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誠実

 私が居留守していた時に訪ねて来た刑事さん達は、圭君が帰って来てからすぐに来ました。

 おそらく外で張り込みをしていたんだと思います。

 忙しいのに、大変ですよね。

 

「ふぅ……」


 刑事さん達が帰って気持ちが落ち着いたのか、圭君はため息をついています。

 刑事さん達の質問に冷静な返答をしてくれていましたが、やっぱり疲れますよね……

 圭君はバイトを終えてきたばかりで、元より疲れていたでしょうから。


「圭君もお疲れ様でした。本当にありがとうございます」


 圭君には感謝しかありませんね。

 私の事を話さないでくれた上に、私が嘘はつかないでとお願いしたのも、しっかりと守ってくれました。


「気にしなくていいですよ。それよりどうして警察が来るって分かったんですか?」

「圭君がバイトに出かけて少し経った時に、一度来られたんですよ。だから多分、圭君が帰って来るのを待っているだろうと思いまして」

「なるほど、でもなんで猫の姿だったんですか?」

「この家の外観が分からなかったので……」


 私はまだこの家に来てから外に出た事がないので、階数も分かりませんし、外からどういう風に見えるのかも分かりません。

 今後の為にも、その辺は知っておくべきですよね。


「圭君、この部屋は何階なんですか? このカーテンは結構厚いですが、外からシルエットとかで人が動いたかどうかは分かってしまいませんか?」

「あぁ、それで猫の姿だったんですか。確かに警察に見られていたら良くないですよね。えっと、ここは3階ですよ。カーテンは外から見たことがないので、どれくらい透けるかは分からないです。今度確認しておきますね」

「ありがとうございます」


 さすが理解力の高い圭君ですね。

 すぐに納得してくれます。

 こういう事の受け入れの速さは、ありがたいのですが少し心配になりますね。

 というか、普通は喋る猫を見たら怖いですよね?

 あまり驚いているようには見えませんでしたが、今の警察との会話も緊張していないよに見えて、かなり緊張していたみたいですし、単に感情が表情に出にくいだけなんでしょうから。 


「いきなり喋る猫だったので、驚かせてしまいましたよね? すみませんでした」

「いえ、驚きはしましたが、さっきも喋る猫にもなれるって仰ってましたし、大丈夫ですよ。不思議な感じもしますが、なんか可愛いですね」


 か、か……可愛い?

 ねこ、が? ……うん。猫が可愛いんですよね!

 そうですよね、普通喋れる猫なんていませんからね!

 ……何か変にドキドキしてしまいました。


「そっ、それにしても圭君は本当に凄いですね! 刑事さん達に嘘をつかないで、ちゃんと私の事を隠してくれて」

「前回の失敗を反省していたので……反省が生きてよかったです」

「前回の失敗ですか?」

「はい。僕、店長に嘘をついてしまって……」


 そういう事でしたか。

 でもいくら反省してたからといって、あれだけ上手く嘘をつかずに隠したい事を隠して話せるのは凄いです。

 それでもやっぱり、嘘は良くないですね……


「嘘はダメですよ。でも何故店長さんに嘘を?」

「あの、"猫を病院に連れて行った?"って聞かれて、思わず"はい"と答えてしまって」


 ……それ、私のせいじゃないですかっ!

 私が病院は必要ないと言ったから、嘘になっちゃったんですね。

 私が普通に怪我した猫だったら、圭君は病院にちゃんと連れて行ってくれていたでしょうし、嘘にはならなかったのに……


「それは私のせいでついてしまった嘘なので、圭君は気にしなくて大丈夫です! 悪いのは私ですから!」

「そんな、ハルさんは悪くなんてないですよ」

「いえいえ、嘘をつかせてしまった私の責任ですから」

「責任って……嘘をつく事って、ハルさんにとってそんなに悪い事なんですか?」

「悪い事ですよ。まぁ私は多分、普通の人より嘘嫌いの方だとは思いますが……」


 皆は嘘つかれてもそこまで気にはしないでしょうから。

 一応"嘘を嫌いすぎている"という自覚はあります。

 特に他人を陥れる系の嘘なんていうものは、絶対に許す事が出来ません。


「ハルさんは、何でそんなに嘘が嫌いなんですか?」

「んー? ことわざでも"嘘つきは泥棒の始まり"と言いますし……その、1回でも嘘ついてしまったら、きっとまたついてしまいます。そういうのを繰り返して平然と嘘をつくようになれば、犯罪も平気行えてしまう人になってしまいますから」


 小さな嘘も積み重ねれば、大きな嘘となってしまいます。

 だからこそ、些細な事だったとしてもやっぱりダメだと思います。

 それにきっと、嘘をついてしまった方も後悔するでしょうし……


「でも、嘘が絶対的に悪いって事はないんじゃないですか? "嘘も方便"とか言いますし、誰かの為につく嘘もあるんじゃないかと」

「そうですね、そういう考え方の人も勿論いるとは思うのですが……私は、例えそれが誰かの為についた嘘だったとしても、その結果でよかったと思えた事が一度もありませんので……」


 嘘をついた方は良かれと思っていても、それはただの自己満足です。

 嘘をつかれた方は傷つき、悲しんでいて、本当に心から喜べてなんてない……

 そんな光景は今まで散々見てきました。

 だから結局、嘘では誰も幸せにできないと思うのです。


「ごめんなさい、何か嫌な事を思い出させてしまいましたか?」

「そんなことは……こちらこそ、すみませんでした」

「ハルさんって本当に誠実な方なんですね。僕もハルさんを見習って、これから先絶対に嘘をつかないようにしますね」

「私を見習う必要なんてありませんが、嘘をつかないでいてくれるのは嬉しいです。ありがとうございます」


 圭君がとても心優しい人なのは既に分かっているので、本当に今後嘘をつかないでくれると思います。

 つまり私は此処にまた1人、嘘つきを減らすことに成功したという事ですね!


「それはそうと、とりあえずここは危ないので下りましょうか。もう飛び乗ったりしたらダメですよ」

「えっ、あ、すみません……」


 そういえば玄関の棚に飛び乗ったままでした。

 しかも結構長いこと玄関で話してしまいましたね。

 圭君は私を抱き上げて部屋まで連れて行ってくれたのですが、お疲れのところで本当に申し訳なかったです……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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