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その3 伯爵令嬢と公爵令嬢。(2)

 公爵家に来て数日。ベルは非常に満足していた。

 そんなベルとは裏腹に頭痛でもするかのように額を押さえたルキが、


「ベル、君はここで一体何をしているんだ?」


 呆れたような口調でそう聞いた。


「ああ、今私ここに住んでるんです。ご存知なかったですか?」


 現在ベルが間借りしている部屋に訪ねてきたルキを、ベルはいらっしゃいませ〜と気さくに中に通す。


「ベル、君には部屋をきちんと割り当てただろう。何故こんなところにいるんだ」


 ご存知ねぇよ!! と全力でツッコミそうになった自分を抑えてルキは冷静にそう尋ねた。


「なぜ、と言われましても、シルヴィアお嬢様が自らご案内くださったので」


 引越しました♡ とベルは満面の笑みを浮かべて悪びれることなくそう言った。


『あなたに与える部屋などないわ。使用人の部屋すら勿体無い。物置にでも寝泊まりするといいわ』


 初日に紅茶をかけたベルが、翌日まだ居座っている事を知ったシルヴィアは、帰宅後のベルを捕まえてそう言うと使用人にベルの荷物を運ばせこの部屋に投げ入れた。

 初耳だ、というように顔を顰めたルキを見ながら、数日前の出来事なのに情報遅いなぁとベルは呆れたように苦笑する。


「ああ、またシルの癇癪か。早く部屋に」


 戻って、とルキが言うより早く。


「ここで充分です。というよりもむしろここがいいですね」


 もう、永住したいレベルですとベルは申し出る。


「はぁ、ここは物置だぞ? それも普段使わない専門書が置いてある」


「物置? 私には公爵家の書庫と物置の違いが分かりませんけど、超快適」


 ラフな部屋着姿のベルは沢山の本に囲まれたその部屋の備え付けの机とソファーを見ながら両手を広げてそう主張する。

 さすが名門公爵家。普段使わない物置ですらチリひとつなく整えられており、空調設備までバッチリ完備。日中仕事に出ているベルにとってはなんの問題もなく過ごせる環境だ。


「ここがそんなに居心地がいいとは思えないんだが」


 だが、ルキは信じられないモノでも見るかのように眉根を寄せる。

 そんな彼に苦笑して、


「そもそもの話なんですけど、物置って普通外にありません? で、雨ざらしになってて、屋根とかボロボロで埃っぽい感じの」


 とベルがイメージする物置について説明する。


「……うちにそんなものはない」


「ですよねー。知ってた」


 まぁ、案内された先が仮にそんなところでも、私ならなんの問題もなく住めるけどと内心で自己申告を加えたベルは、


「次期公爵様。これが価値観の違い、ってやつですよ。こんな広くて本に囲まれた部屋で寝泊まりできるなんて、最&高しかない。差し支えなければここの本読んでもいいですか?」


 にこにこしながらそう尋ねる。


「それは構わないが、君が読んで面白いものなどないと思うが」


 と、言うルキの言葉を最後まで聞かず、両手でガッツポーズを取ったベルは、やったー! えーどれから読もうとルキの存在をスルーしてさっそく本に手を伸ばす。


「学校を卒業してから本の調達に結構苦労してたんですよね。助かります」


 そう言ってベルは目をつけていた経営マネージメントの専門書を手にとりめくり始める。


「そんなもの、女の子が読んで面白いか?」


「面白いですよ。ためになりますし」


「……一体、何のために?」


「夢を、叶えるため」


 ルキには目もくれず、本当に嬉しそうに本を読む女性というのが新鮮で、これ以上は邪魔かとルキは部屋を後にした。

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