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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
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20:アイリス・ロナウド

「おっ、、ばあ、、ちゃんは、、、気弱じゃ、なかった、、です。」


 未だ祖母との追憶冷めやらないアイリスが、アメリアを評価するアダミエルとマリアに指摘した。


「ほう~。何故そう言える?」


「だって、、、おばあ、、ちゃ、、きれいで、かっこよくって、、元気で、みんなの、、、お手本、、だったから・・・。」


「うむ。良い淑女に育ったものよ。」


「え・・・?」


「勘違いさせてすまぬな。気弱()()()と言ったのじゃ。学院を卒業する頃のアメリアはお淑やかで、慎ましくて、勇敢な者になっておったよ。」


「ほっ、ほんと・・・?」


()()()()()()()()()であるわしが言うのじゃから、間違いはせん!」


 と、堂々とマリアは胸を張って言った。


 ここで、不可解な点が生まれる。


 アメリアが逝去したのは百四歳。


 マリアがアメリアの在学中に先輩であったのならば、当然かなりの高齢であるはずだ。


 にも関わらず、マリアの外見は十代半ばの少女。


 これは、どういうことなのか?


 マリアの年齢よりも、アイリスは祖母が過小評価されていなかったことの方が喜ばしかったので、その理由についてはまたの機会に。


「おばちゃん、、、どんな、、でしたか?」


「そうじゃの~・・・()()()()()()()()()()()・・・とでも言うべきかの。」


 全く真反対の単語が並べられた評価に、アイリスは不思議に思った。


「ピンと来ぬのも分かる。じゃがそうじゃったのじゃ。入学間もない奴は、お主と同じく人付き合いに難があり、目を見て話せずよくどもっておった。じゃが実習、魔女とのやり合いにおいては話は別じゃった。逃げることなく先陣を切り、足腰ままならぬほどに震えておったが両の足で立って学友を守り、逃げる途中で魔法が当たりそうな者がおれば一目散に間に割って入り、庇う。あの子犬の如き目の奥の、どこにかような度胸があったのかいつも驚かせおったよ、リアは。まぁそんな修羅場をいくつもくぐってきたことで、奴の佇まいはすっかり鍛えられたがな。わしとしては、元の方も愛嬌があって好いていたのじゃがな。」


「おばあちゃん・・・。」


 憧れの祖母が、自分と似ている部分があったけど確かに立派な女性だったと知り、アイリスは安心したが、同時にささくれた気分になる。


 ()()()()()()()()()()()()と・・・。


「そう暗い顔をするな。お主だって、そうじゃろ?」


「え・・・?」


「聞いたぞ。お主五つの頃に母を襲ったハチを素手で掴んだそうじゃないか?」


 思い出した。


 二年前の秋、収穫をしていた母が、近くの枝に止まっていた親指くらいのハチをうっかり刺激してしまったのだった。


 ()()()()が危ない。


 そう思ったアイリスは、咄嗟に母の周りを飛ぶハチを右手でパシっと掴んで潰した。


 掴んだ拍子に刺されてしまい、アイリスは激痛と発熱のせいで二日寝込むことになってしまった。


 回復したアイリスに、祖母はピシッと言った。


「自分を大切に。その勇気は他の時のためにとっておきなさい。」


 アイリスが祖母から叱られたのは、後にも先にもあれだけだ。


「リア手紙で言うとおうたぞ。❝アイリスは小さい頃の私と似てるけど、無鉄砲ぶりはもっとある。教え子になった時は気にかけてあげて。❞とな。」


 祖母に余計な心配をかけてしまったことに、アイリスは今更ながらとても申し訳なく感じた。


 そして、いつの日か異端審問官養成学院に入学する自分を、マリアに託したことが、すごく嬉しかった。


 自分がいなくなった後にも、アメリアは自分と似た孫を、気にかけてあげていたのだ。


 アイリスの胸が熱くなる。


 とっても、とっても・・・。


『アイリス・ロナウド。』


 静観していたアダミエルが再び口を開いた。


『あなたは何のために異端審問官を志しますか?』


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「おばあちゃん、、を、安心させる、、ため、、、おばあちゃんより、、もっともっと、、、優しく、、勇気がある、、立派な人に、、、なるためです!」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


『揺らぎがありますが力強い理由です。あなたに天使を授けることにしましょう。』


「ッッッ・・・!!!うっ、、うう~・・・!!」


 試験をパスできたことに感極まって、アイリスはその場にへたり込んだ。


『ではこの中から、あなたの奇蹟を選びなさい。』


 リリーとは違って、今度は三つの赤く光る玉がアダミエルの結晶から出現し、アイリスを取り囲む。


「うう~ん・・・。こっ、これ・・・?」


 アイリスが一つの赤い玉を掴むと、それは眩い光を放ち、人の形を成していった。


 どうやら一発で契約が成立したようだ。


『ほう・・・。これは奇縁ですね。』


「きっ、、奇縁・・・?」


 アイリスの掴んだ玉は、胸と腰にインナーのみを着て、赤く燃えるような髪をカチューシャでオールバックにした少女になった。


『よう!!アタシっちはグヴオエーラ!!()()()()()の概装天使さ!!よろしくな!!アメリアの孫!』


「わっ、、私を、知って・・・。』


『グヴオエーラはアメリアが異端審問官を引退する際に返上された天使です。入学してからのおよそ九十年間にわたって彼女とともに戦った、戦友です。』


『こ~して見ると初めて会ったばっかのナヨナヨしたアメリアと似てんな~!?アタシっちがホットに!クールに!燃えるように導いてやっから期待しとけよ!!』


 グヴオエーラははにかみながら言うと、メイスと盾になってアイリスの手元に渡った。


 試験をパスしてアイリスは、武器になったグヴオエーラをまじまじと眺めながら戻る。


「試験パスおめでとう!!アイリス!」


 ヨッと手を上げるリリーのところへアイリスは駆け寄った。


「ごめ、、なさ・・・。」


「うん?」


「私、、リリーの、こと、、怖がっちゃった・・・。」


 リリーがジャンヌの娘だと聞いた時、ひどく怯えてしまったことをアイリスは後悔していた。


 これから苦楽をともにする学友に、なんてことをしてしまったのだ。と。


「ヘ~キヘ~キ!!未知のものに怖くなっちゃうのは生き物として当たり前!ボクは変わりモンだからそんなことないけど♪なはは!!」


「リリー・・・。フフッ。」


 アイリスの肩をバシバシ叩いてあっけらかんと笑うリリーに、アイリスも微笑みで返した。

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