは聖天教会から派遣された修道女(シスター)修道女(シスター)じゃ。」


「シスター?教会?」


 宗教関係の人物だと聞き、兄は警戒心を漂わせる。


「どうか怪しまんでくれ。ただの医師免許を持つ尼じゃ。この里で謎の奇病が蔓延っていると聞いてのう。原因を調査しに来ただけじゃ。患者に会わせてほしいのじゃが、構わんかの?」


「えっ、ええ。どうぞ。」


 兄が案内するのと同時に、アイリスはリリーの塞いでいた口を放した。


「ぷはぁっ!!なっ、なんよ!?」


「いっ、異端審問官は、、秘密の、、組織、だから、喋っちゃ、だめだよ。」


「なんで?」


「魔法とか魔女の存在が明るみになれば世間は混乱しますでしょう?上に余計な仕事をさせて、痛い目に遭いたくなかったらその口を閉じることね。」


「むぅ。ま~た都会のややこしいルールかぁ。何個覚えたらいいんだよぉ・・・。とほほ・・・。」





 ◇◇◇





 四人が案内されたのは登山客用に経営してる土産屋兼レストラン。


 通常だったら入山の前に腹ごしらえしたり、下山して記念の品を購入する観光客でごった返しているはずだが、リリー達が目にしたのはそれとは真逆の光景だった。


「ごほっ・・・!ごほっ・・・!」


「めっ、目が・・・。」


「痛い・・・痛いよぉ・・・。」


 テーブルや商品棚は全て片付けられ、所狭しと布団が敷かれてその上にたくさんの人が横たわっている。


 さながら野戦病院のようだった。


「よくお越し下さいましたぁ。マリア・ガブリエル様。」


 額が薄い、マリアとほぼ身長が同じのヨボヨボの老人が話しかけてきた。


「里長かの?」


「はいぃ~。ケネスと申します。」


「どのような状況かね?」


「二ヶ月ほど前になりますかの?山の方から見たことのない犬が降りてきて、里の者を襲い始めたのですじゃ。その犬に噛まれたものは・・・。」


 ケネスは布団で横になる病人たちを見回した。


 目が真っ赤になり血の涙と鼻血、血尿を流し血色の薄い顔色をしている。


「どういうことか身体中の穴から血を流すようになってしまったのじゃ。幸いにも死んだ者はおりませんが、血が足りてないせいで立つことがやっとで。外から来てくれたお客に同じ目を遭わせるワケにはいかず・・・。」


「被害が出る前に入山を禁止したと?」


 ケネスはコクンと頷いた。


「ひっ、ひどい・・・。」


「魔女のやらかすことはたくさん聞いてきたけど、この目で見るのは、堪えますわね。」


 惨憺たる状況にアイリスとディアナは苦々しい表情を浮かべた。


 するとさっきリリーが守った妹が近くで横になる夫婦のところに小瓶を持って走っていった。


「メメ、か・・・?」


「おとうさん!おかあさん!おくすり、もってきたよ!」


「ごほっ!あっ、ありがとう・・・。」


「はやくげんきになって、またいっしょにお山にいこう・・・。」


「ごめんね、メメ・・・。ごめんねぇ・・・。」


 薬の入った小瓶をギュッと持って母に頭を撫でられるメメに、アイリスとディアナは痛々しさから目を背けたくなる。


「まってて。いまのませるから・・・ッッッ!!!」


 母の口に薬を運ぶメメの手をリリーが止めた。


「あっ・・・!リリー!」


「またあいつ余計なことを・・・!!」


 またもや先走ってしまったリリーを連れ戻そうと、アイリスとディアナは急いだ。


「ちょっとあなた何してるの!?」


「そっ、そうだよ。早く、、戻ろうよ~・・・。」


 二人に耳を貸さず、リリーはメメの瓶の淵に指を付けてペロッと舐める。


「おっ、おねえちゃん・・・?」


「これどこで?」


「おっ、おくすり屋さん・・・。」


「病気を治そうと思ったんだよね?だけどこれじゃパパとママは良くならないよ。」


 様子を見ていた兄もリリー達のところへ駆けつけた。


「えっ、エルク・・・。この子は・・・?」


「この子が僕とメメをあの犬から助けてくれたんだ。」


 リリーのことを両親に説明して、エルクはバッとリリーの方へ視線を移す。


「この薬じゃ治らないのか!?」


「うん。これは体の中の悪い菌をやっつける薬だからね。二人をいや・・・みんなを苦しめてるのと原因が違うから。」


「リリー?どういう、こと?」


 リリーは懐から先程のロッキードッグに刺さっていた楔を取り出した。


「紺色の細くて長い牙、()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・。間違いない。」


「はぁ?まさか原因が分かったっていうの?」


「うん。」


 キッパリと返答するリリーにディアナはギョッとした。


「間違いなくヘビの毒だよ。ここには棲んでない種類だけどね。」

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