1518年 亀童丸と薔薇色の未来絵図
元服の儀も終わり、元就が帰った数日後から毛利房元と盛就の2人は亀童丸と面会が許され、亀童丸は2人を温かく出迎えた。
若干の色欲は感じたものの亀童丸は房元から3つ年上であり、現代で言うところの東大の教授くらいの権威がある僧だったり貴族を家庭教師として知識を教えてもらえられる立場であるため武家としてだけでなく西国の覇者たる大内の後継者足りうる教養と知識を身に着けていた。
毛利兄弟は未来知識があったとしてもそれ以上の圧倒的な教養を持ち、性格も穏やかで自分達に優しい亀童丸に直ぐに懐くことのになる。
「ホッホッホッ房元も盛就も蹴鞠や武芸は言うことが無いのぉ! 特に剣術は私の師範達でも簡単に倒してしまうほど……2人が大内家を支えてくれるのは嬉しく思うぞ」
「亀童丸様も余所者の私達を優しくしてくださりありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「うむうむ、じゃが勉学はまだまだ。励まねばならんな」
「「はい!」」
亀童丸は真っ直ぐ自分を見てくれるイケメンに囲まれて鼻血が出そうになるのを堪えながら、算術の授業を受ける。
「ん? 2人が扱うその字はなんだ?」
「異国の数字でアラビア数字と言うと母から教わったのです。壱が1で見やすいとは思いませんか?」
「ほう、確かにこれは漢字にするよりも見やすいな。せっかくだから教えてくれないか!」
「私達でよければ」
「うむうむ、教師の者達も踏まえて算術を勉強しようぞ」
そうして算術を教えてくれる者達を集めて算術を勉強するが、亀童丸は天才であった。
頭の中に算盤が入っているかのように瞬時に計算をして政務に必要な数字を導き出す。
算術だけにとどまらず、勘合貿易で明(中華王朝)との貿易を担う為、漢文を自由に扱う事もできた。
一番凄いのは未来の知識で初歩的な経済の事を理解していた毛利兄弟であったが、それより高い経済の知識を中学生程度の年齢かつ、銭を汚物扱いする武士が周りで殆どの中なのに独学で高い知識を得ていたことである。
最初は毛利兄弟を抱くことだけ考えていたが、自身の中でモヤモヤしていた経済的感覚を刺激され、母親の彩乃に教えられた未来のボードゲームカタン(経済ボードゲーム)で遊ぶ事が多くなっていた。
そのうち亀童丸のセフレである五郎も混じり、毎晩性行為そっちのけで大内家と毛利家双方の利点と経済を連結させることによる利点及び将来の事を語るようになる。
「大内家の利点は大領を得ていることもあるが明との勘合貿易の独占にあると思うが皆はどう思う?」
「そうですね。勘合貿易の利益は莫大ですが支出をいかに減らすか、明のみに貿易を頼るのは危険と私(毛利房元)は思います。商人達の話を聞くに」
房元は地図を広げて彩乃と元就から教えられた東アジアや東南アジアの情報を書き込んでいく。
「私も母上や父上の又聞きなので申し訳ないのですが、中華の明王朝がここで、朝鮮王朝がここ……で、北部地域からグイッと南下したここに九州程の大きさのほぼ人の居ない島(台湾)があり、琉球王国がここの島々、そこから更に南に行くと黎朝と言う王国があるそうです。そして東に行くとまた王朝の無い空白地帯が多々あるようです。そこを南下するとマギンダナオ王国とスールー王国と言う仏教でも神道でもない異国の文化の国があるようです」
「良いのか? これほどの情報は純金にも匹敵するぞ」
「毛利にはこれを生かせる基盤がありません。そもそも海に面していませんし、これを生かせるとしたら大内家しか無いと父上(元就)も言っていましたし」
「なるほど……その国々と貿易をする場合何が売れると思うか?」
「黎朝は中華の文化圏なので中華に売る物と同じ物が売れるでしょうが……マギンダナオ王国とスールー王国は分かりません」
「兄上の説明に補足なのですが、黎朝では米が大量に収穫出来るそうなので冷夏の前兆が出ていれば黎朝から米を大量に輸入して飢饉が起こっている場所であれば恩を売りつつ金も儲かるのでは?」
「ふむ……異国との貿易の販路を更に広げる、台湾と言う島を開拓する……うむ、琉球との貿易の中間地点でもあるから台湾と言う島は交易の中継地点としては素晴らしいな」
「あと毛利領で収穫出来る椎茸や採取出来る蜂蜜も明との貿易に売るために大内家に卸す準備があると父上は言っていましたが」
「椎茸も蜂蜜も中華が欲している産物だな。質が良ければ同じ量の銀と決算されるほどだが……」
「既に商人を通して流していますが、商人達も金額が金額なので取り扱える量がありますので大内家に毛利家の生産量の8割でも買ってもらえれば毛利の財政は安定するのですが」
「椎茸と蜂蜜はどれぐらい売ることが出来るのだ?」
「干し椎茸を20俵ほど(1俵30キロ計算)、蜂蜜は120斗(1斗約15リットル)は大内家に輸出することができます」
亀童丸は瞬時に計算し
「ほぉ、干し椎茸だけでも80万貫、蜂蜜は3万貫か……どちらも確かに大金になるな。明に持ち込めば5倍から10倍の価値になって返礼の品が贈られるだろう」
なので5倍計算でもこれが415万貫に化ける事になる。
経費を差し引いても大内家は約330万貫の利益を手に入れる事が出来るのである。
1貫2石計算だと660万石……最盛期の信長に匹敵する利益である。
「そうなれば朝廷献金や領内の寺社の保護、軍事費に費やしても余るから更に工芸品や技術投資が出来るな。いやその資金を元手に私の代で再びの上洛も出来るかもしれないな!」
「はい、そうなれば大内家の天下は決まったような物。毛利家はそれを支える家臣としての名が残るでしょう」
「うむうむ! 話が本当なら安芸の国人ではなく毛利を安芸国守護代にしなければならんな」
「守護代は蔵田殿なのでは?」
「蔵田も優秀であるがこれほどの銭を生み出す能力は無い。蔵田には台湾の開拓を任せるのでも良いな!」
「いやいや、蔵田殿に本家筋の妹を嫁がせる事を許してくだされば蔵田家と毛利家で安芸国を統治致しますが」
「うむ……そうだ! 備後だ! 備後を毛利の守護代とする!」
「備後ですか?」
「山名は大内家と敵対しているからな! だから奪い取ってしまえ」
「根回しで父上が苦労しそうですね。とりあえず順序を踏みたいので今毛利の本領である吉田郡の分郡守護を貰いたいです」
「そう言えば今毛利家は無官無職だったな少し待っておれ、必ず従五位は与える……いやそれだけの取引だ。朝廷献金をすれば従四位にはしようぞ」
「良いですね。そしたら弟の盛就はどうします?」
「亀童丸様、私も官位が欲しいです」
「うむうむ! 盛就は従五位……いや正五位にしてやるぞ! 俄然やる気が出てきた! 計算のやり直しだ! それだけ使える金があるなら兵糧攻めもしやすかろう。遺恨のある少弐氏を今度こそ根絶やしにして北九州を完全制圧し、大宰府の再建もしなければな! いやいやここは荒れる京より寺社を誘致するのも有りだな」
「あ、亀童丸様、では四国を毛利家に与えてくださりませんか? 母上が土佐であれば南国の作物が作れると言っていたので砂糖を作れるようになるかもしれませんよ」
「ほほお! 中華より薬とされている砂糖をか……そうだな! 五郎も手伝え! 西国の地ならしをするぞ」
「亀童丸様の元で軍権を握れるのなら私は義興様の右腕である陶興房様の様に亀童丸様の右腕として頑張ります!」
「では毛利は両足といったところですかな」
「となると左腕を探さなければならぬな! 面白くなってきた! 絵図を広げよ! 今日は寝かせぬぞ!」
亀童丸と五郎、毛利兄弟は毎晩亀童丸の寝室で将来について熱く……熱〜く語り合い、肉体関係に発展するのにそう時間は掛からなかった。
元就があばら家で彩乃と志道広良、杉殿の4人で将来を語り合った様に、息子世代は亀童丸を主として未来を語るのだった。




