1511年 元就の暗躍 結婚ラッシュ
元就の行動は素早かった。
まず吉川領内に様々な噂を商人や盲目の琵琶法師、歩き巫女を組織化した忍び衆を使い、流布した。
噂の内容であるが、まずは大内義興が陣抜けをした吉川家を討伐するべく毛利家が先遣隊として合戦に挑む可能性が高い事。
ただ毛利家は吉川と縁があるため穏便に済ませたいと思っていること。
高橋家は吉川家を攻撃するつもりであるという3つだ。
更に偽装した死体を使い、高橋が吉川を攻撃しようとしている密書を偽装し、それを吉川家家臣に拾わせることで高橋家と吉川家の仲を引き裂く工作を続ける。
噂が広まった段階で毛利元就は吉川領に行き、当主である吉川国経に面会を求めた。
吉川の嫡男吉川元経の嫁さんは毛利元就の妹(異母妹)であり、深い繋がりがあったためにすんなり話を聞くことに繋がった。
「毛利興元は立派な武士であったな。私達は時政を読み違えた。大内義興本軍が帰国する際に踏み潰されるであろうか」
吉川国経が毛利元就に聞くが
「毛利家としては血縁関係の強い吉川家を取り潰しとなれば、次は毛利が狙われるのではないかと思っておりますのじゃ。故にここはワシら毛利に協力して欲しい」
「協力とな?」
「吉川、高橋討伐軍の援軍として安芸武田軍が安芸国に帰還する予定になっているが、噂じゃと安芸武田家は大内家からの独立を望んでいるらしいのじゃよ。恐らく明確に離反すると思うので、そこを毛利、吉川両軍で叩く。それによって大内に従順であることの証明とするのじゃよ」
「てっきり高橋攻めを手伝わされるのかと思ったが」
「吉川は高橋家との血縁関係も深かろう。じゃから援軍に向かわんだけでもありがたいのじゃよ」
「ふむ……足りんな」
「足りないとは?」
「もし武田家が離反しなかった場合毛利が庇えど吉川が残る道は少なくなる。故に私の妹を毛利家に嫁がせる。興元殿は誰か婚約者はおるのか?」
「筑前守護代の杉殿の娘が嫁ぐ予定です」
「ふむ……元就殿は?」
「私にも正妻がおりますが側室で良ければ話は受けるが……」
「もし元就殿と私の娘の間に男児が産まれれば吉川家の養子に剳せては貰えぬか」
すると息子の吉川元経も
「家を残すためなら仕方がない。幼い息子が居るが、その子は元就殿に男児が産まれれば直ぐに寺に預け、吉川の継承を約束しよう」
「本当によろしいので?」
「吉川という家を残すためだ。二言は無い」
「一応誓約書を纏めましょう。予備も含めて3通ほど書いて欲しいのじゃ」
「わかった」
「分かりました」
裏工作の為か、吉川家は高橋家との関係が悪くなっており、吉川家の継承権を毛利家が手に入れる結果となり、吉川とは対武田家の盟約を結ぶことにも成功する。
「これでよし」
続いて元就は安芸国南東部の国人衆に手を回す。
安芸に何者かが大規模な侵攻をした場合、安芸国国人衆は一丸となってその勢力に抵抗するという国人一揆の契である。
というのも大内義興に連れられての上洛及び京周辺での軍事行動で多くの家が疲弊しており、備後の山名家が安芸国に侵攻した場合辛い立場に立たされる為に国人一揆の契を結ぶことで相互援助を約束する契約であった。
なお本当の目的は高橋家に味方する国人を減らす為の行為であり、順調に高橋家を孤立化させることに成功する。
一方で空気を読まない国人もおり、毛利領の隣である宍戸家は公然と毛利に対して旧領奪還を掲げて侵攻を開始。
これは父毛利弘元時代に宍戸家の領土を横領したことから始まった遺恨であり、国人一揆も外敵ではないため様子見を決め込んだ。
この宍戸との小競り合いで史実に先立って元就も初陣を経験し、育てた兵100名と共に戦場を駆け抜けた。
「機動力が足りんな。兵を皆騎馬兵にすることで一撃の威力を高め、瞬時に離脱する戦法を使えるようにしたいのぉ」
決まれば勝敗が一気に決まる騎馬による突破戦術。
ゲームでは普通に行われているが、兵の殆どを騎馬にするのは金がかかるため難しい。
しかし兵を急激に増やすことのできない元就の軍はとにかく質を上げる必要があり、精鋭兵の殆どを騎馬にすると言う計画を打ち立てる。
そこで商人達に頼んで馬を用意してもらい、兵士達に乗馬訓練を施し、実戦で使えるレベルまで持っていく。
まぁ数が揃い、実戦レベルまで到達するには数年の歳月を有することとなり、死者を出さない戦い方を心掛けながら宍戸家との小競り合いを続けるのであった。
そして私は私で第二子を出産。
2人目の子も男の子であり、賢太郎よりも大きな4.5キロの大柄な赤ちゃんであったが、すんなり安産で出産することができた。
次男の名前は小次郎に決まり、元就様だけでなく興元様からも褒められるのであった。
そんな出産の後に興元様に杉殿の娘であるマヤ殿が嫁いできた。
「お初にお目にかかります。杉興長の娘、マヤでございます。主様、どうかよろしくお願いします」
白粉(勿論未来産の白粉で鉛や水銀は入ってない)を使って化粧をし、着飾っているが、現代の美的感覚でもアイドルをやれそうな美少女であり、興元様は舞い上がる。
私も白粉や化粧品関係で仲良くなり、更に経産婦なので下の話でも男を喜ばせるテクニックなどで話が盛り上がった。
更に子供ができやすいタイミングを調べるオギノ式を教えて、初夜の時をその日に調整したり、興元様の料理として性欲を高める食材を提供するのだった。
一方で元就様も吉川家から側室……史実では正妻となる怜姫である。(法名は妙玖 妙玖寺殿成室玖公大姉として知られる)
こちらも凛とした佇まいの女性であり、私を見て最初に
「負けませんから」
とライバル心むき出しであった。
ちなみに怜ちゃんは私の2歳年下で、12歳。
数え年でも13歳である。
私は大丈夫であったが、彼女の年齢での妊娠は危険なのでもう数年待つ様に元就様に伝えた。
怜ちゃんは
「なんで彩乃さんが私の妊娠を指図するんですか! 横暴ですよ!」
と反発するが、ふくよかとは言い難い体を見て、その身体で妊娠したら危険だと伝え、徹底した餌付けを行っていく。
体を作るのに毎日納豆や豆腐を食べる!
「お、美味しいです!」
昼食には唐揚げに千切りキャベツをマヨネーズをかけて食す!
「な、なんなんですかこれは!?」
夜は野菜たっぷりの鍋を食す。
時には鰻の蒲焼きを添えて……。
「はふ! はふ!」
そして成長応援飲料を寝る前に飲む!
「甘いです!」
そうするとガリガリだった怜ちゃんにも肉が付き始め、お尻と胸にお肉が集まり始めた。
「ちょっと太りましたかね」
「ガリガリだと出産は危ないから太らないと! 今日は小麦粉でパンを作ったから蜂蜜をかけていただきましょうか」
「食べます! 食べます!」
3ヶ月もすると私を彩乃姉さんと慕うようになり、暇な時は私が教師代わりになって勉強を教えたりするのであった。
ちなみに冬になる頃には3人目を孕むことになる。




