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1506年 松寿丸こと毛利元就との出会い

「きゃぁぁぁあ!?」


 神様がいきなり床の底を抜かすと、私はどんどん落下していき、ゴスっと木の床に顔面からぶつかった。


「痛たたたた……」


 私が顔をあげると目の前に目を白黒させた少年が突っ立って居るのだった。


「く、曲者?」


「曲者じゃありません! いや、曲者か……」


「なんじゃそれは……どっちなんじゃて……まぁいきなり現れたのは事実だ。普通の女子じゃなかろうな……神の使いか妖怪の類か……名を何という」


「毛利彩乃……未来から来た転生者です!」


「ほう、ワシの前で毛利の名を名乗るか……しかも未来から来た転生者とな……妖怪にしては面白い事を言うのぉ!」


「じゃあ貴方は誰なのさ」


「ワシか? ワシは松寿丸(毛利元就の幼名)……つい先日兄上からここ多治比300貫を与えられた猿掛城の城主じゃ!」


「ご、ご先祖様!?」


「ご先祖? なんだお主血縁なのか?」


「血縁ですけど……松寿丸様から見て直系からは28代目分家……嫡流からは凄まじく離れておりますが……」


「ほう、与太話も面白い、将棋でも打ちながら話を聞かせるのじゃ」


 なんか将棋盤を部屋の角から引っ張り出してきて将棋をうち始めるのだった。







 いきなり部屋に現れたワシの子孫を名乗る女子……彩乃と言ったか……そやつとワシは将棋を打ちながら考える。


 短い会話であるが、どうやらワシは子孫を残して28代目までは確実に家が残っているということなので、数百年は毛利の家を存続させることに成功したのだろう。


 そして子孫にワシの名前が知られているって事は多治比姓では無く毛利にワシが戻るということ……となると兄上から言われて分家として中枢に戻ることが将来出来るのだろう。


「で、彩乃とやら、ワシは兄上をしっかり支えることが出来るのか?」


「えっと……言いにくいんですけど松寿丸様のお兄様は毛利の歴史書でも酷い書かれ方をされるのですよね」


「ん? どういう事だ? 兄上が毛利を引っ張っていくのでは無いのか?」


「失礼ですが今の年号と年数を教えてください」


「確か永正3年のはずじゃ。父上が亡くなった時の法事で知ったことじゃが……」


「神様が言った通り元就様が数え年で10歳の時に来れましたか」


「何か関係があるのか?」


「歴史書に残っている話ですと来年、大内氏が10代将軍様を担いで上洛軍を起こします。毛利も家臣を大勢引き連れての出陣となり4年以上の長い陣になります」


「ほうほう、それで」


「合戦の途中でお兄様は陣抜けを行い這々の体で毛利領に帰還し、長い陣の重責で酒に溺れるようになります……毛利家の歴代当主……松寿丸のお祖父様から酒毒によって若くして亡くなっているようにお兄様も酒乱で周辺国衆に狂犬の様に戦を仕掛け、そして若くして亡くなってしまいます。お兄様に残された息子を支える為に松寿丸様は本家の中枢に戻っていくことになるのです」


「な! 馬鹿な! 兄上が酒毒で……いや、兄上は父上が酒毒でおかしくなった事を見ていない。現実から逃れるために酒に溺れ、毛利家は酒に弱く酒毒になってもおかしくは無い……か」


「あと言いにくいのですが……」


「なんだ」


「松寿丸様は井上の者の専横によりここ猿掛城を追放されてしまいます」


「な!? え? じゃあワシどうなるの?」


「あばら屋で孤児同然の暮らしをすると歴史書に書かれており、農民からも馬鹿にされ、餓えを耐える日々を送ったと……」


「そ、そんなぁ……」


「しかし私が居ます!」


「ん?」


「あばら屋で生活することになっても私がチートを使って松寿丸様を立派な武士にします! させます! ならせます!」


「チート? 何じゃそれは」


「神様がくれた能力の事! 私も試してみないといけないけど私が生きていた時代に一時的に戻ることが出来るらしい」


「ほう……ワシも行けるのか?」


「1人までなら連れていけるっぽいけど……能力を溜める必要があるから迂闊に使うことは難しいかも」


「ほう……となるとこちらで生活する必要があるな」


「そうなりますね」


「今ワシには教育係の井上元盛という男と話し相手になってくれる志道広良に母代わりにワシを育ててくれている杉殿くらいしか話し相手がおらんのだ……ワシの世話係として住み込みで働けば飯くらいは出せると思うが……」


「是非お願いします! 頑張って働きます!」


 隨分と食い入るように言うな……まぁワシも同年代の話し相手が欲しかったところじゃ。


 男であったら最良じゃったが、未来の話を色々聞くとしよう……あ。


「王手!」


「詰みじゃな。負けじゃ負けじゃ」









「へぇ……松寿丸様の寝室にいきなりその子が現れたのね。そして未来から来て松寿丸様の子孫を名乗っていると……普通だったら気狂いね」


 ワシは直ぐに杉殿の所に行き、彩乃を杉殿の新しい付き人として雇入れ、ワシが気に入って側に置いたという口裏合わせを行うことにした。


「何か証明できる物はある?」


「証明……証明ですか……」


 私は着ている服を今更確認するが、戦国時代の人が着ていた普通の布服になっている……いや少しみすぼらしい格好をしていることに気がついた。


 これでは信用もできないだろう。


「少し待っていてください……ええい扉よ!」


 私はチートを使ってみるとグニョンと真っ黒の円形の渦巻く異空間が出現する。


「「な!?」」


「ちょっと待っててくださいね」


 私がその異空間に入ると、現代の私の部屋に繋がっていた。


「本当に私の部屋に出れた……家族に会えるかも!」


 階段を降りて1階に行くとお母さんがそこに居た。


「お母さん」


「あら、彩乃どうしたの?」


 ちゃんと認識して喋ることができる。


「お母さんお皿1枚借りるね」


「はーい」


 私は普段使わないお皿を1枚棚から取る。


 そして一応洗面台に行き、鏡で自分の顔を見る。


「私も小学生の頃まで若返ってる……そう言えばお母さんも少し若くなっていたし、家の家具とかも幼少期の頃の物がチラホラ……」


 私は再び部屋に戻るとゲーム機等を探すが小学生の頃に遊んでいた2画面でペンを使うゲーム機しか出てこないし、ランドセルが勉強机の椅子の上に置かれていた。


「昔に戻ってる……ん?」


 私は机の上に見慣れない紙が置かれていることに気がついた。


「手紙……と宝くじ?」


 手紙を開いて見ると


『やっほー神様だよ。現代に戻ってこれた様で何より……幼少期だとお金が稼げないからね。1等の宝くじを用意しておいたよ。数億円入ると思うからそのお金で頑張って』


『あと彩乃ちゃんや昔の人達は認識阻害が入っているから彩乃ちゃんが学校に行かなくても、10歳の年齢で昼間に歩いていても、体に大きな変化が起こっていても認識が変化してしまっているから気をつけてね。どんな変化が起こっているかはお楽しみに』


 そう書かれていた。


「1等の宝くじ……しかもお正月のデカい奴じゃん」


 1等賞金12億であり、普通に使っていたら一生お金に困ることは無い金額である。


 まぁ普通じゃない生活を送ることになるのだが……。


 とりあえずお皿を持って私は黒い渦をまたくぐり、戦国時代に戻るのだった。


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