組合とギルド
狩り人組合オーラック支部はいつも通り4、5人の定席狩り人と流れの狩り人が3人居るだけでいつも通り閑散としていた。
ボードにも貼ってある依頼は採集依頼に獣の討伐依頼、あと良くある指名手配書。
とりあえず何か変わった事がないか受付で聞いてみる。
「ミラさん、おはようございます」
「ヴェス君!?何でここに」
「シャードの影移動で王都から大体10日くらいかけて「大変なのよ!」…え?」
いつものゆったりとした話し方ではなく、目を見開いてそう言ったミラさんが手元にあった紙を出しながら話し出す。
「昨日、貴方の捜索依頼書が王都から届いて、さっき組合長が出ていって」
「メデラ!!!」
「「組合長!?」」
大声を上げながら扉を強く開け、いつにも増して顔が怖くなった今年で73になるジェニファス組合長が息を切らさずに俺に向かってきて、そのまま持ち上げてくる。
「おうおう、王都から捜索依頼書が来た時は心配したがや!!」
「うおおおぉぉ……ご、ごめんなさー「ありゃ」ーーあああああぁぁぁぁ」
ジェニファス組合長の右手が外れ、それと同時に回っていた事もあって飛んでいく。
まあ、いつもの事だから風と影糸を使って勢いを抑えて着地する。
「とっと…」
「おお、おお、すまんなぁ」
「もー本当に危ないから他の子にはやらないで下さいよ組合長」
「すまんすまん、つい良い反応するもんじゃからメデラにだけはやってしまってなぁ」
「大丈夫ですよ…って、それより王都から捜索依頼って…」
捜索依頼の紙に目を通すといつもの文面が書かれており、似てない似顔絵が描かれていた。
「俺、こんな顔ですか?」
「どれどれ、あー特徴は…捉えてんじゃねぇかな?」
「ジャッチさん!おはようございます」
「おう、おはようさん…にしても王都で何かあったのか?本当に王都は事件ばっかだな」
「そうですね…まあ、治安はいいと思いますよ?」
「なるほどなぁ、あっそう言えば組合長、あの件どうするんですか?」
「あの件?」
ジャッチさんが組合長に向かって何か聞いていると言うことは…大きい依頼が入ったんだろうか?それとも…
などと考えていると、組合長の顔が少し暗くなり悩みながら話し出す。
「そうじゃなぁ…傘下に入れば今まで通りではあるが、それでは今まで世話になった組合に不義理じゃ……じゃけどそれじゃと個人経営なんぞ到底儂には出来そうにない。
後継者も目処が立たん……すまんが、もう少し時間が欲しい所じゃな、近隣の組合で話し合っているが……」
「了解、まあ何があっても俺はこの村が好きですからどんな形でアレ守って見せますよ」
「ふむ、ならば座学を「そういう事なので失礼しますぅ……」むぅ、逃げ足と隠れる技術だけ上げおって…」
「ミラさん、何の話ですか?」
話の流れ的になんとなく分かるが、とりあえず色々知っていそうなミラさんに聞くと、
何でも三大ダンジョン都市の一つであり、世界で一番肉を輸出している自由都市クロカンで狩り人組合が新しくできたギルド、冒険者ギルドと騒動があり、おおよそ8日前に冒険者ギルドが前人未到のダンジョン70層に到達し、これまで争い合っていた狩り人組合はそれを機に勢力が衰えてほぼ廃業同然と噂になっており、
さらに冒険者ギルドはダンジョン70層を到達を機に勢力拡大を図って各地の狩り人組合に協力…と言う名のM&Aを仕掛けているようで、有名な狩り人もそちらに流れているそうで……って
「めちゃくちゃじゃないですか、わざわざそんな事をして何の得が…」
「そうよねぇ、しかも何故か六神教も協力してるのよ〜」
「!……なるほど…じゃあ今はそれでてんやわんやでしょうし、適当に討伐依頼…ヴォア討伐をやっておきますね」
「討伐依頼ね…はい、頑張ってきてね」
「はいじゃあ気をつけて行ってきます」
狩証を出して依頼を受注して、建物を出る。
そして、影の中に入ってシンに話しかける。
「シン、さっきの話聞いてた?」
「もちろん、カー君の考えた通り六神の光神の祝福を受けた転生者の仕業だね…チョロっと神界を覗いたら、案の定浮き足立ってたよ…」
「やっぱりか…まあ、でも前人未到の70層到達って相当な偉業だし、コレって試練になっていい事じゃ」
「チッチッチ、甘すぎてマーマイト食べたくなるくらいだね」
「それは舌が」
「それは置いといて、コレは拙いことになったよカー君」
「?」
いつも通りどこから出したのか分からない瓶を机に置いて話出す。
それにしても何が拙いのだろうか?
「確かに偉業だけども、能力だけで言えばできて当然の事。
物語で言うところの1章で華々しく強さを見せたけど、その後に出てくる敵のインフレが激しくなるだけでむしろ自然発生する試練を待っていた方がマシなレベルだよ」
「あー……って、分かるような分からないような…」
そういうと、今度は三角形の描かれた図を出して説明してくれるようだ。
したから、序盤中盤終盤と書かれている。
「私が試練を出していた頃は本人の力を最大限発揮できるような敵を出して限界を越えさせるけど、もちろんそれはしっかりと本人の日々の積み重ねや苦難があって報われるようになる。
まとめると、序盤の本人の素質、中盤の苦難困難、そして終盤に僕が試練を与えて、ようやく本人の力が完全に定着する」
が、と区切って今度は序盤と中盤は同じだが終盤だけ形が全く違う…と言うよりは形が決まってないのか枠がない。
「自然発生する試練はそうじゃない。
アレは本人の強さに比例せず発生して、それこそどうしようもない、目的のない試練でしかない。
たとえ本人が力を完全に定着しても止めどなく発生し、最終的に本人が死ぬまで発生する」
「………え、じゃあ俺王都に居ないから王都でもまだ発生するんじゃ」
「それは問題ないよ……そう言えば伝えてなかったね、こっちに来てくれ」
そう言って立ち上がり奥に進んでいく。
結構魔力の総量が増えたからその分広くなったとは言え、今では小さいアパートレベルになっているのではないか?
そんなことを考えていると「王都」と書かれたプレートの扉の前で止まった。
もしかしてコレが王都行きのゲートだろうか?
「ここは前に言っていた王都行きのゲートがあるんだけれども、それは実は主目的ではなくてオマケなんだ。」
「…なんかすごいオマケだけど、その主目的って?」
「簡単な話、王都で自然発生する試練の力をカー君に還元して、発生を食い止めているんだ。
ほら、中に入ったら分かると思うよ」
「え……うわぁ…」
扉が開くと同時に奥に転移用と思われるプレートと俺がよく生成している魔石が綺麗に積まれていた。
「もちろん還元と言っても微々たるもの、殆どは私が試練神として何が起きても良いように備えて貰っているけれども、大体2日で王都ならカー君1日分の魔石が生成されるね」
「へぇ……うわ、ほんとだ…ちゃんと繋がってる」
「まあ、たまに…ほんとたまーに多く生成されるけど、コレのおかげで王都にいる間は元勇者君達はある程度平穏に暮らせるだろうし、その分成長するだろうね」
「………ちょっかい出さないようにな」
「はっはっはっはー、それは無理な話さ…でも理不尽な事はしないよ」
その言葉に一瞬ツッコミたくなったが、多分必要だからやるのだろうと思って、なら良いと答えてゲートについて聞くと
「出る場所は王都周辺…まあ、城壁から1km離れない場所までなら融通して出られるよ」
「それはかなり便利だな……ん?て事は」
「カー君が思っている通り、転生者が集まりやすい場所に設置していくからどんどん増えるよ。
具体的にはあの旅行本に載っている場所より多いかな」
「100以上……1年に2個抑えないとダメか」
「安心しなって、カー君次第だけども移動は楽になるし、案外私が力を取り戻す方が先になって、自然発生も無くなるよ……たぶん」
「たぶん…か、まあ兎に角さっさとクロカンに向けて準備を済ませないと拙いのは確かなんだろ?」
「だねだね、とは言えちゃんと課題は守ってね」
「んー……まあ、魔力なくても問題ないように仙力と普通に筋力を上げないと今まで通りの速度で振れないだろうし………2週間、いや3週間はいるな」
最大限のラインを決めて動き出す。
捜索依頼が出ていて、ここにいる事もバレるのも時間の問題だ。
わざわざ会って話す事もないし、着いてこられてもとてもじゃないが面倒くさい。
大人しくそして俺に構わず勝手にして欲しいのが望みだが、それが通じるような頭は持ってないだろうし、コレからもっと大変になるのに友人を連れて行きたくないのも本音である。
一先ず父上と母上にしっかりと話してから修行をせねば、それこそ親不孝というものか……まあ、ただ漠然とした目標と言って良いものだったのがレールが敷かれているだけマシと言うものか………。
次回は別視点から入ります。
次回もゆっくりお待ちください




