花火
「それにしても人は羨ましいな」
圭君と神様と楽しく花火を見ていると、神様が急にそう呟きました。
「何かありました?」
「あの屋台からの芳ばしいトウモロコシの香りが漂ってくるのじゃ……羨ましい限りじゃな」
「神様、相変わらずトウモロコシ大好きですね」
そういえば神様はトウモロコシがお好でした。
今の私は嗅覚は人並みなので、そこまで芳ばしい香りは感じませんが、神様にはかなり香っているのでしょう。
好きなものや嫌いなものは、特に強く感じてしまうものですからね。
「あの、僕が買って来ましょうか?」
「私が買って来ますよ。圭君は花火を堪能していて下さいね」
「ありがとうございます」
優しい圭君は自分が行くと言ってくれましたが、ここは結界内の御神木の上ですからね。
圭君が行って戻って来るのは大変です。
私が買ってくるのがベストでしょう。
御神木から飛び降りて、焼きトウモロコシを買いに行きます。
自分で屋台で何かを買うという経験初めてです。
昔、あの方々とお祭りに行った事はありましたが、買ってもらっていましたからね。
「らっしゃーせー」
「焼きトウモロコシを3つお願いします」
「1500円だよ」
「お願いします」
「ん? 2000円札とは、珍しいね! はい、お釣りの500円」
「……ありがとうございます」
え、2000円札って珍しいんですかね?
お釣りにもらった500円も、私の知っている500円とは違うように見えますし……
知らない間に新紙幣が発行されていたようですね。
とりあえずは買えたので良かったですが、あちらに報告をして、換金してもらう際には今の紙幣になるように合わせてもらわないといけませんね。
「っと……」
焼きトウモロコシを買って、御神木まで戻って来ました。
「儂等はあ……に本……世話に……とるんじゃよ」
「そうな……すね」
何か話し声が聞こえますね。
圭君と神様は、お話し中でしょうか?
「ただいまです! 買ってきましたよ、焼きトウモロコシ」
「あ、お帰りなさい。早かったですね」
「おお~! 待っとったぞ~」
私が焼きトウモロコシを渡すと神様はとても喜んで下さいました。
「圭君も、どうぞ」
「えっ、ありがとうございます」
ちゃんと3つ買ってきたので、皆で食べられます。
「おおっ! これはこれは、なんとも美味じゃの」
「そうですね。美味しいです」
「ところで、何かお話し中じゃありませんでした? お邪魔してしまいましたか?」
「いえいえ、丁度話が終わった位のタイミングでしたから」
「そうじゃの」
「なら、良かったです」
どうやら私が邪魔をしてしまった訳ではなさそうですね。
圭君も神様も、優しく笑ってくれています。
「ハルさんって本当に凄いんですね。神様とも知り合いだなんて……」
「ここにはよく来ていましたからね。子供の頃から神様には本当にお世話になっていました。でも、他の神様の事はあまり知りませんよ」
「そうなんですか?」
「神様の中でも特に土地神様は、その土地から離れない方が多いですからね。あまりお会いする機会もなくて、私もそんなには知らないんですよ」
「まぁ、ハルちゃんは知らなくても、神の方はハルちゃんの事を知っとるじゃろうがな」
「え?」
「ハルちゃんは有名じゃからの」
「そんなことは……」
ないともいえないんですよね……
ドーン、ドドーン、ドンドドドーン!
他愛ない話をしている中でも、綺麗な花火が打ち上がってます。
花火はもうクライマックスみたいですね。
たくさんの花火が打ち上がっています。
「なんか、横から線みたいな花火? 始まりましたね」
「あぁ、圭君は"ナイアガラ"を見るのも初めてですか?」
「ナイアガラ?」
「あの線みたいなところから、火の粉が滝のように落ちる花火です。ほら、始まりましたよ!」
「わぁ……」
ナイアガラはやっぱり、こういう視界を遮るものがない場所から見るのが1番ですね!
ナイアガラの上もたくさんの花火が打ち上がっていて、本当に絶景です。
圭君も、花火に魅入っているみたいです。
「本当に滝みたいですね……こんなに凄い花火は初めて見ました!」
「喜んで頂けて良かったです」
「毎年凄さが増すの~! 人の技術には恐れ入るわ」
「あっ、終わっちゃうみたいですね……」
ナイアガラも終わり、花火は終了したようです。
なんだか少し寂しいですね……
「ハルさん、神様、今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
「いえいえ、圭君が楽しんで頂けたなら何よりです。神様も背中を貸して頂き、ありがとうございました」
「そんなに喜んでくれるのなら、背中を貸したかいがあるってもんじゃ。よかった、よかった」
最近は鳥に化けて、パトロールがてらに花火を見ていましたからね。
花火よりも下を歩いている人ばかり見ていましたし、私も久しぶりに落ち着いて花火が見れて良かったです。
「では、帰りましょうか」
「あ、はい……あの、ハルさん? どうやって降りるんですか? また後ろから掴まった方がいいですか?」
「あぁ、降りるときは普通に飛び降りればいいだけですよ。着地の直前くらいでフワッとしますので」
「そ、そうなんですか……」
「あ、あの……飛び降りるのが嫌とかなら、また捕まってもらっても大丈夫ですけど……」
それなりの高さがありますからね。
飛び降りるのはさすがに怖いですよね。
配慮がかけてました……
でも、登った時みたいになるのもなんか、少し恥ずかしいです……
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
「では、手をどうぞ」
「あ、はい」
私が自分をフワッと重力操作をすれば、私と繋がってるものも全部フワッとなりますからね。
ですから圭君とは手を繋いで飛び降ります。
「ではでは神様、また来ますね」
「お世話になりました」
「また来ての~、待っとるよ〜」
神様にお別れをして、いざ飛び降りです。
「せーのっで飛びますか? 3、2、1、がいいですか?」
「えーと、じゃあせーので」
「はい、ではせーのっ!」
私と圭君は一緒に飛び降りました。
もちろん着地直前でフワッとやりましたよ。
この程度の重力操作くらいは私でも余裕ですからね!
「無事、到着です」
「あははっ、なんか登った時は一瞬だったのでなんともなかったんですけど、降りるというか、落ちている感じがすごくて、ジェットコースターみたいでした。楽しかったです」
「それは良かったです」
圭君が、すごい楽しそうに笑ってます。
こういうの好きなんですかね。
こんなに無邪気に笑う圭君は初めてみました。
一瞬だけ胸が強くドキッとしました……
変な鼓動は治まったのですが、なんか……胸がまた変な感じですね?
「ハルさん?」
「あぁ、すみません。帰りましょうか」
「そうですね」
神社の前の道まで帰ってきました。
圭君はこれからバイトがあるので、ここでお別れです。
「では圭君、バイト頑張って下さいね」
「はい、今日はありがとうございました。また明日、家に来て下さいね」
圭君とお別れしてから、人のいないところへ行き鳥に化けました。
お祭りも十分に楽しみましたし、パトロール開始です。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




