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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
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34:はじめてのぶつかり合い

 先程までの逃げの姿勢とは全く違う反撃に転じたリリー。


 見当違いのことを言いながらも確かに闘志を露わにするその姿に、ディアナの苛立ちは更に募る。


「何ふざけたこと・・・言ってんのよッッッ!!!」


 リリーのダガーナイフを弾いて空中で円舞をしながらハンドクローで引っ掻こうとするディアナ。


 リリーはディアナの攻撃を避けるために、翼を曲げて急降下する。


「ちっ・・・!この・・・!!!」


 ディアナは真下に逃げたリリーの頭にクロウを突き立てようと、頭からダイブした。


 リリーは上を向きながらダガーを横にそえてディアナのクロウを受け止めた。


「なかなかいいスジしてんじゃないの~!!あとはもっと力を入れるのがベストかな!?」


「そうですか!!ならこれはどうでしょう!?」


 ディアナはクロウの刃をくるっと前に向けてリリーのダガーの刀身から脱した。


 そこからディアナの怒涛の連撃が炸裂した。


 爪と爪との間にリリーのダガーが入り込んだら脱するのは容易ではない。


 ならば、リリーのダガーの刀身の動きをよく見て、裏拍子を入れるかのように攻撃を与えればいい。


「はっ!はっ!はっ!はっ!」


「うほっ!?わっ!?危っ!?ちょっ!?」


「どうしましたどうしましたぁ!?!?防ぐのはやっとってですかぁ!!」


「くぅ~!!こりゃ~リズミカルな攻撃だなぁ~!!見るだけで精一杯だよぅ~!!」


「余裕ブッこいていられるのも・・・今の内ですわぁ!!!」


 一際大きな攻撃が入ってリリーは吹き飛ばされた。


 そして、どこかの建物に突っ込んだ。


「いたた・・・。ディアナ本気出してきたなぁ~。」


 よっこいしょと立ち上がるリリーは、机に向かって仕事するマリアと目が合ってしまった。


 そう。


 リリーは事もあろうに、校長室に飛び込んでしまったのだ。


「あっ、マリアせんせいおいっす!」


「何をしておるのじゃ?」


「ディアナと練習試合!いや~空でやるとハラハラするね!」


「おいおい待て待て。お主ら今授業中のはず・・・」


「とうっ!!」


 マリアを無視して、リリーはもう一個の穴を開けて校長室を飛び出した。


「待たんかリリー!!何じゃ!?なにがどうなっておるのじゃ!?」


 慌ててマリアは、空で勝手に戦うリリーとディアナに窓から目をやった。


「あらぁ~?生きていたのですね?」


「やりおるなお主!ボクもマジで行かせてもらうよ!!」


 リリーは見えない足場を足で蹴るかのような動作で、ジグザグに飛行する。


「なっ・・・!?えっ・・・!?」


 不規則で読めないリリーの飛行方法に、ディアナは攻撃に移ることはできない。


「隙あり!!!」


 ディアナの後ろに回り込んだリリーは、ダガーの切っ先をディアナの背中で寸止めした。


「秘儀・木の幹飛び!!ママですらあたふたしたボクの必殺技だよ!!これを出させるなんて、ディアナは大したもんだ!!」


 リリーはディアナと少し距離を置きながら、勝利を宣言した。


「なっ、何なのですかあなたは!?命がかかっている戦いをまるで楽しんでいるかのように・・・!!危機感っていうものがないのですか!?」


()()()()()()()・・・。なるほど~そういう設定にしたんだ?そりゃ~ドキドキするね!!次からはそういうつもりでやるか・・・。気合い入りそうだし。」


「あっ、あなたね~・・・!!!」


()()()()()()()()?」


「なっ、何言って・・・ッッッ!!!」


 この時ディアナはやっと、リリーを呼ぶときに()()から()()()に変わっていることに気付いた。


「なっ、なんで・・・。」


 蔑んでいる魔女の子どもを、他の人を呼ぶときに使うワードで呼ぶなんて今までだったら考えられない。


 まさか自分は目の前にいる者を、()()()()()()から、()()()()()と認識していた・・・とでもいうのだろうか?


「あっ、有り得ない・・・。だって、コイツは・・・。」


「いや~ハラハラドキドキの楽しい練習試合だったね~?ディアナも汗びっしょりですごく笑ってたよ♪」


「・・・・・・あ。」


 下を向き黙り込むディアナ。


 ()()()()()のだ。


 リリーと戦っている時に。


 模擬戦は入学する前に家族とやったことはある。


 だけど・・・褒められたことなんて一度もなかった。


「動きが遅すぎる。」


「魔女を殺せるとは思えない。」


「いっそここで殺した方がためか?」


 叩きのめされる度に、手合わせした家族から罵倒された。


 いつしかディアナは、矛を交える時に相手を完膚なきまで徹底的に負かすことのみを考えるようになった。


 だけどさっきまでのリリーとの戦いは、心から楽しかったと言える。


 リリーはディアナのいいところを褒め、冷徹な家族と違って、全身全霊熱くぶつかってくれた。


 それに応えて、ディアナも心を熱くして、精一杯自分の実力を出し切れた。


 最初は本当に殺すつもりで襲ったのに・・・。


 どうして・・・?


 どうして・・・?


「ディアナ?どうしたの?下向いちゃって。」


「あっ!お前ら!!やっと追いついたぞ!!」


「うげっ!?エリオットせんせい!!」


 授業を勝手に抜けて、更には乱闘騒ぎまで起こしたから、エリオットはリリーとディアナをこってり絞った。


 その様子を、校長室の窓辺からマリアが期待と不安の合わさった眼差しで眺める。


「ディアナに植え付けられた思想が揺らぎだしたか。はてさて・・・。どうなることやら。」

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