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桜色のネコのおまけ 〜ハル視点〜  作者: 猫人鳥


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4/22

野菜

 うぅ……なんでしょうか、この鼻を強く刺激するような香りは……?


「にゃあ~?」


 目を開けると、見慣れない部屋……

 ふかふかのブランケット……

 あぁ、そうでした。

 私はとても優しい圭君に拾ってもらったんでした。


「おはようございます、ハルさん」

「にゃ」

「ハルさんって、カレーは食べられますか?」

「にゃにゃあ~」


 この強烈な香りはカレーだったんですね。

 挨拶をしてくれた圭君に挨拶を返したつもりだったのですが、これ……圭君に言葉が通じていません。

 "言葉を話せる猫"に化けておけばよかったのに。

 人に戻ろうにも、圭君がこうもこっちを見ていては、圭君の目に良くないでしょうし……


「にゃ~」


 手足を動かして、圭君に目を閉じるようにジェスチャーで伝えてみたのですが、全く伝わりません。

 しかも何故か頭を撫でられました!

 とても気持ちいいですが、そうじゃないんですよね。


 首を振って、今度は圭君を指してから目を擦ってみると、圭君は悩みながらも目を手で覆ってくれました。

 今のうちに人に戻ります!


「ごめんなさい! "言葉を話せる猫"に化けておけば良かったんですが、"普通の猫"に化けちゃったので、言葉が話せなくって」

「人に変わる時は、僕は見ていない方がいいんですか?」

「一瞬とはいえ、結構眩しくなってしまいますからね。圭君の目にあまり良くないかと思いまして」

「僕を気遣って下さったんですね。ありがとうございます」


 迷惑をかけているのは私ですし、こんな事でお礼なんて言わなくてもいいのに……律儀な人ですね。


「あぁそういえば、ハルさんの好きな食べ物は何ですか?」

「え、好きな食べ物ですか? ん~野菜は好きですよ、キャベツとか」

「今からお昼ご飯にカレーを作ろうと思ったんですが、食べられますか?」

「カレーは好きですが……」

「キャベツが好きなら、サラダも用意しますね」

「そんなっ、いいですよ! カレーも無くて大丈夫です。本当に圭君のお世話になりすぎていて申し訳ないですし、むしろ私に何か手伝える事ありますか?」


 私の好きな食べ物なんてものを気にして、カレーだけではなく、サラダまで用意してくれようだなんて……

 さっきも圭君の優しさに恐れ入りましたが、本当に底無しの優しさだと思います。

 ですが、私に食事は必要ありませんし、ご迷惑をおかけしている私が何かお役に立つべきです!

 だから私に出来る事で圭君を手伝えたらと思って聞いたのですが、


「ハルさんは怪我を治すことを優先してくれたらいいですよ」


と、圭君は優しく言ってくれて、結局私を頼ってはくれませんでした。


「それに僕、実家が農家なんです」

「農家さん、ですか?」

「はい。それでよく野菜を送ってくれるんですが、一人では食べきれなくて……だから一緒に食べて頂けるのは、僕にとってもありがたい事なんです」


 キッチンの近くにある箱に、玉ねぎや人参が入っているのが見えます。

 嘘をついている様子もありませんし、一緒に食べてもらえるのがありがたいというのは本当の事なんでしょう。

 だからといって、私が甘えていい理由にはなりませんが、ここまでして下さるんですからね。

 断る方が失礼に思えてきました。


「圭君は本当に優しいですね、ありがとうございます」

「じゃあ僕はカレーを作ってくるので、ゆっくりしていて下さいね。テレビとかも好きに見ていてもらって大丈夫ですので」


 圭君はテレビを点けてから、キッチンへと向かって行きました。

 人の家ではテレビを点け辛いだろうと、考慮してくれたんですね。


「こんにちは、お昼のニュースです。昨日、△△通りで起こった交通事故で意識不明だった男性の意識が回復しました。警察は男性から事故の詳細を…………」


 事故、窃盗、汚職……

 流石にさっき通報したばかりの取引のニュースは、まだやっていないみたいです。


「☆☆ホテルの改装がついに完了し、各国から宿泊客が続々と訪れています。予約も既に半年待ちとの事で……」


 あのずっと工事中だった高級ホテル、ついに工事が終わったんですね。

 高い建物は鳥に化けている時の休憩所として利用させてもらっているので、ありがたいんですよね。


「△△の方では、夏祭りに向けて花火の準備を……」


 夏祭り……そういえばそろそろそんな時期ですね。

 先日の騒動の後、まだ神様には会いに行っていませんし、夏祭りで忙しくなる前に状況説明に行っておいた方がいいかもしれませんね。


「ハルさん、カレーできましたよ。キャベツサラダもどうぞ」

「ありがとうございます!」

「サラダにするのなら、春キャベツの方が適しているんですけどね。今はなくて」

「いえいえ、このキャベツもシャキシャキでとっても美味しいですよ!」

「それはよかったです」


 即席で作ったとは思えない程のコク深いカレーと、シャキシャキの美味しいキャベツサラダ。

 どちらも本当に美味しかったです。

 圭君は本当に料理上手ですね。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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