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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
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28:聖天教会庁立異端審問官養成学院

「おはよぅ・・・。」


 腫れぼった目をこすってアイリスはダイニングに入った。


「おっは~アイリス!!うっわ目ぇ真っ赤じゃん!」


「寝不足・・・。リリーと話し込ん、じゃって・・・。」


「いけませんな~。入学式前日に夜更かしとは。」


 茶化すルシールの隣に座って、アイリスはもしゃもしゃとパンを食べる。


「おはよ~ございま~す!!」


 元気のいい挨拶をして、リリーはテーブルについて朝食にがっついた。


「何だい?ルームメイトは元気ハツラツじゃないかい?」


 ポルチーニとマカロニのクリームグラタンを持ってきたクララがリリーについて言及した。


「なんか話してる内に寝ちゃって。アイリスのお家のブルーベリー畑で作るジャムから覚えてない♪」


 自分と違って睡眠バッチリなリリーに、アイリスは恨めしそうな視線を送る。


「リリーも寝不足になれば良かったのに・・・。」


 頭がボーっとしてるせいで、皮肉にもアイリスは言葉を詰まらせず堂々と悪態をつくことができていた。


「一緒に寝たのにひっどいこと言うね~。」


「だってズルいし・・・。」


「しょ~がないじゃん寝ちゃったんだからさ~!」


「起こそうとしたのに全然起きないし・・・。」


「なんでボクを道連れにしようとすんの!?」


「ほらほらあんたら早く食っちゃいな!!入学式から遅刻するよ!?」


 クララに一喝されて、リリーとアイリスの食事の手が早まった。





 ◇◇◇





「さ~ていよいよ初登校だよ!」


 制服に着替えたリリーとアイリスは、『生活指導室』と書かれたドアの前でライラとルシールと待ち合わせした。


「ねぇ。なんで指導室の前で待ち合わせしたの?」


「船に乗り遅れるとここ本来の部屋に入れられてみっちりしごかれるの~。」


「丸一日かけて罰則受けられるから絶対に遅刻しないこと!!」


「おっ、、おねえちゃん。ふっ、()って・・・。」


「むふふ~♪それはねぇ~・・・。」


 ライラはタイミングを見計らったかのように、生活指導室のドアを開けた。


「こういうこと!!」


 ドアの向こうの景色を見た瞬間、リリーとアイリスは息を飲んだ。


「こっ、これって・・・。」


「すごい・・・。」


 目の前に広がっていたのは、まばらに雲が広がる青空と、それが反転したかのように果てしなく続く水の大地だった。


「へっ、部屋、、、じゃ、ない・・・。」


「へへ~ん!すごいでしょ?」


「ほら~早く行こ~。」


 壮大な絶景に見惚れるリリーとアイリスに、近くの岸辺に停まっていたボートに乗ったルシールが呼びかける。


 もやいを解くと、ボートは誰も漕いでないのにひとりでに出航した。


 水の深さは船底がギリギリ届かない深さで、小魚の群れが泳ぎ、水面すれすれに水鳥が滑空する。


 鏡のように反射した空が写った水面を進んでいると、本当に空の上を航行している気分になる。


「ボク・・・こんなにおっきな湖来たの・・・初めて・・・。」


 ボートの縁に掴まって、リリーは鏡の水平線を瞬きもしないで見つめている。


「ウチらも初めて見た時は感動したよね?」


「ルシールなんか泣いちゃってたよね~。」


「まっ、まあね~!」


「ねえ。どうしてあの部屋の中にこんな世界があるの?」


「学院の初代学長の力?らしいよ。この空間全体がその人の心の中なんだって。学校を作る際に他の人も入れるようにしたんだって。寮の決まった部屋の決まった時間にしか入れないようになってる仕組みなんだって。」


 これほどまでに広大な空間を生み出し、死した後も遺し続けることなど卓越した空間魔法の使い手だとしても不可能だ。


 大昔に自分の想像を遥かに超える力の持ち主がいたことに、リリーは感嘆した。


「あ、見えてきたよ!」


 ライラの指差す方向に一つの島が見えてきた。


 円錐状に隆起したその地形には、頂点に時計塔、その下には複数の講堂、更に下の水面に接している部分には芝のグラウンドとコロシアム、庭園があり島全体がひとつの建造物になっていた。


 桟橋にボートを止めて降りると、港の階段を誰かが降りてきた。


「思ってたより遅れたの。」


「マリアせんせい。」


「学長としてお主らを歓迎するぞ。ようこそ。聖天教会庁立異端審問官養成学院へ。」

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