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桜色のネコのおまけ 〜ハル視点〜  作者: 猫人鳥


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14/22

立場

 女神様によるお説教が、約100時間程続いたところで、


「あらいけない! 書類が凄く溜まっているの! いつまでも話をしていてはダメよ! ハル、早く片付けてきなさい!」


と、やっと開放してもらえました。

 一応1週間は覚悟していたので、この程度で済んで良かったです。


「失礼致しますね」

「あぁ、待ちなさい。貴方、体に異変はないの?」

「はい?」

「気分が優れないとか、悩み事があるとか……」

「いえ、特にはありませんが?」


 どうされたのでしょうか?

 女神様が私の体調を気にされるだなんて?


「……そう、ならいいのよ。何かあったら言いなさいね?」

「お心遣い、痛み入ります」


 女神様は私の強さも回復の早さも知っておられますし、ミオに回復してもらった事も分かっているはずです。

 それなのに、何故こんな心配を……?


「どうしたの? 早く行きなさい」

「言い訳にしかなりませんが、今回の怪我は不測の事態によるもので、私の力の衰えではありませんよ?」

「分かっているわ。それでも、自身の力を過信することなく、気を付けなさい」

「はい」


 いつもは自分の言いたい事だけ言って去っていく女神様が、こんな事を仰られるというのは意外ですが、それほどに心配を掛けてしまっていたのでしょう。

 サクも泣いていましたし、ミオまでが様子を見に来たんです。

 私が思っていた以上に大事になっていたんですね。


「あ、ハル様ー! やっとお説教終わったんですね!」

「サク、報告は行ってくれたんですよね?」

「はいっ! あと書類も分けておきましたよ!」

「ありがとうございます。手が空いたらでいいので、ミオとリリーに連絡しておいて下さい」

「先日のお礼ですね! 菓子折りを用意しておきますね。ミオ様にはゼリー、リリーさんにはチョコレートでいいですか?」

「リリーはチョコレートが好きなんですか?」

「よく食べておられるのを見かけます」

「では、お願いします」


 サクはトテトテと走って行きました。

 本当に優秀な部下で助かります。


「これは……」


 自室に入り、書類の多さに思わず絶句してしまいました。

 ここまで溜まっていたとは……

 サクが分けてくれていて助かりましたが、それでもかなりの量ですね。


コンコンッ!


「失礼致します。ハル様に謁見をと……」

「誰です?」

「戦神様の遣いの方ですね」

「……急用でなければ後日にして下さい」

「伝えて参ります」


 戦神の遣いという事は、また邪神討伐の褒賞の件でしょう。

 この忙しい時に面倒な……


「ハル様ー! 高級ゼリーと高級チョコ! 用意出来ましたー! あと、リリーさんは3日後ならこちらに来られるそうなので、来てもらうことになりました」

「そんな、こちらが出向くべきなのに」

「私もそう言ったんですけど、女神様の領域に興味があるそうなので!」

「そうですか? それならいいですけど……」

「大丈夫ですよ! この高級チョコですよ! 美味しいですよね!」

「確かに美味しそうですが……」

「ハル様も食べますー?」

「いえ、必要ありません」

「そう仰らず〜、ほらほら〜」


 サクが私のデスクにチョコレートを持ってきてくれていたところで、


「お忙しいとの事でしたが、随分と楽しそうですね? 高級チョコレートで一服中とは」


という、厭味ったらしい声が聞こえてきました。

 私の部屋に入ってきたのは、戦神の遣いの人です。


「後日にとお願いしたはずですが?」

「急用でしたので」

「褒賞の件ですよね? それは急用ではありません」

「そうして忘れられては困るのです。それに、どう見ても遊んでおられるではないか。我々への褒賞は用意せず、自身の娯楽品ばかりを優先するなど」

「はぁ……」


 馬鹿にしたように笑っていますね……

 この人はサクのように私を畏れないのとは違い、最初から私を侮っているんです。

 私は一応、非戦闘員ですから。


 本当はこういう事を言いたくはないのですが、早々に解決させる為ですからね。

 仕方ありません。


「これは、ミオとリリーへのお礼として用意したお菓子です。貴方達以上に優先して当然でしょう? それとも貴方達は、自分達がミオ以上に優先されるべきだと言うのですか?」

「ミオ様に……」

「分かりました。ではサク、ミオに連絡して……」

「いえいえ、その必要はありません。そうでしたか、ミオ様への献上品だったのですね。それならそうと早く仰られれば良いものを……」


 ミオの威厳を借りてしまって申し訳ないのですが、戦神の領域の人達は、基本的に自分達より強い者にしか従いませんからね。

 ミオの名を出させてもらうのが一番早い解決方法なんです。


「見ての通り、私は今忙しいのです。帰って戦神に伝えなさい。褒賞は後日こちらから送付すると」

「その後日とはいつなのですか? 既に半年が経過しておりますが?」

「たかが半年程度で何を言っているのですか?」

「ハル様にとっての半年と、我々にとっての半年は違うのですよ。いい加減ご理解頂きたい」

「貴方こそ理解しなさい。邪神とはいえ神様への厳罰なのですよ? そう簡単に決まる訳がないでしょう?」

「仕事の遅さを棚に上げて、よく仰るものですね」


 本当に話の通じない人ですね。

 これも最初から私を侮っている結果なのでしょうね。

 加えて私がこの3ヶ月程度休んでいたという事が知れ渡っているので、余計に自分達への褒賞が遅れていると思っているのでしょう。

 ですが、この問題は単純に討伐された邪神の処分が決まっていないから、褒賞も渡せないというだけです。

 邪神の処分を決めるのは死神様の管轄ですし、私が休んでいた事とは関係ありません。


 とはいえそれを話したところで、言い訳だなんだと言われるだけですからね。

 お説教の次は厄介事だなんて、嫌になりますね……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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