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歴女JK謀神の子供を産む  作者: 星野林


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1546年〜1548年 次なる指針

 毛利房元の発言で政務に復帰できた陶隆房や内藤興盛の武断派は一部は感謝を、大半が毛利に対して妬みを持ちながらも大内の中心に戻る。


 陶隆房は尼子残党の殲滅を任され、尼子旧領の出雲、伯耆、美作、因幡各地を転戦し、1548年には空白地帯になっていた但馬、丹後、丹波3カ国に進出し、武力制圧した。


 陶家も周防守護代だけでなく、但馬、丹波、丹後3国を加えた4カ国の守護代に成長し、完全に発言力を回復する。


 一方で内藤家は武断派と毛利派が割れれば大内が崩壊すると毛利の尼子侵攻による動員兵力と迅速さで悟り、内藤興盛主導で毛利との融和を行った。


 そこで目をつけたのが、山口で自由気ままに暮らしていた毛利元経であり、彼に娘を嫁がせる事で毛利内部に侵食しようとし、毛利の中枢である元就、房元両名も許可したことで毛利元経と内藤興盛の娘あややが結婚し、大内義隆も祝福し毛利元経の希望で山口郊外に屋敷が与えられた。


 それは尼子三郎四郎の屋敷の近くであり、更に2人は親密な仲に発展していく。








 41歳(数え年だと42歳)になった大内義隆は今後の大内家がどう動くべきかを考えるために幼少の頃に語り合った毛利房元、毛利盛就、冷泉隆豊に加え、文治派の重鎮である相良武任の4人が大内館に呼ばれた。


「銀閣寺を再現した客間だ。実に美しいだろ」


「義隆様、また金をかけて……財務を預かる者として小言を言わねばなりませんね!」


「なんだ小言と言って抱かれたいだけであろう相良」


「バレてしまいましたか」


「全く可愛いやつよのぉ!」


 相良武任は大内義隆のセフレの1人であり、大内義隆が気に入るだけあり色白で肉付きがよく才覚溢れ出る男であった。


 史実でも大内家の財政を支えるが、貴族達の浪費や大内義隆の天文学的な額の産業投資に対してどうにかこうにか大内家の財務を切り盛りし、大内義隆存命期間中大内家が破産しなかった優秀かつ、大内義隆並に金銭感覚があった人物なのである。


 しかし、後方を支える人物が現場から嫌われるように武断派から凄まじく嫌われていた。


 彩乃から相良武任について未来の評価を聞いていた房元と盛就であるが、実際に会うと領地経営をしている身分である房元と盛就は相良武任の内政官としての優秀さに気が付き、贈り物を贈ったりして仲良くしていた。


 相良武任も派閥が分かれていても邪険にするほど器量は浅くなく、房元と盛就が山口に訪れれば自分の屋敷を滞在場所に貸し出すくらい仲が良かった。


 冷泉隆豊も房元と盛就とは相変わらず仲が良く、相良武任とも普通に付き合える武断派よりの中立者として大内家の政務を支えていた。


「房元、日ノ本の地図はあるか」


「はい、持ってきております」


 房元が彩乃が未来から持ってきた日本地図の写しを部屋に広げると大内義隆は駒を置いた。


「今我が大内家の所領は北九州、中国、四国の25カ国に及ぶ大領になった。日ノ本の外だと九州と同等の台湾は5州……日ノ本だと5カ国分の割り振りをしているが、それを合わせると30国を有する大国になった」


「今後大内家はどの様にすれば良いと思うか? 皆に聞きたくてな」


 ではとまず房元が語り始める。


「天下を統一するべきかと具申します」


「ほう? 朝廷、将軍を押さえ、今私は周りからは天下人と呼ばれているが、それでは足りぬか?」


「令制国に基づく日ノ本68カ国を制圧し、惣無事(各地の私闘を禁じる)事を目指すべきです。日ノ本が割れていればいつか南蛮勢力により付け込まれる事になるかと」


「南蛮勢力……確かに博多に多数滞在するようになったが……」


「これが地球儀になりますが」


 盛就が地球儀を取り出す。


「世界がこの様に広い中、日ノ本はこれほど小さき国なのです。我々か東シナ海を行き来しているだけなのに対して南蛮勢力は地球の裏側から航海してきています。付け入る隙を与えぬためにも日ノ本を再統一する必要があるかと」


「そうなれば畿内に再びの大遠征が始まるのでは無いか?」


「そうなります。なので一気に制圧する場合15万の大軍を動員し、四国、中国両面からの押し込む。畿内勢力を圧倒し、10年かけての大事業になるでしょう」


「今から初めても私は51歳……普通に死ぬ年齢であるな」


 相良武任は


「しかし、朝廷を失った畿内にそれほどの価値があるとは思えませんが」


 と言うが、日ノ本を統一しないと国力的に南蛮と対抗するのは難しいと説明する。


「だったら毛利家が独占している蒸気機関の技術を大内家にも広めるべきではございませんか?」


 相良武任は更に追撃する。


 大内家が更に飛躍するためには毛利の工業力をも手に入れたいとも思っていたのである。


「それは私の息子の亀童丸が当主になってからでも良いだろう。毛利には鉄道の輸出と蒸気船の製造をしてもらっているのだ。これ以上の技術提供は毛利の離反を招くぞ」


「失礼しました。房元殿、盛就殿もすみません」


「いえ、こちらも熱くなりました」


「今亀童丸様が8歳(数え年)10年すれば18歳と立派な武士になるでしょう。そんな亀童丸様の功績として天下統一をするのはどうでしょう。10年……しっかり準備をするのは」


「10年準備がいただけるのであれば財務の面でも何も問題はありません」


「……亀童丸に天下を取らせる……か。そのために父親がやらなければ鳴らぬ事は沢山あるな」


 大内義隆の目は屋敷の外……足利義維の御所に向いているのだった。



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