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1506年 毛利家臣団と薬食同源

 翌日、私は杉殿に聞きながら現在の毛利家の主な人員について説明を受けていた。


 まず現在の毛利家は執権の坂家、坂家庶流の桂家、志道家、先代毛利弘元により粛清され権力が低下していたが残っている福原家の4家が毛利庶流と言われる血縁関係が強い家臣であり、次に昔から毛利に昔から仕えている児玉家、渡辺家、粟屋家、国司家が主流の譜代家臣の家柄である。


 そして外様として先代毛利弘元時代に従属した元土豪の井上家が城持ちの家臣として名前が挙がる。


 ちなみに松寿丸様の教育係は井上衆で切れ者とされる井上元盛という人物が行っている。


 そして毛利家の最大動員兵力は1000名であり、約4000貫から5000貫の領地を保有していた。


 石高計算だとだいたい1貫2石計算なので8000石から1万石を有する国人であり、松寿丸様は多治比300貫の領主であるため600石を有する分家という立場である。


 ……毛利家と同等の領地を持つ国人が安芸国周辺には30家ほど犇めいており、各々婚姻関係を結んだり、敵対したりでコロコロ陣営が変わる様になっている。


 ちなみに安芸国最大勢力は安芸武田氏で武田信玄の甲斐武田氏も辿ると若狭武田氏に行き着き、若狭武田氏の分家が安芸国守護の安芸武田氏となる。


 が、幕府の権威低下、応仁の乱と大内氏との戦いにより敗北した結果弱体化し、現在は大内氏に従属する大名にまで家格が低下していた。


 守護大名がそんな状態なので土豪達が土地を横領し、勢力化した結果、安芸国は統治者不在の国人衆が犇めき合う蠱毒の領地となっていた。


 東は応仁の乱で弱体化したがまだ4国を統治している山名氏、北は京極家を傀儡にしている尼子氏、西には西日本最大の大名大内氏と巨大勢力の緩衝地帯……それが安芸国である。


 杉殿も


「私も家格が高い家柄では無いし、毛利家本家の男子が少ない為に分家を増やすために(毛利)弘元様の継室となったけど……酒毒で不安定になっていた弘元様の子供を産むことはできず、毛利家の為に再婚するわけにもいかず……という立場が私ね」


「杉様……」


「毛利家はとにかく弱いわ。何処かの勢力に肩入れすれば滅亡は免れ無いほどよ……そんな絶望的な状況下で彩乃が未来からやって来た。まだ数日の付き合いだけど松寿丸様はきっと立派な武士になられると私は信じている。そんな松寿丸様をどうか支えてあげて」


「もちろんです! 私のご先祖様は松寿丸様なのです! 私が来たことにより過去が変わってしまう……いや確実に変わりますが! より良い未来の為にが私は頑張りますよ!」


「うんうん! その意気ね!」


「はい!」








 その夜、松寿丸様とは昨日の話の続きとなり、食事と軍の重要性についての説明を行う。


「イギリスという国とフランスという国があり、2つの国が戦争になった。イギリスという国は飯が不味いことで有名であり、フランスは飯が美味い事で有名だった」


「ある冬の日イギリスの兵士は不味い飯を渋々食べていたが、フランスの兵士は用いる食材を工夫してなんとか美味く食べようとした」


「結果フランスの兵士は美味い飯を食べることで活力が湧き、イギリスとの戦争に勝つことができた……なんて話がある」


「他にも未来の話だが白米だけ食べている兵士と麦飯を食べている兵士が居ても、白米だけを食べている兵士は脚気という病気になったが、麦飯を食べている兵士は病気にならなった。これは食材にある栄養……体を作る材料が麦飯の方が多かったからという結果」


「人間我慢をするというのは体に悪く、食事も不味い物を食べるというのは苦痛で、体に不具合が起こるようになる。美味しい食事をすることで沢山食べることにも繋がり、子供はよく育ち、大人は長生きや力持ちに繋がる」


「未来では薬食同源という言葉があり、食事によっては薬になりうる……食事によって病を予防したり治したりという考えがある。松寿丸様も嫌でしょ? 不味い料理を毎日食べるのは」


 私の説明に松寿丸様も


「確かに嫌じゃな。ただ食糧が沢山ある国より貧しい国の方が強い兵士が生まれやすいのは何故じゃ?」


「甲斐や三河は強兵で尾張は弱兵とか言う奴ですか?」


「そうじゃ。尾張は豊かな事で有名じゃが兵が弱い事が西国でも耳にするのじゃが」


「兵の強弱は運用方法で幾らでも変わります。ローマという中華にも負けない帝国がありましたが、その主力となった兵士は弱兵というのが未来でも語られるくらいです。しかし戦術、優れた武器、豊富な資金と食糧により戦を次々に勝利していき、巨大な帝国となりました。近場だと大内氏がローマ帝国に似ています。中華の貿易により莫大な富を確保し、その富を使って国を豊かにさせ、兵を集め北九州から中国地方西部における巨大勢力となっているのです」


「ふむ……しかし毛利には中華と貿易するような富は無いぞ」


「無ければ作れば良いのですよ! 美味しい食事は金になるのです!」


「金は卑しい物と教育係の井上元盛は言うが……」


「そもそも井上家は金を稼ぐ事を得意としているのが未来でも言われていた一族で、金が卑しいとされるのは金の価値を他の人に知られたくないためです」


「ほう?」


「米を持っていて野菜が欲しい人、肉を持っているけど米が欲しい人……物々交換だったら取引が成立しません。しかし金が挟むと肉を持っている人は金で米を買い、米を持っていた人は金で野菜を他の人から買うことができる……肉も金で別の人に売れば物々交換では成立しなかった取引が成立するし、他の人の売買にも関与することができる」


「金で食糧は買えるのです。金で武器も買えるのです。金で兵を集めることもできるのです。金を給金として部下を養うこともできるのです……ちなみに史実で戦国時代を終わらせた大名は金の力で兵と最新の武器を大量に買い込んで、他の領主が農業が忙しい時期で兵が集まらない時に攻め込んだり、1年中、万を超える大軍を動かし続けて他の国を圧殺していきましたよ。それほど金には力があるのです」


「金も武器であるということか……」


「そう! その通りです! 金も武器! じゃあいかに金を稼ぐかになります」


「そうなるな……未来からの道具を他国に売るのは金になるんじゃないのか?」


「それだと売っただけで終わってしまいす。できるなら長く作り続けられる物……そう食糧を売った方が良いのですよ」


「しかし金になりそうな食糧なんてあるのか?」


「実はピッタリなのがあるのですよ……多くの僧が買い求め、中華でも高級食材にされている……椎茸という茸です」


「……え? 椎茸が育てられるのか?」


「ふっふっふ……未来では椎茸は毎食食べられるくらいに値段が下がった庶民の茸になっているのですよ……そして未来の技術があれば育てることも可能です!」


「おお!?」


「しかしそれには準備が必要になりますし、領主と言ってもまだ幼少の松寿丸様と私では金に繋げる販売路がありません。なので育て方を覚える為にも勉学に励む必要があるのです!」


「確かに茸であれば山が多い毛利領内でも育てることができそうだ。よし! 彩乃! 勉強を頑張るぞ!」


「その意気です! 松寿丸様」


 こうして今夜も勉強に熱が入る松寿丸様であった。

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