芳美③
夫の死から三年、結依も中学生、悠人も小学生になり、家族三人共に新しい生活にも慣れていた。
私は昼は喫茶店、夜はスナックで子供達の為に休み無く働いていた。
睡眠不足だし、身体もしんどかったが喫茶店のオーナーはいつも子供達の夜ご飯に、と賄いを持たせてくれた。
家にご飯を届け、子供達が食べ終わったら直ぐにスナックに向かい働いた。
結依は昔からパパっ子で私にはあまり甘えてこなかった。転校後も友達が直ぐに出来たようで、放課後、休みの日も友達と遊んでいた。
悠人はママっ子でたまにスナックに寂しいと電話がかかってくることもあった。少し話すと「もう大丈夫!」と元気な声になり、お母さんお仕事頑張ってねと声をかけてくれて電話を切る優しい子だった。
子供達が父親が居ないことで他の家の子供達に引け目を持たないよう、一人一人の部屋も作り、TVも子供部屋に一つづつ置いた。私自身が子供の頃自分の部屋が欲しかったこと、貧しくて友達が羨ましかったので自分の子供にはそんな思いはさせたくなかった。
自分専用のTVとゲーム機に二人は喜び、好きなTVを見たりゲームをしたりと楽しんでくれた。
三年前からお付き合いをしていた元上司はバツイチで元嫁の方に子供が一人居る。私は結依と悠人の父親になって欲しいとの思いから、付き合いが長くなるにつれ彼に対して焼きもちを焼くようになっていた。
彼は自分の子供の誕生日、クリスマスは元嫁の家に行き一緒に祝っていた。その度に彼と私は喧嘩をしていた。
「元嫁がそんなに嫌いなら、元嫁の子供より、私の方が大事にならないの?なんで会うの?」
イベントの度喧嘩をした。
口だけだったのか?私と子供達を支えると言ったのに。
早く子供達の父、私の夫になって欲しいのに煮え切らない彼の態度にイライラしていた。
悠司が生きていたら、悠司がそばに居てくれたら私はこんな思いをしなくてすんだのに。悠司に対しても当時は悲しい気持ちよりも怒りが強くなってきていた。
スーパーに行けば家族連れ、運動会、クリスマスも皆家族連れ。
私は子供二人を一人で見て、彼氏は元嫁の家。
寂しかった、心細かった、夜中に急に孤独に襲われた。
なんで私だけ、なんで私だけ、私だけこんなに辛い思いをしなくちゃいけないの?
悠人はまだ子供、中学生になった結依は友達遊んでいるだけで家の手伝いもなにもしない。
私だけが苦しい、私だけが悲しい、私だけが頑張っていると思うと腹が立ちイライラが止まらず結依とは喧嘩をよくしていた。
「誰かさんが手伝ってくれないから部屋が汚いわ。私ばっか頑張って、どこかの誰かさんは遊んでばかりでいいよねぇ。」
そう言う私を結依は睨み付け「どっかの誰かさんって私の事でしょ?嫌みで言わず、名前を呼んで、これやってって頼めばいいじゃない。」と言った。
「親の事をバカにするのもいい加減にしなさい!嫌みを言わせてるのはあんただわ!」
そう言うと泣きながら片付けをする。
泣くぐらいだったら初めから言うことを聞けば良いのに。いつからこんなに生意気になったんだろう。
悠司がいてくれたら、私の肩をもって子供を叱ってくれたはずなのに。悠司がいてくれたら。。
いつも頭の片隅に悠司がいてくれたら、、と考え悠司に怒りを感じながら生きていた。