31:魔女学の大発見
母のジャンヌが魔女の最高位にあり、存在そのものが災害と見なされる禁位、その中でも代表格に位置する最も危険な魔女だと聞かされたリリー。
「ママって、そんな怖い魔女だったんですか?」
「ええそうよ!!」
唖然とするリリーに追い打ちをかけようと、ディアナが机から立って力説し始めた。
「お前が会いたがっている母親はね~出現が確認されてからの四百年で数々の大災害を起こしてきたのよ!!中央王都エンデからほんの数キロしか離れてない港街を津波で壊滅させたり、金が豊富に採れる山脈を吹っ飛ばしたり、南の寒冷地域の氷を消したり・・・。もちろん大勢殺したわ。倒しにきた異端審問官だけじゃなく、何の罪もない一般人もね!!お前の母親には心なんてモノはないのよ!!国を積み木、人を小虫にしか見えてないんだから!!会いに行ったところで、喜んで抱きしめてもらえるかしら?だってお前は・・・子どもを産むことがどんなのか知ってみたかったジャンヌがおもしろ半分で作った娘なのだからッッッ!!!」
「いっ、いい加減に、、しなよ・・・!!」
「いやです!!こういう頭に花が湧いてる奴には現実を言ってあげた方がいいんですわ!!自分のためにもね!」
「授業中の過度な発言は、場合によっては指導の対象になりますよ?生活指導員を兼任している私の前でいい度胸してますね?ミカエルさん。」
「ッッッ・・・!!!」
メイに威圧を含んだ言葉で制され、ディアナは不服そうにドカッと荒っぽく席に着いた。
「いきなりまくし立てられて驚いたことでしょう、クローバーさん。」
ディアナを制止した時とガラリと違った優しい声でメイはリリーにを落ち着かせようとした。
「ですが、魔女の王ジャンヌが大惨事を起こし続けた極めて危険な魔女だということは、事実です。」
リリーの机の前まで行き、メイは重たい口調でこう問うた。
「あなたには、本当に母親を受け入れる覚悟がありますか?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「はい。」
「え?」
拍子抜けするくらいあっさり答えたリリーに、メイは戸惑った。
「どんなに危ない魔女だとしてもママはママです。みんなママのことをすごく怖がるんですよね。ボクが生まれる前にしてきたことがしてきたことですから、怖くなっちゃうのはしょうがいですけど。だけどボクには、ママのことがど~しても怖いとは思えないんですよね。いっつも仏頂面で、だけどボクが面白いことしたりするとクスって笑って、たま~に大きな声で知らない歌を口ずさんで、寝れない時に一緒に寝てくれて、あっちょっとイビキうるさいんですけどね。あとボクが魔法のお勉強で上手くいった時に頭ナデナデしてくれて、夕ご飯に好きなご飯作ってくれて・・・。あ・・・。」
リリーの目から数滴の涙が、木の葉から落ちる水玉のようにポタポタと流れる。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「なんか・・・会いたくなっちゃった・・・。」
母親のことが恋しくなり、無意識の内に泣いてしまうリリーに、メイはそっとハンカチを渡してあげる。
「教科書を濡らしてはいけませんよ?」
「あはは・・・すいません・・・。」
教卓に肘を据えて、メイは深く呼吸した。
「報告によると、ジャンヌは瀕死になったあなたを400年間練り上げた生命魔法を投げ出して救ったようですね?魔女にとって、一つの魔法を極めた末に至った術は宝。絶対に譲渡したりしない代物・・・。それをあろうことか魔女の王が差し出した・・・。あなたの存在が、彼女の何かを変えたのかもしれません。これは魔女学において大きな発見です。」
「そっ、そんな大げさな~!」
「決して大げさではありませんよ。クローバーさん。早速ですが、あなたに課題を出します。」
「なっ、何ですか?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ジャンヌ・・・お母さんがどんな人だったか、レポートにまとめて下さい。特に覚えている出来事や面白かった笑い話などがあると、なおのこと良しです。」
リリーは困ったような顔をして「う~ん・・・。」唸った。
「紙いっぱいになるかもですけどいいですか?」
「構いません。学術文献は分厚いのに越したことはないのですから。」




