嬉しすぎて幸せなんだが?
『この世界では、さまざまなな種族がおり、多種多様な催し物がある』
『それは個人的な事から公な事まで様々だ』
『だが、どんな種族でも必ずある催し物が存在する…』
『っと…これ以上は本編へ……それでは、また…』
-2週間後-
シーラス兄さんと父が帰ってきた。
顔色を見る限り…どうやら大丈夫そうだ。
その日の昼は家族が席に着くや否や、シーラス兄さんが口を開け、学校に無事合格したことを報告し、
その言葉を待ってました、と言わんばかりに母上がご馳走を出した。
「ラス兄ちゃん、おうとどうだった?」
「ん?ああ、ここより大きい建物がそこら辺にあったり、色んな物が売ってたりしてたな…あ、あと人がものすごく多くて、道が広かったな」
「へー!いいなーいいなー!」
かなり羨ましい。
まだ村にも数えるほどしか行ってないから早く家族以外の人間と仲良くしたいから、王都は無理でも村に行きたくてはしゃいでしまう。
「あー…でも、道中結構疲れたし、もうちょっと大きくなったら父さんに頼んでみたらいいさ」
「おいおい、乗合とは言ってもそこそこかかるんだぞ?」
…まあ、そりゃそうだよな。
でも、一度でいいから行ってみたいよなぁ…。
「まあ、ウィスが行く時なら考えておく」
「!」
「あくまで、考えておくだけだから…まあ、とりあえず今日はラスの祝いの場だ!おめでとう!ラス!!」
「おめでとうラス兄さん」
「おめでとーラスにい!」
「よく頑張ったわね!」
「!…うん!ありがとう!みんな!」
みんなからの祝いの言葉に少し潤んだ目で笑うシーラス兄さんは今までで一番良い笑顔だった…。
その日は少し遅めに寝た…。
-2ヵ月後-
「それじゃあ、みんな行ってきます!」
「ああ、一応何かあったらすぐに手紙で呼ぶんだぞ」
「うん!」
「忘れ物とかない?1週間分のお弁当ある?」
「忘れてないよ!」
「ラス兄さん、これ…ナディリスと一緒に作ったんだ」
そう言って2日前に作った俺とウィリース兄さんとで一緒に作ったお守りを渡す。
そのお守りは最近読んでいる本の中に出てきた絵に描かれていたやつを一生懸命真似して作ったものである。
「!そうか、ありがとう!大切にする!」
「がんばってね!ラスにい!」
「おう!」
胸をドン、と叩いてニカッと笑った。
一応他にも村から2人王都の学校へ行くようで、顔はあまり見たことがないが、シーラス兄さんとは友達のようだ。
そうこうしているうちに、乗合馬車が出発し、馬車が見えなくなるまでお互いに手を振っていた……。
がんばれ!シーラス兄さん!
-1ヵ月後-
今日は俺がこの世界に生まれて5年経った特別な日である。
もちろんのことだが、母上のご馳走もある!
いやぁ〜…ようやく5歳か…最近は頑張れば仙力のみで扱えるようにもなったし、そろそろ魔法の方も特訓しておこっかなぁーなんちゃって!
「5歳の誕生日おめでとう!ヴェス!」
「おめでとう!カーティス!」
「おめでとうナディリス」
「うん!ありがとう!お父さん、母上、ウィス兄さん!」
色々とあったが、やはり誕生日のような特別な日というのは祝われると嬉しいなぁ…。
そう思っていると、父が近くに置いていた細長い袋を渡してきた。
「ヴェスも5歳になったことだし、仙力の方も下地はできてきているから、記念にこれを渡すが…あまり振り回さないように」
「?」
袋を開けると…こ、これは!
中学生の5人に1人は買うと言われている!木刀!?
いや、違う!これは両刃あるから木剣!?
すげぇ…すげぇ!!
「いいの!?」
「ああ、さっき言ったことを守れれば、いくらでも使って良いぞ」
「やったーー!!」
両手で高々と木剣が入った袋を持ち上げて、喜びを表現した…嬉しすぎる!
「じゃあ、僕からはこれをあげるね」
ウィリース兄さんがそう言って四角い箱を渡してきたので、とりあえず木剣の入った袋を背中に背負い受け取る。
「?あけていい?」
「ああ、いいよ…喜んでもらえるといいけど…」
ウィリース兄さんは不安を口に出す……。
誰だって相手に喜んでもらえるものかどうか心配になるだろうけど、正直もらえるだけでもありがたいのだ!
箱をゆっくり開けると、木で作られた小さな指輪だった。
宝石などといった飾りはないが、模様が刻まれていた。
「わぁ…ゆびわ?」
「それはナディリスの名前をつける時に読んでいた本で出てきた竜族の風習で作るものなんだ。
それで、その指輪に彫っている模様は『幸運』を意味していて、内側はナディリスの名前を彫っているんだ」
言われてみれば、内側に俺の名前…しかもフルネームで彫られている!
サイズが小さいのによく彫れたな…。
「すごい!ありがとう!!ウィスにい!!」
「ふふ、喜んでもらえて嬉しいよ…あ、それとそれは指に通せなくなるだろうから、これも付けてね」
そう言って、箱を指さすのでもう一度箱の中をよく見ると、
箱の中に麻縄が入っていた。
指輪に麻縄を通して、首から下げると丁度良い位置に指輪がきた…さすが、手先の器用なウィリース兄さんだ。
「あら、よく似合ってるわねカーティス」
「うん!!きょうはみんなありがとう!!」
その後、母上の用意したご馳走に舌鼓を打ち、お腹がいっぱいになった…本当に母上の手料理は美味しい…。
今日は俺がこの世界に来てどんな日よりも良い日だ!
設定メモ
特別な誕生日について
種族問わず、5歳を迎えた子供に家族で盛大に祝う通常の誕生日とは少し違った意味合いで開かれる誕生日のこと
医療魔法は存在するが使い手が少なく、また、薬学しか発展していないことで普通では治せない病が存在する。
この世界でも5歳までで亡くなる子供が多い。
そのため、子供が無事に5歳まで生きてくれた事を祝う習慣が生まれたのである。
それでは、また次回をゆっくりお待ちください。