1512年 三男申三郎の誕生
有田城攻めは元就が出ることは無かったが、吉川の奮闘と攻める側だと思っており、攻められると思ってなかった武田側の油断により、比較的簡単に、落城させることに成功した。
「ふう、これで毛利家は隣接する敵国が減りましたね」
高橋領を飲み込んだ事で石見に隣接したが、石見は大内側で固まっているため、現状毛利が隣接する敵国が消滅した。
武田家も安芸国人一揆が自身の敵に回った事を判断し、安芸北部や東部に対して攻勢を辞め、周防の大内領内に侵攻に注力することになる。
ストレスから解放された毛利興元は綺麗なお嫁さんであるマヤ殿と過ごす時間が増え、無事にマヤ殿は懐妊。
彩乃から妊婦が食べてはいけないものやマタニティーヨガを教えたりして妊婦の心得を伝えた。
そんな彩乃はまたお腹が真ん丸に膨らみ、臨月を迎えていた。
「彩乃殿は毎年お腹を膨らませておりますな」
「良いでしょ志道様」
「ええ、毛利家の血族が増えるのは良いことですな! ちなみにお腹の子は次は? 男女どっちなのですかな?」
「また男児ですよ。3人連続ですよ。次志道様が名付けますか?」
「おや? 良いので?」
「元就様も名前をどうするか考えていましたのでもし良ければ」
「ふむ……干支が申なので申か猿のどちらかを使いたいですな」
「なるほど干支ですか」
「はい、干支であれば12通りの言葉が使えるし、男児が更に続いても安心ですぞ」
「それは良いですね。というか流石に次は女の子を産みたいですが」
「いやいや、まだまだ男児を産んで欲しいですぞ。マヤ殿の赤ん坊の性別が神通力で分かったりはできないですか?」
「いや……流石にそれは私の力では無理ですね。私は未来の病院で確認することができましたが、施設も技術も無いので」
「ふむ……残念です。マヤ殿が健康で産まれるよう祈りますかな」
「健康な男児が産まれると良いですね」
そんな話を志道広良と話す彩乃だったが、その数日後に陣痛となり、未来で出産。
今回の子供は3キロと平均的であり、産道が何度も出産したことで慣れてきていた。
「いやぁ乳房も黒くなっちゃったなぁ……胸滅茶苦茶大きくなったけど」
「尻も大きくなったのじゃ……抱き心地は最高じゃぞ」
「元就様のエロ!」
出産直後にする会話ではないが、健康的な男児を産むことが出来た。
名前は申三郎となり志道広良の案が採用されるのであった。
「しかし彩乃様のお子様はとにかく元気ですね!」
「元気過ぎて私達が振り回されて大変ですよ」
「あはは……」
今日は侍女である椛と颯の2人と子供を見ながら茶会をしていた。
「はは! これ甘い!」
「あまー」
「賢太郎も小次郎も可愛いなぁ。はい、クッキーいっぱい食べな」
「やった!」
「やぃ!」
クッキーの入った器を取って2人で食べ始めた。
ちなみにクッキーを作ったのは私で、未来のオーブンを使って大量に作ってきた。
「このジャムというのも甘くて美味しいですね。赤いドロっとした液体だったので最初は戸惑いましたが」
「それだったら紫色のこちらのブルーベリー? ジャムもなかなか……」
「砂糖と果実を煮詰めて長期保存出来るようにした物だから今の毛利家ではなかなか食べられないでしょうね。毛利家でも砂糖が作れるようにしないと行けないかなー」
そんな話をしていると怜が部屋に入ってきた。
「あー! 美味しそうな物食べてる!」
「怜ちゃん今日は薙刀の鍛錬をしていたのでは?」
「もう終わったわ彩乃姉様! それよりクッキー良いなぁ!」
「まだまだあるから手を洗ってから食べましょ」
「はーい! 残しておいてくださいね!」
だだだと井戸の方に走って行った。
「怜様もずいぶんと彩乃様に懐きましたね」
「正妻、側室で争うのはもったいないわ。それに元就様も私が孕んで行為ができない時にも辛い思いをしているからもっと怜ちゃんに肉をつけてもらって子供を産める体になってもらわないと」
「子供を産むのが危ない体とかあるのですか?」
「やせ細っているより下半身に肉が付いていた方が難産が少ないというのと、私が毎日している体操と柔軟あるでしょ。あれは下半身の可動域を広げて赤ん坊を産みやすい様に骨盤を広げているの。この下半身の骨が幼いと産道を塞いでしまって幼い子が子供を産むと母親が死にやすい理由よ。椛と颯もそろそろ適齢期だから覚えておくと良いわ」
「なるほど……だから奇妙な体操を私達や怜様にやらせていたのですね」
「骨は少しずつ動くようになるから毎日やる必要があるのよ」
「「勉強になります!」」
15歳……数え年で16歳で3人も子供を無事に産んでいるのは色々な人から尊敬の眼差しで見られるのが戦国の世。
最初は猿掛城以外の毛利家家臣に怪訝そうな目で見られていた彩乃も今では元就の正妻としての立場を確固たるものにしていた。
「彩乃姉様! 洗ってきましたわ!」
「はいはい、ここにクッキーあるからジャムを付けて食べなさい」
「わーい!」
13歳の怜姫にはお菓子の様な甘味に目が無く、菓子を頬張ると幸せそうな顔をしていた。
彩乃が怜の尻を揉む。
「きゃ! なにするんですか! 彩乃姉様!」
「肉付きが良くなってきたわね。これなら来年には子作り出来そうね! 元気な赤ん坊を産みましょ怜ちゃん」
「は、はい! 来年かぁ! 楽しみです!」
「もっと胸が大きくなる食べ物でも食べます? 母乳が出る出ないは子供の養育に大きな影響が出るわよ」
「胸ですか……彩乃姉様みたいに大きくなりますか?」
「ええ、鶏肉と玉菜を食べると胸が大きくなると言われているわ! 元就様も大好きな豆乳鍋を今夜食べましょうか!」
「やった! 食べます食べます!」
すっかり腹ペコキャラになっている怜姫であった。
ある日城を出て城下町を賢太郎と小次郎と一緒に散歩をしている。
産まれたばかりの申三郎は信用できる乳母に任せ、侍女の椛と颯の2人も連れて工房に来ていた。
「やっほー鈴木の親父! 元気?」
「おお、彩乃様に若様達じゃございませんか! こんな場所にわざわざお越しいただいて……」
「どう旋盤の複製は進んでる?」
「はい、今月だけで3台も複製できました。いやぁ、旋盤があると農具作りや矢を作るのが楽になると他の職人も喜んで居ましたよ」
「そうですか……賢太郎鈴木おじさんだよー」
「鈴木おじちゃん!」
「おお、若様は本当に元気ですな! はい新しい積み木ですよ」
「やったー! 小次郎見て積み木!」
「つみー! つみー!」
キャッキャと2人が喜んでおり、鈴木に彩乃は質問する。
「クロスボウはどう?」
「弩の事ですか? 改造を加えておりますが、馬上で安定化させたり、連射させるにはまだ工夫が必要ですなぁ……それに城に取り付けて発射する連射弩の開発も進めませんと……便利なのですがね」
「頼りにしていますよ」
「任せてくださいな彩乃様!」
手先が器用で流れの職人であったが、旋盤を使うことで竹を使い、ボトルキャップの製造に成功するなど腕は確かな職人であり、将来の鉄砲鍛冶候補者である。
今は旋盤作りや木工、弩の改造を頼み、それに熱中している。
彩乃からも毎月褒賞としてお金や技術書を投げており、信頼している職人である。
彼が本格的に活躍するのはもう少し後の事であった。




