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桜色のネコのおまけ 〜ハル視点〜  作者: 猫人鳥


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26/31

心配

バンッ!


「ハル! 聞いたぞ! お前、この間音信不通になっていたらしいじゃないか!」

「ナツ……一体いつの話をしているんですか、それはもう1年近く前の事ですよ?」

「私はさっき聞いたばかりだ!」


 女神様の館で仕事をしていると、勢いよく扉が飛んでいって、ナツが入って来ました。

 私を心配して来てくれたみたいですが、扉は壊さないで欲しかったです。

 でも、長期の仕事から帰ってきて疲れている中、私の話を聞いて駆けつけてくれたんですからね。

 本当にありがたいことです。


「ご心配おかけして、申し訳ありませんでした。ですがこの通り大丈夫です」

「大丈夫ってお前なぁ、私にあれだけ報連相の大切さを語ってきたお前が音信不通になったんだぞ? 大事じゃないか!」

「それは本当に反省しています。たくさんの方に迷惑をかけてしまいましたし……」

「しかも怪我までしたとか?」

「大したものではありませんよ。というわけで、そろそろ扉を直して下さい」

「ほーい」


 ナツは扉を"復元の力"で直して、私のデスクまで近づいて来ました。

 久しぶりに会いましたが、元気そうで何よりです。


「ん? これは何だ?」

「あ、それは……」

「クッキーか?」

「そうですけど……」

「美味そうだな? 誰に貰ったんだ?」

「貰ったんじゃないです。私が作ったんです」

「……は?」


 圭君のお家で作らせてもらったクッキーは、仕事の間食としてデスクに置いていました。

 ナツ達にはもっと上手く作れるようになってから渡すつもりだったので、試作品のこれを見られてしまったのは少し恥ずかしいですね。


「まさかハルが菓子作りとは……珍しい事もあるんだな。普段は食事自体、あまりしていなかっただろう?」

「まぁ、そうなんですけど……」

「どういう風の吹き回しだ?」

「どうという事もないのですが、先日お世話になった方が本当にとても親切で、クッキーの作り方も教えて下さる事になったんですよ」

「何故そんな状況になる?」

「私が全く料理を出来ない事を気にしてくれたんだと思います」

「ふーん、なるほどな。1つ、もらってもいいか?」

「もちろんです! でもまだ試作品なので、あまり期待はしないで下さいね? もう少し上手く作れるようになったら、改めて渡しますので」

「それは楽しみだ」


 そう言って、ナツは楽しそうに笑いながらクッキーを食べてくれました。

 そして、


「美味しい! なんだこれは……」


と、喜んでくれたんです。


「そんな、大袈裟に喜んでくれなくてもいいんですよ?」

「わざと大袈裟に喜んだ訳じゃない。それはハルなら分かるだろう?」

「一応は分かりますが……」

「程よい塩味のサクサク感、素朴な優しさを感じる味わい、実に見事だ! 正直、しょっぱすぎるか甘すぎるかの2択だと思っていたぞ」

「なんですかそれ! 悪いものだと思って食べただなんて!」

「ははっ、悪い悪い」


 ナツは小馬鹿にしたように笑っています。

 確かに私1人で作ったのなら、そういう失敗作になっていたかもしれませんが、これは圭君に教えてもらったレシピで作ったんです!

 失敗なんてありえません!


「ハルが試作品だなんて言うからだろう? それならすぐにくれてもいいレベルじゃないか!」

「もう少し種類を増やしたかったんです。最近はジャムクッキーやアイスボックスクッキーも作らせてもらっているので……」

「あぁ、アイスボックスクッキーはいいよな。私もよく作る」

「へ?」

「どうした? そんな間抜け面をして」

「ナツはクッキーが作れるんですか?」

「もちろんだ! これでも料理は得意な方だと自負している。あいつも喜んでくれるからな、自惚れではないぞ」


 まさか、ナツが料理をするだなんて……

 私達は食事を必要としませんし、誰かが料理をしているところなんて見た事もありませんでした。

 だから誰も料理には詳しくないと思っていたのですが、こんな身近にいたんですね!


「かなり意外でした」

「失礼だな。私は常に栄養バランスのいい食事になるように心掛けて料理をしている」

「栄養バランス? そんなもの、必要ですか?」

()()()()()だと?」


 ん? もしかして私は今、ナツの地雷を踏みました?


「ハル! お前、栄養をバカにしているのか!? 栄養というのはだな、成長するにあたって必要な成分なんだぞ! ハルの世界の言葉で説明するとだな、糖質とタンパク質と脂質は体のエネルギー源となる三大栄養素で、常にバランスよく摂取する事を心掛けて……」

「わ、分かりましたから、一旦落ち着いて下さい。そもそも、私達の成長には栄養は必要ないんですから……」

「必要ない訳じゃない! 生命力が栄養を補っているだけだ!」

「ですから、生命力は睡眠でも回復しますし、その生命力で栄養が補えているのなら、あまり栄養を意識する必要性もないという事に……」

「ならないっ! 栄養をしっかりと自分でも意識しているからこそ、うんたらかんたら……」


 あー、どうやら私はナツの面倒な博識スイッチを押してしまったみたいですね。

 これはかなり長くなりそうです。


 ナツは色んな世界の知識が豊富で、私よりも私の世界について詳しいです。

 だから私にも分かるようにと、私の世界に存在する概念で説明をしてくれているのはありがたいですけど、折角ならこんな無駄な栄養語りではなく、クッキー作りについての談笑をしたかったですね……残念です。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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