1550年 男達の話し合い
「いやぁ……孫とも麻雀をする年齢か……時が経つのは早いのぉ」
「義元も気楽に打てや」
「はい、父上! 爺様も手加減しないでくださいよ!」
「わかっているのじゃ!」
「なんで私が親子麻雀に参加してるんですかねぇ……」
「就輝、お前どうせ暇だろ。甥っ子と打とうや」
「いや、義元兄とやるのは別に良いですが……房元兄上と喋るの新年と元服の儀以来ですよ」
卓のメンバーは元就、房元、義元に元就の一番下の息子の就輝であった。
ちなみに義元よりも就輝の方が11歳も差があり、義元が25歳(数え年)のところ、就輝は14歳(数え年)であった。
「就輝勝ったら彩乃と1日未来に行く権利じゃからな。真剣に打つんじゃぞ」
「え! 母上と1日未来行っても良いの! スーパー銭湯生きたかったんだ! 未来の料理滅茶苦茶美味しいし!」
「ワシは鍼治療に行きたいからのぉ〜負けないのじゃ」
「私だって未来の料理食べたいですし負けませんよ」
「愛と息子達に玩具を買いたいから負けませんよ! 父上に爺様! それに就輝も!」
卓を囲んでいる中、彩乃は隣の部屋で愛と孫達と遊んでいた。
「お婆ちゃんだよ〜可愛いねぇ〜」
「男達は彩乃母さんと1日未来行きを賭けて麻雀ですか……」
「愛は未来で何か欲しいのある?」
「そうですねぇ……服が欲しいです。冬用のもこもこした奴買えます? あとこの子達の子供用の服……弟達のお下がりでもいいですけど、新品も欲しくて……」
「わかった。買ってくるね〜」
そんな和気あいあいした雰囲気の女達に比べて、男達は政務も兼ねている。
麻雀の駆け引きでもあるが、なかなかご意見番、当主、嫡男が揃う機会も無いのでこういう時に色々話す。
「南蛮貿易は金になりますね。大内家の工芸品は流石に負けますが、大量生産される生糸や真珠、蜂蜜や酒類は高値で取引されますよ」
「毛利の重要な商品ですからね……最近は大内に向けて鉄砲の輸出も拡大気味らしいじゃないですか」
「それもなかなか儲かっている。大内家の武将達は火縄銃に装飾するのが流行っているらしい。大砲の輸出も最近始めたがな」
房元と義元2人が会話をしていく。
特に事件が無ければ来年に房元は家督を義元に渡すと明言していた。
房元も20年近く毛利家長として苦労していたが、元就の補佐もあり、なんとか役目を全う出来たとホッとしていた。
「義元、就輝……次の時代はお前達が中心だぞ〜。(大内)義隆様を焚き付けたからあと5年もしたら畿内制圧に大内の軍が動く。それが終われば中部、関東と続く……本当の意味で天下統一が始まるぞ〜」
「そうなれば私も半国くらいは統治できますかね? 兄上」
「さぁ……頼むなら義元じゃないか?」
「勘弁してくださいよ……ただでさえ毛利が巨大化しているのに、これ以上膨張すれば粛清対象ですよ。甥っ子の亀童丸が毛利家を邪魔と見るかもしれませんし……」
「ワシなら毛利を本拠地から遠い関東や東北に飛ばすかのぉ……安芸だと大内に近すぎるし」
「僕達関東行きがまるで決まっているかのように聞こえますが……」
「まぁ未来だと関東が首都になるくらい栄えられるし、関東と東北が与えられるなら十二分に開発の余地はあるじゃろうて」
「どうなるんでしょうねぇ……私達は母上から未来の地図や情報を得られますけど……それが無い状態だと大変ですよねぇ……」
「移動するなら早くした方が良いですよね……彩乃婆様に頼んで関東や東北でも育つ作物や開発の地図、郷土史の資料を集めておかないといけないですね」
「やじゃなぁ〜長年開発してきた安芸から離れたくないのぉ……」
「はいはい父上、その考えは年寄り臭いですよ」
「53年も安芸で暮らしているんじゃぞ……故郷を捨てる抵抗が無いわけ無かろう」
「でも徳川家康って人は関東に行って再開発してるよ爺様」
「うむむ……えぇ~関東〜……」
「でも関東行きになるんだったら広大な領地欲しいよね。関東と東北、それに蝦夷地に樺太も!」
「そこから大陸に進出して中華と貿易路を繋ぐことが出来れば安泰ですかね……」
「どうなんでしょう。大陸の進出は一歩間違えれば大陸の戦乱に直結しますからね……明の次の清王朝がどうなるか……まぁ100年近くも後のことなので私らは生きてないでしょうけど」
「史実だとワシあと21年生きることになっておるが、健康に気をつけておるからあと10年は生きたいのぉ……」
「父上80超える気かよ……(志道)広良爺さん以上に長生きするのか?」
「広良は妖怪じゃからな……でも毛利が盤石になるまで生き続けたいのぉ……」
「こりゃ父上は義元兄や私の子供も見そうですね」
「はい、ロン。中のみ1000点」
「ぐわぁ〜ワシの満貫がぁ……」
「上がれなければそれは揃ってないのも同じですよ爺様」
「ぐぬぬ……」
話は蒸気船の運用に移る。
「今5隻じゃったか蒸気船」
「毛利丸、安芸丸、吉田丸、猿掛丸、広島丸の5隻ですね。毎年1隻増えてますがね」
「毛利丸以外は捕鯨船だけどね……おかげで捕鯨量が多くなって、四国では鯨肉や鯨油で盛り上がってたよね」
「盛就がもっと捕鯨船増やしてって懇願してたな……」
「捕鯨用の銛付き銃が開発されて捕鯨頭数が増えたからなぁ……、今年で28頭捕鯨できたんだっけか」
「父上、確かそうだったはずです。いやぁ鯨は1頭で1万8000貫の利益になりますからね」
「もう主要産業じゃな……28頭だから約50万貫……まぁ純利益は2割だから10万貫くらいじゃけどそれでも金になるのぉ……」
「まぁ1隻作るのに5万貫が飛ぶからな。買えるの大内くらいしか無いしな」
「金かかりますからね……蒸気船……。まぁ今の技術だとこの船を沈めることは不可能に近いですから費用対効果は良い方ですけど」
「南蛮人はあれを見ると驚愕しますからね……大内はもう10隻運用してますしね……」
「まぁ北九州炭鉱と台湾の炭鉱を保有しているから燃料に困らないのが強いですよね」
「よし、リーチ!」
義元がリーチをする。
「まぁ毛利家で運用出来るのは10隻が限界じゃな。利益が出ていても運用できる人員が足りん……」
「あ、ツモ! 4000、8000」
「ぐわぁ! 親かぶりじゃぁ!」
「義元強いなぁ」
「はい義元兄」
「悪いねぇ……」
こうして麻雀は続き、結局義元が勝利するのだった。




