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歴女JK謀神の子供を産む  作者: 星野林


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1521年 尼子侵攻戦2 吉田郡山城合戦

 尼子の忍びの働きにより、松尾城の本丸に続く抜け道は一部塞がれているが、明らかに他所に比べて防衛が手薄い事が判明。


「よし(尼子)国久、私が正面を受け持つ、後方から一気に神道せよ」


「わかったぜ親父!」


 翌日相合元綱から連絡が無いとして城攻めを再開。


「耐えよ! もう少しで兄上の軍がやって来る!」


 バリスタや連射の弩により攻撃を防いでいたが、旧抜け道より敵が搦手に取り付いたと兵から連絡が入ると防衛も限界に思われた瞬間に山中からピーピーと笛の音が響き渡る。


 その瞬間に尼子軍の左翼部隊がババババと言う破裂音と共にバッタバタと倒れ道が開けたのが見えた。









「第二射用意! 放て!」


 火縄銃による攻撃を受けたことの無かった尼子兵達は未知の攻撃により動揺してしまい、恐慌状態に陥ってしまう。


 元就は今動ける最精鋭の1500の兵を動かし、火縄銃を与え行軍させていた。


 恐慌状態になった尼子軍に相合元綱はバリスタの射撃を集中させ、血路を切り開く。


「今だ! 突っ込め!」


 城門を開いた相合元綱は馬に跨り、敵兵を斬り捨てながら尼子軍を突破し、松尾城兵2000名のうち1500の兵が毛利軍に合流する。


 その瞬間に松尾城から火の手が上がり、松尾城が陥落したのが見えた。


「(相合)元綱、吉田郡山城に逃げるぞ」


「はい!」


 元就は各所に伏兵を設置し、小隊単位で火縄銃による攻撃を尼子軍に絶え間なく浴びせる事で尼子軍の行軍速度は大幅に低下し、毛利軍は吉田郡山城に戻る時間を稼ぐ事に成功する。


 それでも尼子の失った兵は1000名程度であり、大きな痛手では無かったが、尼子経久は嫌な予感がひしひしと感じていた。


「亀井」


「は!」


「吉田郡山城に籠る毛利の兵は幾らだ」


「推定ですが5000から1万になるかと」


「うむ……渡辺や坂が居れば中から崩せていたが……これは長期戦となるな」


「朗報もあります。吉川隊が猿掛城を攻め落としたと報告が」


「猿掛城に本陣を置き、吉田郡山城は長期戦を想定せねばか」


「忍びからも見たことが無い山城と言われております。松尾城でも見たことのない弓を新宮党が鹵獲しておりますので……」


「うむ……まずはその弓を確認するか」









 尼子経久は猿掛城に本陣を置き、吉田郡山城への睨みを利かせていた頃、吉田郡山城の毛利軍は蔵田房信にひっきりなしに援軍要請を送り続けていた。


「(蔵田)房信殿はなんと」


「武田家の侵攻を受けて援軍を送ることが難しい。本国の大内義興様が動くには3ヶ月ほど時間がかかると」


「3ヶ月か……問題無いな」


 元就は伝令の兵に堂々と言い放ち


「蔵田房信殿と大内義興様にこう伝えよ。毛利は3年でも耐えてみせますると」


「確かに!」


 第二工事をしている最中であったが、吉田郡山城は第一改築で山の殆どを飲み込む巨大な山城へと変貌しており、隠し通路を使えば宍戸領内方面に抜ける地下トンネルも掘られていた。


 水を断とうにも深井戸であるため水攻めも不可能であり、兵糧さえ気を付ければ1年半は籠城は可能であった。


 3年は伝令を安心させるための誇張であったが……。


 伝令が大内義興にその事を伝えると


「流石武勇に優れる毛利家よ! 陶!」


「は!」


「3万の軍をもって尼子の息の根を止める。1万で先行し、武田をけん制しつつ、毛利の救援を行え」


「畏まりました」


「大内家の恐ろしさ身に沁みて味わえ尼子経久」









 尼子経久が猿掛城に本陣を置き、先陣の部隊が吉田郡山城の見える位置まで陣を進めたが、白い壁が何重にも聳える吉田郡山城を見て絶望する。


「どうやって攻めるんだよ……あんなの……」


「小さな松尾城の城壁も結局突破出来なかったのに……もしあれがまた一枚岩だったら……」


「強弓ではなく毛利の新兵器だった訳だろ……俺見てたぞ。盾を構えていた武者が盾や鎧ごと矢に突き抜かれて絶命していたの」


 兵達も動揺していたがそれは将達もどうやって落とすか必死に考えていた。


 城に続く道は2箇所あるが、その道にも出城が作られ、こちらを待ち構えていた。


「月山富田城とは違い人工的に作られた大要塞というわけか」


「忍び衆も毛利の忍び衆と小競り合いが起こっており、被害が凄いことになっているとも聞く……抜け道らしき場所も無い……吉川殿は知らぬか」


「儂も毛利の居城がこれほどになっているとは知らなかった。恐らく儂が尼子に寝返ってから更に増築したものかと」


「とりあえず町に放火して様子を伺うしか無かろう」


 尼子の先陣は城下町に放火して様子を伺うが、1度目は特に反応が無く、2度目の攻撃には騎馬に乗った兵500が尼子に接近して射撃を繰り返した。


 今回騎乗していた騎馬はまだばんえい馬系の大型馬ではなく、日本在来種の小型の馬であった。


 しかし馬上筒の開発が完了していた毛利軍は騎馬銃兵として活用し、尼子軍を強襲。


 火縄銃への対抗策を持ち得ない尼子軍は馬上筒による射撃で陣形が崩壊し、直ぐに槍に持ち替えた騎馬隊による突撃で1000居た兵は散り散りに逃げ惑い、更に日が暮れた中で射撃が続いていた事で同士討ちも多発。


 多くが討死してしまうのであった。


 先陣が威力偵察の最中に崩壊したことは尼子経久にも伝わり、陣を変更して攻撃は最小限に兵糧攻めに切り替えるが、度々襲撃してくる毛利騎馬鉄砲隊に損害といつ襲われるかわからない恐怖が伝播し、吉田郡山城攻めから1ヶ月もすると逃亡する兵が目立つようになる。


 尼子経久は尼子国久の新宮党を督戦隊として逃亡兵を見せしめに殺すことで軍紀を維持するが、地の利の無い吉田の地で諜報活動や破壊工作を担当していた尼子忍び衆が毛利忍軍に敗退してしまい、元就の命令が他の地にも届くようになる。


 1ヶ月ぶりに石見の毛利軍との連絡が取れるようになり、元就は元就に心酔している旧高橋領内の村々に連絡を行い、尼子の兵を1人殺す度に尼子撤退の暁には1貫を報酬として与えると通達すると村人達は熱狂し、尼子の補給部隊の襲撃を活性化。


 更に石見の毛利家臣達には石見の尼子軍を攻めよと命令し、尼子経久の軍を安芸に留められないように仕掛ける。


 尼子経久は軍事的には毛利に小さな敗北はあれど、松尾城や周囲の砦を落としたりと勝ちの方が多かったが、どんどん毛利に追い詰められていっていた。


 追い詰められた尼子経久は傷が浅いうちの撤退を選択し、吉田郡山城攻めから3ヶ月で全軍撤退を命令した。


 しかし、その情報を規律が乱れていた尼子軍と商いを行っていた毛利忍軍にすっぱ抜かれ、闇夜に紛れて撤退を開始した尼子軍に毛利軍は襲いかかった。



 吉田郡山城には人夫をしていた者や逃げていた城下町の者に旗を持たせて城兵が居ることを偽装させ、毛利軍主力は全力で追い討ちをしたのである。


「かぁ! 兄貴達には悪いがオラの初陣は派手にすっぞ!」


 追撃軍の中には元就の3男申三郎も混じっており、棍棒を振り回しながら敵兵を蹴散らせていった。


「お? 吉川の部隊か? 鬼吉川に勝ったらすっげぇぞ! 手柄をよこせぇ!」


 申三郎は撤退中の吉川隊に突入し、混乱状態の吉川は当主吉川元経、前当主吉川国経両名が戦死してしまいほぼ壊滅してしまう。


「なんでぇつまんねぇの。鬼吉川もこの程度か?」


 一方で尼子軍の方も酷いことになっており、殿をしていた尼子の将兵達が次々に戦死していき時折鳴り響く鉄砲の音と共に仲間が死んでいくのに発狂した兵も多数居た。


 本体から離れてしまった兵達は元就の命令で村ぐるみで落武者狩りをしており、次々に討ち取られてしまい、尼子経久、尼子国久、塩冶興久と言った尼子の中枢は辛くも出雲に撤退することができたが、家老2人、国人衆の当主10名、兵6500名を失う大敗をしてしまい、尼子の影響力は大きく減衰。


 1国衆である毛利家単独により巨大な尼子に壊滅的打撃を与えた事は周囲のみならず日ノ本中に名が轟く事になるのだった。


 そして尼子に合わせて攻撃を行っていた安芸武田家の家運が尽きる戦いが始まるのであった。

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