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警察

カチャ……


 ん? 玄関の扉が開いたようですね。

 圭君が帰って来たのでしょうか?


「おかえりなさい、圭君」

「ただいまです……ってダメですよ、そんなに動いたら。安静にしてないと」

「圭君、警察が来ます」


 現状の私は黒猫なので、人の言葉を発した事に少しは驚くかと思ったのですが、圭君は特に変わらずでした。

 まぁ言葉を話せる猫に化けれる事は先に話していましたし、驚く程の事ではなかったのでしょう。

 黒猫が話した事よりも、私が玄関の棚の上に飛び乗った事の方に動揺しているようで、少し怒られましたが、今は警察の事を優先しないといけません。


コツコツコツコツ


「随分と若い兄ちゃんだったな。こんな時間に帰ってくるたぁ、夜勤の仕事でもしてんのか?」

「友達の家で遊び明かしていた可能性もありますよ。あの女と仲間なのかも……」

「これだけ長い間、一切正体を掴ませなかったんだ。そう簡単に出てくるとは思えねぇ。ま、おそらくはたまたま携帯を貸しただけとかだな」

「そうですね」


 警察の人達が近づいてくる足音と、話し声が聞こえます。

 圭君は私の発言を受けて、ドアスコープから外を見ています。

 警察が家に訪ねてくるなんていう経験はそうそうないと思いますし、かなり緊張するものだと思いますが、圭君にそういった様子は見受けられませんね。


ピンポーン


 チャイムが鳴ると、圭君は持っていた荷物を下ろして、深く深呼吸をしていました。

 あまり動じていないようには見えますが、やはり緊張しているんですね。

 私のせいで変な経験をさせてしまって、申し訳ないです……


「はい」

「こんな時間に悪いな、俺たちゃこういうもんなんだけどよ。兄ちゃんにちょっと聞きたい事があるだ。今、いいか?」

「なんでしょうか?」

「昨日の丁度今と同じ位の時間に、警察に匿名の通報があってな、その電話を辿ったら兄ちゃんの携帯電話だったんだよ」


 圭君が玄関の扉を開けると、ガラの悪い感じの刑事さんの声が聞こえてきました。

 多分さっきドアスコープで覗いた時に見た、ベテランさんですね。


「昨日の今位の時間なら、携帯を貸しましたよ。女の人に」

「どんな女の人ですか?」

「どんな? んー、綺麗な女の人です」


 き、綺麗って……

 圭君、刑事さんが聞きたいのは、そういう事じゃないんですよ?

 嘘をつかないで答えるようにお願いしましたし、これは圭君の本心なのでしょうが、何といいますか……照れますね。


「何か特徴とかありませんでしたか?」

「髪の毛がピンク色でした」

「ピンクですか? それは濃い? 薄い?」

「薄めのピンクです。そんなに派手ではない感じの」

「髪の長さとか、身長とかは分かりませんか?」

「髪は少し長めの肩を越すくらいで、身長は……身長はちょっと分かりません。僕と同じか、少し低いくらいだと思いますけど、あまり記憶にないです」


 私が人の姿で立ったのは、最初に帰ろうとしてよろけた時だけですからね。

 正確な身長が分からなかったんですね。

 因みにですが、私は圭君より少し低いくらいで合ってます。


「他には特徴とかありませんか?」

「優しそうな人だとは思いましたけど……あの人、悪い人なんですか? 匿名で通報しただけなんですよね?」

「ここ数年、警察に匿名で変な通報があるんだよ。名乗りもしない、犯罪現場のみの通報とかなんだがよ、通報に使う電話も特定できん。分かってんのは、声が女って事ぐらいさ」

「それなら別に、悪い人じゃないんですよね? そんな、捕まえる勢いで探さなくてもいいんじゃないですか?」

「俺達も、悪人か分からんから探しとる最中でね。まぁ、あれだけ犯罪の通報ができるって事は、もしかしたらどっかの犯罪組織の一員って事もあり得るからな。善人か悪人かは分からんが、危ない事をしてんなら止めさせねぇといかんし、保護した方がいいかも知れんからな」


 そうですね。

 もし本当に犯罪組織の一員で、その組織を裏切って情報をリークしているような存在なら、保護するべきでしょうね。

 ですが私は、動物に化ける事の出来る変な存在ですからね。

 保護してもらう必要はありません。

 警察の方に不要な捜査をさせてしまっている事は、申し訳なく思いますが……


「今まではずっと特定できない電話を使ってたのに、何故か昨日の通報は兄ちゃんの携帯からだったってわけだ」

「そうなんですか……」

「で、話は戻るけどよぉ、どんな姉ちゃんだったか教えてくれるか?」

「ご協力したいですけど、他に特徴とかは」

「でしたら、その人とどこで会いましたか?」

「バイト先のコンビニの裏の辺りです」

「コンビニでバイトをされているんですか?」

「はい、夜勤でバイトしてます」

「何時から何時までですか?」

「22時から6時までです」

「なるほど、仕事終わりに会って携帯を貸したって感じですか……」


 圭君は肯定していないので、これは圭君が嘘をついた事にはなりません。

 この刑事さん達の勘違いという事になります。

 私は嘘や勘違いをさせる行動は認めていませんが、勘違い自体は仕方のない事だと思っています。

 ですのでこの圭君の返答は完璧だと思います。


「でも何故、知らない女性に電話を貸そうと思ったんですか?」

「何か急いでる感じでしたし、特に悪い人には見えなかったので」

「悪い人に見えないとは、何を根拠にそう思ったんですか?」

「ん~、雰囲気? ですかね、優しい感じがしました」

「我々に来る通報だと、淡々とした冷たい感じの声なのですが、あなたはその女性の通報中、側に居なかったんですか?」

「近くにいたらかけづらいかと思いまして、少し離れてました」

「では、電話を貸した事で何かお礼等は貰いましたか?」

「特に……」


 新人っぽい刑事さんは、生気に溢れていますね。

 物凄い勢いで圭君を質問攻めにしています。

 真面目なのは分かりますが、絶対に私を捕まえたくてしょうがないという感じで、少し怖いです……


「それなら礼にまた来るかもしんねぇな。とりあえず何かあったら此処に連絡してくれ」

「はい、分かりました」

「じゃ、邪魔したな」

「ありがとうございました。失礼します」

「お疲れ様でした」


 圭君に連絡先を渡して、帰っていきました。

 圭君が疑われたり、責められたりしたらと心配していましたが、無事に終わってよかったです。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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