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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
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14:違いの分からぬ娘

 異端審問官の王家を名乗るミカエル家の当主と令嬢を前にしてロナウド姉妹は辟易した。


 七大名家の中には、自分達が正統な天使の血脈であることに誇りを持ち、それ以外の異端審問官に横柄な態度を取る一族がいる。


 ミカエルはそれらで取り分けプライドが高く、自分達以外の異端審問官を人と見なしていない節があった。


「ほほう。それで?娘はどのような人物でしたかな?」


()調()()()()()()()。とでも言っておこうかの?」


 歯に衣着せぬ辛辣な評価をマリアから受け、ディアナはズカズカと前に出た。


「先生?それは異端審問官養成学院の学長としてのご意見ですか?それとも・・・ガブリエル家当主としのご意見ですか?」


 笑顔で取り繕っているが、明らかにディアナはご機嫌斜めだ。


「さぁ?どう思う?」


 煮え切らない態度を取るマリアに、ディアナは引きつった笑顔でまた舌打ちした。


 本来なら叱るべきはずのボレアリスは、娘の粗暴な態度を黙認する。


「うっわ学院長に舌打ちなんて引くわ~!」


「しかも父親見て見ぬフリだし。ミカエル家とガブリエル家が仲悪いってホントだったんだね~。」


「下民風情が名家の問題に口を挟まないでくれないかしら!?!?」


 怒鳴るディアナに押されたのか、それとも腹が立ち過ぎて返す言葉がなかったのか、ライラとルシールは口を閉じ、その場に沈黙が流れる。


 それを破ったのは、リリーだった。


「う~ん・・・。」


「なによあなた?文句でもあって?」


「いやそうじゃなくってさ。そんなに偉いの?君。」


「はっ、はぁ~!?」


 あまりに唐突な質問に、ディアナは愕然とした。


「あなた・・・!!わたくしが誰か分かってるの!?」


「いや全然。だって初めて会うし。」


「ミカエル家のディアナ・ミカエルよッッッ!!!」


「名前聞いてもピンと来ないわ。」


「異端審問官の七大名家の中でも一番栄えた王家よ王家ッッッ!!!」


「ってことはお姫様ってこと?じゃそっちの君のお父さんは王様だ。でもかんむりとか被ってないよね?」


「天使の血を引いてるのッッッ!!!あなた達みたいなただの人間とは違うんだからッッッ!!!」


「血になんの意味があんの?あんなんただの赤くて鉄の臭いがする水じゃん。」


「おっ、お金だっていっぱいあるんだからッッッ!!!」


「お金いっぱい持ってたら偉いの?じゃあボクいっぱい作るよ。土から。」


「なっ・・・何なのよあなたッッッ!!!」


 髪を逆立て、顔を真っ赤にして激昂するディアナにリリーはキョトンとしながら言い放った。


「ボクと君、それから君のお父さんとマリアせんせい、アイリスさんとルシールさんとで、何が違うのかまっ~たく分からないんだわ。手と足が二本ずつで、血が赤くて、身体がタンパク質で出来てる・・・言っちゃえば()()()()じゃん。なんか細かい違いがあるんだったら教えて!もしかして君の血って、真っ白!?」


 曇りなき眼で真剣に聞いてくるリリーに、ディアナは青スジを立てて殴りかかろうとした。


「やめなさいディアナ。」


「でっ、でもお父様!!この翠髪の下民はわたくし達ミカエル家を愚弄したのですよ!?」


「下々の者の言葉に熱くなるものではない。もっと寛大にならなくては。」


 ボレアリスに諭され、ディアナは一旦怒りを抑えた。


「私達はここでお暇いたします。次は概装天使との契約の儀の場で。」


「ああ。お主らのところの娘の力量、見極めさせてもらうぞ?」


「どうぞお楽しみに。それと・・・。」


 ボレアリスはリリーの方へ視線を移して、言った。


「世の成り立ちを弁えぬ生徒の指導を怠ることのないよう。」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「おじさんこの世界で一番偉いの?王様でもなければ神様でもないじゃ~ん!」


 表情には出さなかったが、ボレアリスはリリーを睨みつけてその場を後にした。


「はぁ・・・お主はなぁ・・・。」


「ボクなんかいけないこと言った?」


 なんの疑いも、皮肉もなく聞いてくるリリーにマリアは苦笑いを浮かべた。


「全く・・・しょうがないやつめ。」


「ふぇ?」


 首をかしげるリリーの肩を、ライラが叩いてきた。


「よく言ったじゃんリリー!!あんた最っ高だった!!」


「なにが?」


「ミカエルの奴等のあんな顔初めて見た。ここ五年で一番スカッとしたわ~。」


「スカッと?」


 なんのことだか皆目見当が付かないリリーの服の袖を、アイリスがくいくいと恥ずかしそうに引っ張る。


「あり、がと・・・。」


「え?え?」


「よ~し!!じゃあ買い物続けますか~!」


「さんせ~い。」


「あまり面倒事を起こすでないぞ~。」


 訳の分からないまま納得して解散するみんなに、リリーは口をへの字にしてすごく訝しむ。


「森育ちのボクに都会のことは分からん。」

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