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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
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32:聖なる翼を背に

 魔女学の授業が終わっての休み時間。


 リリーとアイリスは庭園のテーブルに座っていた。


 アイリスはクララが持たせてくれたイチゴジュースをストローでちびちびと、ボトルを両手に抱えて飲んでいる。


 リリーは先程の授業でメイに課題として出されたジャンヌの人となりや過ごした日々を、レポートにまとめていた。


 ここまでの十分で、すでに原稿用紙40枚。


「あ~メイせんせいがくれた紙もう3枚しか残ってないや~。あとでもらいに行こっかな~?」


「すごく、、書くね?」


「やっぱ止まんないや!ママのこと書くってなったら。」


「・・・・・・・。」


 少し沈んだ顔をして、アイリスはボトルをコトンと置いた。


「なんか、、ビックリ、しちゃった・・・。」


「何が?」


「泣いてる、、リリー、はじめて、、見たから・・・。」


「ああさっきの?」


 ケロっとした態度でリリーは恥ずかしそうに首を手でなぞる。


「いや~こっちに来てからあんまり寂しいとは思わなかったんだけど・・・。意外とそうじゃなかったみたい。たはは・・・。」


「心、細いよね?お母さんに、、会えないのは・・・。」


「まぁ~・・・ね~・・・。でもさ、寂しくも心がぎゅ~ってなったりしないよ?」


「なん、、で?」


「アイリスたちみんながいるから!山育ちのいなかっぺのボクにも優しくしてくれて、いい友達だよ♪」


「・・・・・・!!」


 ペンをピッと向けて、得意げにウィンクするリリーに、アイリスのハートはトクンとなった。


 アイリスもアイリスで、同世代の女の子にここまで親密にされたのは初めての経験だったからだ。


「あっ、ありが、、と・・・」


「ぅおっといけない!!次の授業そろそろ始まっちゃう!!レポートは一旦ストップだな。行こアイリス!」


「うっ、、ウン・・・。」


 マイペースを崩さないリリーの姿勢に、アイリスはガクッときたが不思議と勝手に笑みが零れた。





 ◇◇◇





 二限目は島の低層部にあるグラウンド。


 ギリギリで着く二人と違って、またしてもディアナが一番乗りだった。


「はぁ・・・!!はぁ・・・!!でぃ、ディアナ!!また、一番・・・?」


「休憩しなかったですから。」


 素っ気なく答えるディアナの肩に、リリーはポンと手を置いた。


「ディアナひょっとして、ライラが言ってた()()()()()()()?頑張るのはいいけどさ、あんま無理しない方がいいよ~?」


「余計なお世話です。」


「飴ちゃん舐める?食堂のクララさんが行きがけにくれた。」


「いらない!!」


「遠慮しちゃって~。お口開けて。入れてあげるぅ♪」


「本当に・・・!!いいです・・・から!!ちょっ・・・!!なに真顔で・・・入れようとし・・・!!」


「お~い先生は無視か~?」


 ディアナと一緒に待っていた金に染めたオールバックの生え際から、元の黒髪が生えてきている十代後半の青年がジト目で見ていた。


「すっ、、すいませ、、ん!」


 恥ずかしそうにペコペコするアイリスに、教師の男は何故かすり寄ってきた。


「君がルシールの妹ちゃん!?オレあいつの一個上の先輩のエリオットっつうんだ!!へぇ~やっぱ目元があいつに似てんな~。可愛っ♡ねねね、あとでお茶しない?」


「え・・・?え・・・?」


「先生?」


「あっ・・・。」


 ディアナの蔑んだ目に気付いて、エリオットはさっきまでの出来事をまるで無かったみたいに定位置に戻った。


「あらためまして!オレがこの()使()()()()の担任の、エリオット・ミッドウィンターだ。ヨロシクなひよこども!!」


「ルシールのこと好きなの?」


「・・・・・・わ?」


 リリーからド直球な質問がきて、エリオットはとっさにとぼける。


「ねぇねぇ好きなのせんせい?」


 ひょこひょこ近寄ってくるリリーから、エリオットは視線をずらす。


「なっ、なにを言ってるのかな~?先生ワカリマセ~ン。」


「だってルシールから❝一個上の先輩にすんごくしつこいナンパしてくるヤツがいる。❞って聞いてたから?」


「え!?そんなこと言ってたのぉ!?!?」


「うっそ。」


「なっ・・・!?おっ、オレをハメやがったのか!?」


「うん。気になったから。アイリスをダシに使うのはダミだよ~!!せんせい~。」


「さっ、さすが魔女の王の娘・・・。悪企みはお手のモン・・・ってか?」


「先生授業。」


 再びディアナから鋭く呼ばれて、エリオットはハッと我に返った。


「こっ、この授業では!手持ちの概装天使を使った飛び方をマスターしてもらう!魔女の奴らと戦うのに、空の上っつうのは逃げたり奇襲を仕掛けるのに便利だからな。」


「天使を使った飛び方?」


「じゃあまず、翼の出し方から!!心を集中して、()()()って唱えてみろ。お前らはまだ初心者だから前に天使の名前を言った方がいいかもな。」


「広がれ・・・か。」


 リリーは心を落ち着けて、ダガーナイフになって腰に収めた自分の概装天使、サクァヌエルに呼びかけるイメージで唱える。


「サクァヌエル、広がれ。」


 次の瞬間、リリーの背中に真っ白に光り輝く鳥のような翼がパッと現れ、羽根を落としながらはためく。


「わっ、わわっ・・・!?!?」


「驚いたか~?それが魔女と戦うために背負う、天使の聖なる翼ってヤツだ。」

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