情報を整理したんだが?
『他人の考えは自分にとっては憶測でしかわからない』
『いくら考えても、結局は憶測の域を出ないのだ』
『ただし、憶測というのは必ずしも間違いではないのである』
『では、またどこかで…』
家に帰り、混乱する頭をどうにか正常するために瞑想をしてみる。
いつもの干し草に寝そべり、ゆっくりと呼吸をして状況を整理する。
まず、イオカ=オカイナは転生者だろう、たまに体を乗っ取ってしまう系もあり得そうだが、それはどうでもいい。
問題なのはイオカはチート持ちか否かだ。
もし仮にチート持ちでないのであれば、イオカ自身の才能かそれとも生まれか…生憎、この国というよりこの世界における貴族がどういう立場なのかがよく分からないからとりあえず置いとくが、
チート持ちだった場合、なぜ俺がその力を持てなかったが疑問だ。
よくあるような神の手違いであれば、神に今からでも文句を言ってやりたいが、これが俺だけではない現象であれば単にこちら側に問題があるのかもしれない。
ん?なんか俺の仙力でも魔力でもない何かが…?気のせいだろうか?なんか………まあいい。
なんにせよ、どうにかしてイオカもしくはそれ以外の転生者等から情報を得て解決したい……が、今のガキの状態じゃ信じる人も少ないかもしれんし、何より前にウィス兄さんから借りた本にそれっぽい伝承があったのを見ると転生だけがこの世界に来る方法では無さそうだ。
あーあ、どうにか何ないものかなぁ……あ、今日にご飯は焼き魚かな?
まあ、とりあえずこの件に関しては保留にしとこう。
急いで解決しようとして下手打ちたくないしね。
晩飯は匂い通り焼き魚だった。
最近、繁殖時期のニジマースという見た目がニジマスの魚で、味は何もつけないとほぼ無味な魚を塩だけで食べた。
さてと、とりあえず明日の朝も特訓して今まで探検した場所で吟味でもするか…。
いつもより早く起きてしまい、目を閉じてもだんだんと頭が冴えてきだす。
仕方ない、あまり睡眠時間は削りたく無いが、起きてしまったのであれば、早めに特訓でもして秘密基地に時間を割くとしよう。
そう思い、ベットから起き上がり、慣れた足運びで足音を軽減して家を出る。
まだ朝も来てないのでほんの少し冷たい風が体を通る。
入念に準備運動をして体を温めてながら、仙力を練りながら体に十分流す。
仙力の練り方は最近になって父がやり方をざっくばらんに教えてくれた…まあ、説明はまさに感覚派のようなものであとは実践しろとのこと。
今でもこれが正解なのか分からないが、多分変な癖はないはず…多分。
準備運動もほどほどに木剣を袋から出して素振りをする。
最近は前と比べて声を出さず、どちらかと言うと息だけでそれっぽく素振りをすることにした。
いくら村から少し離れて居るとは言え、力の抜けた声は恥ずかしくなった。
だが、実際に大切なのはそこではなく姿勢だと思う。
良くドラマとかでも素振りでフォームを確認するためにデカい鏡の前で素振りしたり、師事してもらっている人にアドバイスなど貰うことでより良い練習になるっぽいが、俺はどれもないので我流で頑張るしかない。
まあ、村を巡回している人やそれこそ冒険者とかに頼れば良いが、わざわざ俺みたいな子供に割く時間はないだろうと思って一人でやっている。
「ん?」
そんなどうでもいい言い訳をしていたら、また昨日の感覚がした…気がする。
元々、俺の仙力はまだ完璧に魔力と分けて練るのができていないから仙力を練る工程で魔力が混ざってしまう。
が、それとは別の、それこそ別の属性のような感じの魔力があったように感じる……流石に二度も有れば気になる。
素振りを中断して違和感の元を探す。
……………………………手?
かなり時間を掛けたが右手に薄い魔力を膜があったのを感じる。
何故?昨日の時点で…いやもしかしたらもっと前から?
いや、こんな薄くても昨日のような違和感はなかった。
となると誰が………………。
一瞬、何故かイオカと会った時のことを思い出す。
そう言えばあの時に
『離れんように手繋いだるわ』
『わーい』
あの時は陽気に返事したけど、あの時くらいしか手は繋いでないはず……まさか、これって…。
「ほぉ〜、朝早くから頑張るなぁ」
「ヒョェ……」
背後から声が聞こえ、少し驚きながらもゆっくり振り返るとそこにはイオカが立っていた。
「お、おはようございます、イオカさん」
「おはよーさん、カーティスはこんな朝早くからやっとんのか?」
「う、ううん、いつもはもうちょっと遅いけど、なんか今日は早起きしちゃって…」
「そーかそーか……なんや、誘拐ちゃうんか…」
「?」
「ああ、なんでもないでー、それより俺が剣見ちゃろか?これでも剣もできる天才なんやでー」
「え!本当!わーい」
「ほんまほんま、見せてみ」
どうやら何事かあったのかと駆けつけてくれたようだ、とりあえず適当に流して素振りを見てくれるようなのでやってみる。
「んー、まあまあ良い筋しとる、そんじょそこらの子供とやったら良い勝負するやろ?」
「うーん…同じ歳の子が居ないから分かんない…」
「そ、そーかそーか…そーか、ま、まあ、この歳で仙力と魔力の特訓しよんのは中々居らんからな、将来は俺みたいなビッグな男になるで!」
「わ、わーい」
「まあ、もうちょい筋トレとかを特訓に加えて、体幹がずれんように頑張れや…っと、そろそろ時間やからまた今度会うまでに頑張れや」
「うん…そう言えばイオカさん達はなんでここに来たの?もしかして竜さん来ちゃう?」
ふと疑問に思った事を言ってみたが、少し考えた顔をしたと思ったら、いつもの顔に戻り、
「旅行や、旅行、最近忙しい所ばっか仕事回されてなー」
「へー、じゃあ、旅行頑張ってね!」
「ははは、旅行は頑張るもんやない楽しむもんやで、まあ、あと4日はここの村に大抵は居るからなんかあったら俺からハーネイにでも相談せいや」
「はーい」
「ほな、あまり小さい体で無理せんようにな」
「またねーイオカさん」
帰っていくイオカを見えなくなるまで手を振り、見えなくなったのを確認して、ため息を吐く。
イオカはいい奴だと思う。
長年人を見てきたから分かるが、旅行ではなく恐らく山に何かあるに違いない…。
そういえば、俺に魔力の膜でマーキングしていると言うことは何かしら関係があるのかもしれない。
…今は判断材料が少ないから断定はできないが俺の予想では山賊かそれに近しいモノ共が山に隠れて居るのだと思う。
だとすると解決するまでは余り一人で山に行かず、大人しく村で子供の世話でも手伝うとしよう。
確か母からの情報で木こりのトムトさんの奥さんのレシリアさんが妊娠してそろそろ生まれそうとの事。
トムトさん家は俺より歳下が2人居たし、トムトさん自身今はそこまで忙しくないだろうが山が俺の予想通りだと大変だろうし子守でもしておくとしよう。
そう思い立ち、特訓を切り上げて少しだけかいた汗を拭いて家に戻る……。
設定メモ
魔力について
属性が多種ある中で当然、遺伝や本人の才能で最初から使える先天性と本人の努力や先天性との相性などで使える後天性の2種の覚え方がある。
なお、方法によっては全ての属性の魔力を使うことができるが威力は先天性>後天性であるため、ほとんどの魔法使いは先天性を伸ばし、後天性で覚えても補助として使う者が多い。
次回もゆっくりお待ち下さい