『白い記念日』の『桃の花』
「遂に来ちゃった! ホワイトデー!!」
そう、コイツは、このイベントデーに、鼻息も荒く騒ぎ出す。
「ね…⁉ ねね…ッ⁉
私、先月は、メチャ奮闘したんだから‼
これが獅子奮迅の活躍って奴だと思うくらい、
ハッチャケたんだから‼
アンタも! もちろん…ッ‼ 今日は…‼ 今日こそは…ッ‼
『私とのファイナルフュージョン承認』っていう……神様だって倒せるくらいの…ッ‼
激…激々々々々…スイートな…超激甘スイーツ…ッ‼
くれるよね…ッ⁉ くれるよね…ッ‼」
相変わらず、『どういう例え、してんだよ⁉』という様な、
謎の例えで、コイツは、更に鼻息を荒くし、
オレの手を、グイグイと引っ張り出す。
「あぁ~…。 いやな…。 いつも言ってるだろ…?
オマエのお腹にオレたちの天使が宿ってくれる日が来ると嬉しいけど
……オレたちってば…まだ学生なワケで…もし宿っちゃった時に…
そのカワイイ天使の心を餓死させるとかが起こったら怖いから
…そういう……その…やまし嬉しい事は…卒業して…
職に就いて…基盤が出来てからにしたいって…?」
つまりながらの自分の説明の言葉の比喩表現は、
コイツの豪快な比喩表現に比べたら、
心もとないモノの、十分に、『そういう感じ』さを増長する表現かも…。
と、我ながら、自分に恥ずかしくなって来る。
だが、そんな、恥ずかしさに、
頬をピンクにして、コイツに対して、うつむくオレに、
「もう…ッ‼ ホント…アンタったら…ッ‼
私…この日くらいは…その『ラブリーエンジェル』を宿せるように…
この日に負けないくらいの『ホワイトな奇跡』を…
アンタが…お返しにくれるって思って…ウキウキ…今日を待ってたのに~ッ‼
詐欺だぁ~ッ‼ 横暴だぁ~ッ‼
アンタの…バカ…バカ…バカ…ッ‼」
ポカポカと、力いっぱい、オレの胸を叩くコイツは、
相変わらずの『凄まじい表現』で、この『真っ白の記念日』にくらい、
『オレ』の、『ナニか』からの、『あの白いモノ』が欲しいと、
ムチャを言いまくってオレを見つめて逃がさない…。
その瞳に、オレの心は、
既にコイツに色づけられていたが、
更に色づいたピンクに染められ…。
「オレたちな…。まだ一つには成れない…。
そこは納得して欲しい…。
だけど…だけどな…?
もし、一つに成れる時期を迎えたら…。
オレは、オマエを、鳴らしまくる…!
オレの白い旋律で、オマエを奏でまくる…!
だから…それまでは…。
オレたちは……今の…この学生の時の…オレたちの刻は……。
後で振り返って…それは桃色だったと……。
とても綺麗なピンクの季節だったと思える日にしたい……。
花は…熟して色付く時だけじゃなく…咲き始める時も綺麗だって…。
オレは…今のオレは想うから……。
だから…その刻を経たオレたちも……そう想えるって……信じれるんだ……。
それを…オマエは……いつもオレに教えてくれる……。
今も…今だって…ッ!」
そう言って、オレは、コイツのピンクに上気した頬に口付けた…。
「…………もう…ッ‼ もう…ッ‼
ホント…! ホント……ッ‼
……いつも…言い訳だけは上手いんだから…ッ‼」
更にピンクの艶を讃えた頬で…。
「でも…でもね…?
今日の…この超絶スイーツで…『今の私の心』は…メチャ満タンだから…!
アンタが……その…私の身体を満タンにしてくれる時に……
『それ』が『ド下手』でも……その刻が来ても……私…許してあげる…ッ‼」
そう言ったコイツのピンクは…オレのピンクと合わせて…
更に色付いて行く…。
この鮮やかな…蕾の色付きの時期に……
あとの日が来ても……きっと誇れる……。
この『白い記念日』に……。
コイツのお陰で…。
オレは…また……そう想った…。