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歴女JK謀神の子供を産む  作者: 星野林


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1516年 有田中井手の戦い

 毛利家が直ぐに大軍を動かせないと判断した若狭武田家の当主、武田元繁は直ちに軍を集めて吉川家が奪っていた有田城に攻撃を開始した。


 大内義興はまだ京におり、大内側の兵も即座に動かすことができず、若狭と周防の周辺国衆が武田家に同調したために瞬く間に武田軍は膨張し、5000名を超える軍を揃えることに成功していた。


 有田城に300の兵しか詰めていなかった吉川家は直ぐに元就に救援を要請するが、坂や渡辺といった家臣達は尼子国衆の攻撃による防衛で兵を出すことができず、直ぐに動かすことが出来る兵は毛利元就直轄の500名、相合元綱の200名、井上衆400名、その他400名の合計1500名であった。


 吉川からも救援部隊500名を抽出し、有田城を合わせて2300の兵を集めることが出来たが、それでも武田軍の半数に満たなかった。


 武田軍は有田城を囲むと、吉川の小倉山城城下を焼き討ちして挑発、元就率いる毛利軍は江の川まで侵出し、陣を張るのであった。


「(志道)広良、武田の一部で良い釣り出すことはできぬか」


「元就様の兵を使えばできましょう」


「よし、兵200を任せる。釣り出してくれ」


「相わかった」


「(相合)元綱、釣り出した軍を一気に叩く。伏兵の準備を頼む、ワシはわざと前に出て敵の餌として動く」


「兄上、それは危険では!」


「武田をここで打撃を与えねば尼子と挟み打ちが続き、毛利が潰される。この戦で大局を変える為の布石を打つ」


「……ご武運を兄上」


「大丈夫、神はこちらに付いているのじゃ」







 志道広良は渡河し、有田城を囲む兵に向かい矢を放ち、撤退するを繰り返していく。


 場所を変えながら3度攻撃すると苛立った武田元繁は部下で戦上手の熊谷元直に鬱陶しい兵を追い返せと指示し、兵600を付けて追撃を開始、志道広良はギリギリ追いつけない速度を調整しながら撤退をするが、突如毛利元就率いる本隊が志道広良の部隊を救援するために江の川を渡河しているのが見え、熊谷元直は大勝首が見える位置まで迫っていることに興奮し、視野が一気に狭まった。


 そこの瞬間にピーピーと毛利元就率いる本隊から笛の音が多数響くと草むらに伏せていた相合元綱の兵が一気に熊谷元直隊に襲いかかった。


 逃げていた志道の部隊も反転して攻撃を加えると熊谷元直は奇襲かつ半包囲を喰らう形になり、一気に劣勢となってしまう。


 しかし戦上手の熊谷元直はすぐさま状況を理解すると兵を鼓舞して隊の立て直しを図ったが、毛利と連絡を取るために動いていた吉川隊の一部部隊がこれを好機と感じ、背面から突撃すると包囲される形になり、熊谷隊は崩れてしまう。


 その混乱の最中熊谷元直は流れ矢がこめかみに命中し、絶命。


 享年27歳の若き勇将の死であった。






 毛利軍から勝鬨が上がり、熊谷元直が戦死したことが武田元繁に伝わると、武田の戦略が瓦解しかかっていることを瞬時に理解した。


 武田はこの戦を安芸制圧の第一段階と捉えており、まず吉川、毛利連合軍には圧勝するのが前提であった。


 しかし、腹心の熊谷元直が呆気なく戦死したことで付き従う国衆が武田の武威がそこまで無いと感じれば大内家に再び寝返ってしまう(表返り)かもしれない危険があり、負けを覆す勝利をしなければならなかった。


 それはギャンブルに負けた人物が更に大きな金額で負けを取り返そうとする思考と同じであり、元就のドツボに嵌っていた。


 ここで元就ももう一度大きな賭けに出る。


 軍を前進させて武田軍と激突したのである。


 ただ寡兵だった吉川、毛利連合軍は徐々に押し込まれていき、冠川まで押し込まれ、徐々に毛利軍は川を渡って逃げ出していくが、元就が川中に踏みとどまって武田軍を抑えていた。


 自軍があと一押しで勝てるのに押しきれないのを感じ、苛立っていた武田元繁は川中で踏ん張る元就が目についた。


 大将首が目の前に現れた武田元繁は頭に血が上り


「俺が手本を見せてやる!」


 と川に馬に乗って突っ込んでいった。


 武田元繁が元就に突っ込んだ姿を確認し、元就から事前に策を与えられていた井上俊秀率いる弓隊が武田元繁目掛けて大量に矢を放った。


 ドス……ドスドスドス


 武田元繁はまず馬に命中し、態勢が崩れ、兜がズレた時に眼球と眉間に矢が次々に突き刺さった。


 そのまま落馬した武田元繁は川に流されてそのまま消えてしまった。


 合戦の潮目が変わるのは一瞬で、武田元繁が戦死した瞬間に武田軍は直ぐに撤退していき、毛利軍は熾烈な追撃戦を行う。


 結果5000を超えていた武田軍は1800もの者が討ち取られ、武田家の中枢である武田元繁と熊谷元直の2人が戦死、一方で毛利軍は250名の死者かつ、有力な武将での死者はでなかった。


 これにより武田家は急速に弱体化していき、吉川家は助けを受けた毛利家に更に依存を強める結果となるのだった。









「ふう、勝った勝った……」


「お疲れ様でした」


 吉田郡山城に戻り、戦後処理という仕事が残っているが、とりあえず未来に行き、一緒に風呂に入り、汚れを落としながら今回の有田中井手の戦いについて話をしていた。


「今回の合戦の内容を再研究しなければならんのぉ」


「そうですね。しかし二重の囮とはよくやりますよ……一歩間違えれば私未亡人ですからね」


「悪かった悪かったのじゃ、ちんちんをにぎにぎするでない……」


「これからどうするのですか?」


「まずは大内義興様に戦場報告をするじゃろ……次に恩賞を配らなければならんじゃろ……」


「なるほど……まぁ私は息子達をしっかり育てるだけですけど」


「彩乃には留守の間猿掛城をよく回してくれたのぉ、助かったのじゃ。しかし兄上が亡くなる史実が変えられなかったのが心苦しいのじゃ」


「急死はどうしようも無いですから……元就様は健康に気を付けてくださいね」


「わかっているのじゃ! 史実よりも長生きするぞ」


「そのいきですよ! とりあえず有田中井手の戦いについての軍の流れはしっかり書き残してくださいね」


「4枚くらい残そうかのぉ……さてと、今後尼子がどう動くかじゃな」


「今回の合戦に参加していなかった渡辺と坂は要注意ですね」


「ああ、相合元綱を擁立しようと動いておったから何か裏があるのじゃろうて……なるべく早く膿出しをせんといけんな……忍びを内に潜ませておかねばな」


 そんな会話をしながら元就は山場をなんとか乗り越えるのであった、




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