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桜色のネコのおまけ 〜ハル視点〜  作者: 猫人鳥


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光陰

「ハル様ー! 美味しいお菓子を貰ったので、一緒に食べましょー!」

「サク、今日も元気ですね。ありがとうございます。でもティーブレイクはもう少し後にしましょう」

「ダメですよ、ハル様はそうやって全然休まないんですから! ほら、休みますよ!」

「違うんです。今は本当にお腹いっぱいで……」

「え?」


 歪みの報告も終わらせて、執務室で書類を片付けていると、サクがお菓子を持ってきてくれました。

 ですが私はさっき、ケークサレを食べたばかりなんですよね。

 だから本当にお腹はいっぱいです。


「ハル様がちゃんとお食事を取るだなんて……この間からお菓子とかも作ってますよね? 何か心境の変化でも?」

「心境の変化といいますか……」

「ハル様、何かありましたね! 教えて下さいよぉー!」

「全く、あなたは本当にいつも元気ですね」


 サクが楽しそうに私にくっついて暴れています。

 とても可愛らしいのですが……なんというか、


「サク、随分と大きくなりましたね?」


 前までは私より頭1つ分くらいは小さかった気がしますが、今は殆ど同じくらいの身長です。

 痛いというわけではありませんが、私にくっつく際の力もかなり増しています。


「んー? 成長期でしたからね?」

「あぁ、そうですね。中身はあまり変わっていない気もしますが」

「酷いですぅー」

「シノもそうでしたが、やっぱり慣れないものですね」

「そうですか? 呼んで来ましょうか?」

「いいえ、大丈夫です」


 この世界を生きる人達には、この世界の時間が影響します。

 そして私はあの世界でのみ成長する存在です。

 あの世界での1日が、この世界での約10日間。

 調整でずらす事は可能ですが、基本的にはこのサイクルで回っています。

 だから、私が見ていない間に、サクもどんどん成長していくんです。


 サクの母親であるシノも、そのシノの母親であるナギもそうでした。

 とても優秀で、幼い頃からこの女神様の領域で働いていて、私の補佐もしてくれていました。

 それがだんだんと大きくなって、結婚して、子供が産まれて……


 サクもそのうちに、シノやナギのように私から離れて行くのでしょう。

 きっと、そう遠くない未来で。

 それは当たり前の事で、悲しむ事ではありません。


「ハル様?」

「はい、どうしました?」

「……いえ、その……大好きですっ!」

「ありがとうございます」


 頭を撫でてあげると、サクは本当に嬉しそうに笑ってくれました。

 以前ミオから、


「ハル姉さんの部下の人、変わっていますよね。私に物怖じしないというか……面白いですね」


と、言われた事がありました。

 あれは多分、サクのこういう、私達に物怖じしない態度の事を言っていたんですね。

 この世界には人外も多いですし、私達もどちらかと言えば神として扱われていますし、畏れられる事の方が多いですから。


 ですがサクは私を畏れません。

 それは、ナギの代からずっと私の補佐をしてくれている事が影響しているのだとは思いますが、だからといって私以外の人にも畏れず向かうとは……なんともサクらしいですね。


「サク、今度お菓子をたくさん作ってくるので、持って帰ってもらえますか?」

「え?」

「出来れば、シノやナギにも渡して下さい」

「も、もちろんですっ! お母さんもおばあちゃんも、絶対に喜びますよ!」

「ふふっ、じゃあ張り切って作りますね」

「はいっ!」


 本当に私はいい部下を持ちました。

 こんな私にずっと仕えてくれているんですから。


コンコンッ!


「失礼致します、ハル様。本日の審判の資料をお持ちしました」

「ありがとうございます」

「では、失礼致します」

「……今日も審判ですか? お疲れ様です」

「そうですね……ん?」

「どうされました?」

「これ、資料が足りていませんね」

「本当ですね! すぐにあの人を……あれ? もういない」


 この部屋を出た先は、結構長い廊下です。

 それなのに今の今でもういない……

 加えていえば、今の人の視線や動き……

 はぁ、これは嫌がらせという奴でしょうね。


「私は少し資料室に行ってきます」

「そんな雑用、私が行きますよー」

「いえ、ついでに女神様にも伝えたい事がありますので」

「そうですか?」

「戻って来てから、一緒にティーブレイクをしましょうね」

「はいっ!」


 部屋を出て、資料室に向かいます。

 道中では、


「お、ハル様だ。珍しい」

「無能なお荷物が動いている」

「また審判か? 気分だけで判断されては、こちらが被害を被るというのに……」


と、私への揶揄が聞こえてきました。

 まぁ、いつもの事なんですけどね。


「そこのあなた?」

「ん? あぁ、ハル様。こんなところまでどうされました? まだ何か、必要な資料でも?」

「そうですね。資料の追加を取りにきました。それと同時に、あなたをこの女神様の領域から追放します」

「…………は?」

「お疲れ様でした」

「ちょ、えっ、は? まっ、待って下さい。そんな権限、ハル様には……」

「ありますよ? ご存知、ありませんでしたか?」

「……っ!」


 下らない揶揄をいちいち拾っていてはきりがありませんので、ああいったものは基本的に流しています。

 ですが私情で、それも実に下らない遊び目的で仕事の妨害をするものを、ここに置いておく訳にはいきません。

 信用第一の場所ですから。


「ちょ、ちょっと持って行き忘れただけじゃないですか! これから持って行く予定でしたし……」

「そのちょっとでどれだけの迷惑がかかるか分かりませんか?」

「迷惑って、どうせ暇してるじゃないですか! こっちはいっつもハル様の尻拭いをさせられて、いい加減迷惑なんですよっ!」

「では丁度良かったですね。もうここで働かなくてよくなりますよ」

「なっ! ふざけた事を……これは正式に抗議させていただきますからね!」

「どうぞ、ご自由に。では」


 必要な資料を持って資料室を退室します。

 これでまた、私の悪名が広がることでしょう。

 もしかするとサクにも被害が及ぶかもしれません。

 女神様にも伝えて……伝わってますよね。


「もちろんよ」

「ですよね。私の不在時は、お願いしますね」

「えぇ。それから、私にもお菓子を作ってきなさい」

「分かりました」


 廊下を歩いていたら、女神様からの思念が飛んできました。

 私が伝えに行く手間を省いて下さったみたいです。

 ありがたいですね。


「ただいまです。サク、お菓子を食べましょう」

「ハル様! おかえりなさーい!」


 それからはサクと楽しく休憩をして、また仕事に戻りました。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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