30:魔女という存在
「えっほ!えっほ!えっほ!」
入学式の次の日の朝。
リリーは初めての授業が行われる講堂に続く階段を一段飛ばしで走っていた。
「まっ、待って、、よぉ・・・リリー・・・。まだ、、間に合うよぅ・・・。」
「ここで初めて受ける授業だよ!?楽しみで待ちきれない!!」
いつも以上に好奇心を活発にさせるリリーを見て、アイリスはヘトヘトになりながら笑った。
「ふぃ~!!着いたぁ~!!」
講堂に入ると最前列の席で金髪の後ろ姿が教科書を読んで自習をしていた。
「おはようディアナ!朝起きた時ベッドにいないと思ったらもう着いてたんだ?」
陽気に声をかけるリリーを、ディアナは無視した。
「おっ!早速教科書読んで予習?勉強好きなんだ~。」
ディアナの素っ気ない態度を気にすることなくリリーは、あろうことかディアナの隣に座った。
「余所に行ってくれますかしら?魔女の毒気が移る。」
「ボクに触ったってかぶれたりなんかしないよ?毛虫じゃないんだから。ほら~?」
触ろうとするリリーの手を、ディアナはすごくイヤそうな顔で払いのける。
「なんなのよお前は・・・!?」
「お主のルームメイトじゃ。これマリアせんせいのマネ~♪」
リリーを毛嫌いしてるディアナに、あろうことか自分から過剰なスキンシップをしてくるリリーに、アイリスはとってもハラハラした。
ディアナからいつ手が飛んでくるか分からないから・・・。
「今年のクローバー寮の生徒はくせ者揃いですね?」
教卓の奥の扉から教科書を抱えた、背中まで伸びた赤毛を三つ編みにまとめて眼鏡をかけた女性が出てきた。
「はじめまして。私は魔女学担当のメイ・カーソンです。一人前の異端審問官を目指すにあたってあなた達にはまず、魔女という存在について知ってもらおうと思います。」
教科書を片手にメイは黒板に板書しだした。
「でははじめに、魔女という者達について、その広義を説明できる人は?」
「はい。」
「ディアナ・ミカエルさん。」
「数千年前に地上で起こったとされる天使と悪魔の戦い、❝天と魔の戦い❞に敗れて地獄に堕とされた悪魔が残した力・・・魔法を使う女のことを指します。」
「その通りです。魔女には二種類のタイプが存在します。一つは地獄に封じられた悪魔と契約して魔法が使えるようになった契約型。もう一つが悪魔に犯された女性が産んだ、先天的に魔法が使える混血型です。一般的に、悪魔の血が混ざって魔法をの扱い方を食べる、呼吸する、寝ると同じように無意識に知っている混血型が危険だという認識がありますね。」
アイリスとディアナがノートを黙々と取っているのに対し、リリーだけはメイがの言葉を一語一句聞き逃さないように聞き入っている。
自分の母親がどういった者かを知る重要な機会だからだ。
「さて。あなた達は今、初階異端審問官という異端審問官の中で一番低位の階級にあります。私たち異端審問官と同じように魔女にもその危険度によって等級分けがされています。一位、二位、三位、四位、五位です。魔女が引き起こす魔法による犯罪行為は❝魔女被害❞と呼称され、これは実際の犯罪行為にも当てはめることができます。最も低位の一位魔女が引き起こす魔女被害は窃盗。高位の五位魔女の魔女被害は、殺人です。」
「あの~。」
「はい。あなたは・・・リリー・クローバーですね。」
学校内だけでなく、教会全体に知名度が及んでいる話題の生徒に質問され、メイは神妙な顔になった。
「ボクのママは今までの説明にあったどの魔女なんですか?」
「やはりそう聞くか。」と言いたげに一呼吸整え、メイはリリーの質問に答える。
「あなたの母親・・・ジャンヌは混血型。悪魔と人間の間に生まれた魔女です。危険度は・・・禁位。五位より更に上の、存在そのものが災害とされる、歴史上でも数えるくらいしか確認されていない強大な魔女。その筆頭格です。」




