24:幸運の寮
昼食を食べ、テカーノヴァ街を散策し終わった頃にはすっかり夕暮れになっていた。
「色々案内してくれてありがと!!」
「いえいえ~!これからこの街で暮らすんだから!先輩として、当たり前のことしたまでだよ~ん!!」
ノリノリでリリーの肩に手を回すライラに、リリーも『にぱ~♪』ってした笑顔を見せる。
この数時間で二人はすっかり意気投合して、今や先輩後輩というよりも悪ノリが好きな友人同士だ。
「ライラおねえちゃん・・・すごい、、ね。」
「相手の心に飛び込むのは天下一品だからね~。」
魔女の王の娘で、多くからはみ出し者と見られているリリーを気遣ってのことなのか。
それともありのまま、素で接しているのか分からない。
だけどリリーにとって、ライラは気兼ねなく交流できる友達になったことは紛れもないだろう。
四人は街外れの、小高い丘の階段を登っていた。
まばらに樹木が立つが、それでも街を一望できるほどに景色は開かれている。
地平線の向こうに沈む夕日と、それを受けてオレンジに輝く純白の街はとても幻想的だった。
「よ~し着いた!!」
階段を登った先にあったのは、三角屋根の小さな城のような建物。
階段から建物に繋がる一本道を除きそこは、広大なシロツメクサの庭の真ん中に建っていた。
「ここが二人がこれから三年間過ごす場所・・・クローバー寮だよ!!」
◇◇◇
「うはは!!ひっろ~い~!!」
寮に入るとすぐに、リリーは持ち前の好奇心で駆け回った。
内部は全て石造りであり、教会のシンボルが床や柱に多く刻まれている点を見るに、学生寮というよりは教会に思える。
しかしよくよく見ると、食堂や集団で並べる洗面台や大浴場、自習ができそうな図書室があることから学生寮としての体制はしっかり整っているようだ。
「二階がベッドルームになってるから荷物置いてくれば~。」
「は~い!!行こアイリス!!」
「りっ、リリー・・・袖、引っ張らない、でよ~・・・。」
二階に上がって、『一回生』の文字盤がかけられた部屋に入ると、勉強机とベッドが三つ用意されていた。
「ボクはここ!!窓際!アイリスはどうする?」
「じゃあ、、、ドアに一番、、近いので。」
二人はベッドに腰かけて、しばらくリラックスする。
「いや~今日は初めて見たり触ったり食べたりして、一日がキラキラしてたけど疲れたぁ~!!」
ベッドの上で大きく伸びをした後、リリーは窓から見えるシロツメクサの庭を眺める。
「リリー?」
「なんかここ、ボクがいた森を思い出すな~。」
「リリーの、森にも、、あったの?こんな庭。」
「さすがにここまでのはないかな~。だけど空気が似てるの。」
窓の際にもたれかかって、リリーはノスタルジックな表情を浮かべる。
「ママ、元気にしてるかな~?」
呟くリリーに、アイリスの心がチクリとした。
「ここって、、幸運の寮って、呼ばれてるん、、だよ。ここで過ごした、子達が、、幸せな、未来を、、歩め、ますように、、って。」
「へぇ~。だからクローバーがいっぱい生えてるんだ~。暮らした人の幸せを願うって、優しい庭だね。」
「・・・・・・・うん。」
生まれてから七年間、森で暮らして大地と触れ合ってきたリリーの優しい庭という言葉には、とても重みがあった。
窓から風が入り込み、リリーとアイリスの頬を撫でる。
まるで寮そのものが、二人の入学を祝っているみたいだった。
「ちょっといいかい?」
開けっ放しのドアをコンコンとノックして、ライラが話しかけてきた。
「もう遅いしそろそろご飯にしよ~よ。」
「ご飯って、クローバー寮の?」
「そうだよ~。」
おっとりした返事をするルシールに、アイリスは少しドキっとした。
「いい、、の?上の学年に、、迷惑じゃ・・・。」
「この時間まで帰ってこないとなると課外授業の出先で食べてくるパターンだね。そしたら今夜はあたしらの貸し切り状態だし迷惑にならないよ!」
「初めての学校のご飯かぁ~!!楽しみいっぱいだね!」
「期待しておいていいよ~。」
◇◇◇
一階の食堂に降りて、四人は奥のキッチンに入った。
「おばちゃ~ん!いる~?」
ライラが呼ぶと、奥から誰か出てきた。
それは橙と白の縞模様のような髪色で、トップを蝶の髪飾りでまとめた、メイド服にエプロンを着た丸顔の中年女性だった。
「誰かと思ったら、ここを巣立ったロナウドのワル双子じゃないのさ?」
「相変わらずだね~。全然年取ってないじゃ~ん。」
「普段から摂生してるからだよ~・・・ん?」
ライラとルシールの前にちょこんと立っているリリーとアイリスの方に目がいった。
「これはこれは・・・興味深いひよっこ達が来たもんだねぇ~。」




