芳美②
義父母の家から車で一時間ほど離れた土地勘も全く無い地域。
友人達に引っ越しの片付けも手伝ってもらいながら、役所関係、引き落とし、転校の手続きなど全て一人でやった。
困ったら前職の上司が助けてくれる、友人も家に来てくれる。
悠司の欠片が一つも無い家でバタバタと動き回っていると、日々生きることに必死すぎて涙を流す日もいつの間にか無くなっていた。
悠司が居ない家で義父母と一緒に過ごした三ヶ月が本当に辛かったからこそ、引っ越してよかったと思えていた。
当時母子家庭はあまり見ず、家に男性が居ないと分かると防犯的にも危ないこと、
テレビドラマなどで子供達が虐められている描写もあった為子供達と約束をした。
"パパが死んだことは内緒。遠くに出張に行ってることにしよう"
子供達はパパの事はもう吹っ切れたようで一切悠司の話をしてこなくなって、あっという間に新しい生活を楽しんでいた。
学校には毎日元気に登校し、新しい友達が出来たようで楽しそうだった。
私も早く子供達みたいに新しい生活になれるんだ、悠司を忘れて前に進むんだ。
そう強く心に決め、学校のPTAに参加してママ友を作ったり、新しい仕事先を見つけて居場所を作っていった。
仕事をしながらPTA役員、ゆっくりする時間も中々取れず睡眠不足の毎日。
それでも私は母子家庭とバカにされたくなくて、子供に惨めな思いをさせたくなくて、母親だけでなく父親の役目もやらなくてはと自分を奮い立たせていた。
また、悠司が亡くなった時にパートに出ていた職場の上司からある時支えていきたいと告白を受け、彼とお付き合いも始めた。
やはり子供達には父親が必要、とくに弟の悠人はまだ4才、父の記憶がないからこそ父替わりになれる人に遊んでもらおうと思った。
夫の死、家族の別れ、見知らぬ土地での生活、一時苦しかったが段々上手く行っている感じがしていた。
私だけぐずぐずしていたらダメ、早く、早く辛い事は忘れて新しい幸せに向かって頑張るんだ。