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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
27/77

27:友と過ごす最初の夜

「ふぃ~!!さっぱりしたぁ♪」


「おっ、おか、えり。リリー。」


 リリーが風呂から戻ってくると、アイリスは明日の入学式の準備をしていた。


「ライラ、、おねえちゃんは?」


「ダイニングで寝るって。お布団敷いて。」


「ルシールおねえちゃんと、、、一緒だ。」


 二人が寝る部屋はベッドが三つなので、ライラとルシールは一階の食堂でテーブルを片付けて、布団で寝ることにした。


 出かけている後輩たちの部屋を勝手に使うわけにもいかないからだ。


「ねぇねぇ。ライラって大きいんだね~お尻。」


 バッグに荷物を入れるアイリスの顔がポッと赤くなった。


「それに中々もっちもち。ターキッシュデライトみたいだった。」


「りっ、、リリー・・・。あんまりそういうこと、、、言わない方が、、いいと思う・・・。」


「なんで?」


「わっ、わたし、、にも、よく分からないけど・・・。言われて、、恥ずかしくなる、女の子も、、いるって、、お母さんが。」


「そうなんだ~。ライラはノリノリで❝へい!もっと触って!!なんならかぶりつけよぅ!!❞って突き出してたけど。」


 姉のスケベなノリに、アイリスは呆れて顔を手でパシっとした。


「ライラは赤ちゃん産むの大変じゃなさそうで安心だな。大きくて柔らかいお尻の人ってそうなんでしょ?()()()っていうの?あ、これママの豆知識ね?」


「はっ、早く支度して、、寝よ!?明日早い、、、らしいし・・・。」


 この話を続けていると段々顔が燃えそうなくらい熱くなってきたので、アイリスはリリーに明日の用意をするように言った。


 リリーは少々腑に落ちない態度をしながら、カバンに明日必要な物を入れて、制服をハンガーにかけた。


「うし!こんなとこかな?」


「くっ、、暗くするよ・・・。」


 アイリスは天井にかかったキャンドルのツマミを絞って、部屋を暗くした。


「じゃっ、おやすみ~。」


「おっ、おやすみ・・・。」


 リリーとアイリスはベッドに入り込んで、就寝した。


 かに思ったが・・・。


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「アイリス起きてる?」


「うん・・・。」


 ベッドに入ったはいいものの、二人は中々寝付けないでいた。


「ちょっと、、緊張する、ね。」


「ボクは楽しいが勝っちゃってるな。」


「楽、しい?」


「誰かと寝ることなんてなかったからさ。」


「ジャンヌ・・・っ。ママと、寝なかった、の?」


「ど~だろ?気付いた頃にはひとりで寝てたからな~。赤ちゃんの時だったら一緒に寝てたかもだけど。」


「寂しく、、なかった?」


「特に、かな?だって次の日遊んでくれてたから。あ~魔法の修行は、ちょっとめんどくさかったけど!」


 ケラケラ笑いながら返事するリリーに、アイリスはホッとした。


 ちゃんと母に愛されていたことが分かったからだ。


「これからこうやって一緒に寝るんだな~。ボクと、アイリスと、ディアナで。」


 ディアナの名前が出て、アイリスの胸がモヤモヤした。


「わたしは、、苦手。あの子の、、こと・・・。」


「どうして?」


「えらそうで、わがまま、、だから。」


「そうかな~?ボクは好きだよ?」


「なっ、なんで・・・?」


 あれだけ罵倒されたはずなのに、()()というワードが出てきたことにアイリスは困惑した。


「だってアイリスとおんなじで、ボクと同い年の女の子だよ?嫌いにならないならない!」


 自分と同じ七歳の女の子というだけで好きになれるリリーの器の大きさに驚きつつ、リリーが外の世界と完全に隔絶された環境で育ったことを改めて認識し、その境遇にもどかしさを覚えるアイリス。


「な~んであんなプンプン怒ってんだろ?分からんなぁ~。」


「きっと、、見えてる世界が、狭いんだと、思う・・・。」


「目が悪いってこと?」


「いや、、そうじゃなくて・・・。ううん・・・。」


 身分差別、格差社会、魔女迫害・・・。


 世に根付いている負の共通認識を全て語るには、アイリスはまだ未熟だった。


 だけどゴンドルの森で母と二人きりで暮らしてきたリリーには、その共通認識さえも欠落している。


 それはリリーにとって幸せなことなのかもしれない。


 理解してない故に、目を背きたくなる問題に、堂々と向き合うことができるのだから。


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「仲良く、なれると、いいな。ディアナと。」


「んお!?やっぱアイリスもそう思う?ディアナも来れば、もっと寝るのが楽しくなるよ絶対♪」


 名家に生まれたことで植え付けられた封建主義な思想が、リリーとの交流で少しは軟化してほしいと願って、アイリスはリリーに声をかけた。


「ボクばっかが話してもつまんないからさ、アイリスも話してよ?おばあちゃんのこと。試験の時に言ってたでしょ?」


「うっ、、うん。おばあちゃんはね・・・。」


 中々寝付けず、互いのことを語りながら、リリーとアイリスは初めて過ごす寮での夜を楽しんだ。

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