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歴女JK謀神の子供を産む  作者: 星野林


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1510年 相合四郎3

 まずは学び舎を見せる。


 四郎が見たのは家臣の子供達が勉学に励んでいる姿であったが、学んでいる文字が異質であったし、彼らが使う教材も彩乃が未来で買い揃えた物であり、それを複写する専門の職業に付いている家臣も居るくらいであり、渡された漢字ドリルを見て四郎は衝撃を受けていた。


 それから鍛錬場に移動すると銭で雇った兵達が木人形相手に打ち込み稽古をしていたり、筋トレをする姿があった。


「あれは何をしているのですか?」


「あれは筋トレ……筋肉を効率的に身につけるための鍛錬」


 他には弓を扱う兵の姿もあった。


 弓道場はどうしても広さが居るため、城の中でも防衛拠点から外れていた。


 ただ学び舎もそうだが山の中の城故に場所が限られている。


 城に全部集める必要は無いが、松寿丸が目指す猿掛城は学習拠点としての城であった。


 防衛も考えるが、猿掛城では兵を詰めきれても300が限界。


 吉田郡山城は最重要防衛拠点であるので落とされない作りをする必要があるが、猿掛城は敵の接近を知らせ、足止めをする城である。


 なので松寿丸は城の能力を行政と学習場所に割り振った。


 防衛力より兵を鍛錬できる鍛錬場や弓道場を増設、三の丸、二の丸は奉行として育ち始めた家臣の事務を行う場所にし、その兵や家臣の食事を作る為の食堂と兵糧庫を増設する。


 金があるからできる改造である。


 城としては異質であるが四郎には松寿丸から城のコンセプトを聞いて目から鱗の様にも思えた。


 松寿丸の防衛力を最低限にする行為は一見防衛を放棄しているようにも思えるが、野戦で決着を着けるという意思表示でもあり、更にしっかり食事が与えられ、常備兵ということで武将の様な鍛錬を受けている兵は将棋の歩をと金にする行為と説明されて四郎は松寿丸の考えに感銘を受けていた。


「ただでさえ動員できる兵は少ないのじゃから、だったら兵を常に雇える金を稼ぎ、鍛錬させ続ければ、兵を将として扱うことが出来るし、歩をと金にできれば取れる戦術が変わってこようぞ」


 戦国時代雑兵、足軽と言う言葉があるように、最下層の兵は農民が武装した延長線でしか無く、数が居ないと武将に対抗することが出来なかった。


 逆に武将に匹敵する兵が育てられるのならそれは強兵となる。


 弓が放てる、剣術や槍術を身に着けている、馬に乗れる……どれも特殊技能であるが、そういう兵から豊臣秀吉の様なバグが産まれる土壌が出来上がる。


「それにワシなりの兄上への忠節の証でもあるのじゃよ。城の防備が薄いはワシを誅殺するのは容易いと見せられれば安心感にも繋がるじゃろ」


「松寿丸兄上……」


「それに武を担う分家が無ければ本家は自由に動けぬからな」


 松寿丸なりに考えがあっての選択であり、その選択を取れる土壌を作ったのは彩乃だと松寿丸は言う。


「彩乃殿が……ですか?」


「ついて来るのじゃ」


 流石に妊婦の彩乃を連れて行くことはせずに、松寿丸と四郎と供回りのみで移動となったが、松寿丸は幽閉されていたあばら屋近くに移動する。


「(世鬼)政時! 政時はおるか!」


「はい! 松寿丸様!」


 出てきた世鬼政時は黒装束で出てきた為に、四郎の供回り達が警戒するが


「ワシの影武者だった世鬼政時じゃ。今は背丈も顔も変わってしまったが……ワシの資金源の管理をしておる……悪いが供回りもこの先は見せることができん」


「分かりました。皆ここで待機していろ」


 四郎の命令で供回り達は待機し、林の中に入っていくと蜂の巣が大量に置かれている場所に出た。


 そこでは子供達が蜂の世話をしている。


「政時、更に巣箱を増やしたな」


「はい、30から50まで数を増やしましたが、まだ巣箱にいるのは20群かそこらになりますが……」


「十分じゃ、少しずつ数を増やしていくのじゃ」


「は!」


「ここは……」


 四郎が尋ねると松寿丸が


「ここは養蜂場……蜂蜜を大量に採取出来る場所で、ここだけでも2000貫の利益が出ておる」


「に、2000貫ですか!」


「あぁ、大内と販路が接続できれば更なる利益が生まれるじゃろう……次はこっちじゃ」


 続いて椎茸栽培をしている場所に移動する。


「木の丸太が立て掛けてある場所?」


「ここでは時期になると椎茸が大量に生えてくるのじゃよ。今年だと2万貫分は収穫できると思うぞ」


「に……2万貫!?」


 続けて酒蔵に移動して、焼酎を作る過程を見せる。


 ここからは供回りも参加するが、供回りに試飲してもらうと


「なんですか! この強い酒は!?」


「芋焼酎じゃ。この薩摩芋という芋を使うことで酒気の強い酒を作るのことができるのじゃよ。これも高値で寺社や商人に売れるのじゃ」


「兄上、先ほどから銭の話ばかりされておりますが、銭は汚い物なのでは!」


「四郎、その考えでは戦乱の世は生き残れぬぞ。土地は限りがあるが、銭は新しい物を生み出せば巡って来る物……商人から収穫できる作物と考えよ」


「商人から収穫できる作物ですか?」


「ああ、銭があれば物を買える。物が買えれば食べることが出来る。兵に土地を与え続けるのは難しい。土地も有限じゃ、家臣に配り続ければワシらの土地が無くなる。それに土地であれば土地以上の兵を動員することは不可能じゃが……銭があればワシが育てているように将の様な兵を大量に雇うことも可能じゃ」


「兄上の価値観を変えたのが彩乃殿と?」


「きっかけはそうじゃが、銭で兵を雇う強さについて判断したのはワシじゃ。それよりも椎茸の栽培、養蜂の技術、薩摩芋の入手、よく米が育つ農法と良質な米……これらは彩乃がこの世に持ち込んだ物じゃな」


「彩乃殿が持ち込んだ……? この世の物ではないのですか?」


「そうじゃ。彩乃ははるか未来から神通力で物資を持ち込む力があるのじゃよ……彩乃の力を取り込めれば毛利の未来が開けるのも確かじゃよ」


「……私には彩乃殿を制御する器量はありませぬ。しかし兄上は彩乃殿を手駒にし、子供をこさえるまで仲を進展させた……もし興元兄上に何かあれば松寿丸兄上が毛利を導いてくだされ。私はそれを支えたいです」


「うむ、それでも四郎はワシの弟じゃ。将来は1国を任せる故に毛利を分家として支えてくれ」


「は!」


 この時、四郎の中にあった兄を超えたいという気持ちは離散し、兄松寿丸の器量に感服し、支えたいという気持ちが強くなり、将来の謀反フラグが1つ折れるのであった。

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