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風と空と嵐

 ー翌日ー


 夏が、じゃなくて闇火月(アンカヅキ)が終わりを告げ涼しい光水月(コウスイヅキ)の風が吹く中昨日の儀式によって身についた風について青空の下中精霊…ティウラからレクチャーを受ける。


「とまあ、ここまで長くなったが、要するに坊が自分の力を使わずとも大体そこらにある風が集まって動くように指示すれば良いってコト、とりあえずそこのデコイに向かって風で攻撃してみな?」

「攻撃って……風か…」


 安直にいけば『かまいたち』とか『竜巻』とかだよな。

 まあ、とりあえず


「竜巻!」


 デコイ(丸太)を指差してそう言うと………何も起こらない。

 いや、正確には体の模様が少し浮かんで見えるようになっただけだった。


「おいおいマスター、詠唱破棄は難易度高いって」

「え…詠…唱…破棄?」

「そうさね、周りの風に指示するならもう少し言葉を足さねば聞きたくても分からんもんさ。

 坊は風との相性良かけどどっちも相手のこと知らんから、もう少し時間をかけてじゃなきゃあれじゃ通じんさ」

「ええ……じゃあ、風よ…ええっと、アレを竜巻で打ち上げよ!おお!」


 良い言葉が出なくて詰まったが通じたようで、模様がほんの少し浮かんで見えると同時に落ち葉を巻き上げながらデコイを上空へ打ち上げて、その後デコイは自由落下した。


「そうそう、そう言う感じで風に指示して、風ともっと仲良くなればさっきみたく単語だけでもある程度通じるようになるし、坊ならあっという間じゃないかな?」

「…えっとそのあっという間って精霊感覚でって事?」

「そうそう5年とかあっと、じゃなくて、あれだけ模様が出てるんだから坊の時間感覚でも1週間と掛からないと思うって事」

「そうだぜマスター、マスターは天才ではないが俺の影だってそんなに時間を掛けずにモノにしただろ?普段使いしてれば大丈夫だって」

「普段使いねぇ……」


 と言っても普段使いするとしたら暑い時に風を纏って涼しくしたり、物を浮かせて手元に持って来たりくらいか?

 危険そうだけど空を飛んで見たいし頑張って制御できるようにならんとなぁ。


 ふと空を見上げるとさっきまで青空だったのが妙な渦を巻いていた。

 まるで昔見た災害映画のように渦の中心が黒く、周りの雲も雨雲のように暗かった。


「なんか雨が降りそうだね」

「ん?んなわけ……なんじゃありゃ」

「おかしいねぇ、こんな人為的な風の動きが起こるなん…て……」

「というかなんか風も強まってきてない?」


 木々から木の葉が舞い散るのが目に見えて増え、巻き上がっていく。


「こりゃあ不味そうだな、家まで遠いし一旦基地にでも行くか」

「そうだね、ティウラも一緒に…」

「待ってな確認してくるからさ」

「え、あ、うん、いってらっしゃい?」

「どうしたんだ?」


 ティウラが上空の渦の中心へ声を掛ける暇もなく行ってしまった。

 まあ、風の中精霊なら何があっても問題ないだろうけど、急にどうしたんだろう?















 しばらくすると渦巻いていた空は晴れていきティウラが帰ってきた……なんか疲れた顔でこちらを見ている気がする。


「なんだったんだティウラ?」

「あー、その前に坊ちょっくら触るよ」

「?いいけ、ど!?」


 ティウラが胸を触るとスッと体を腕が通り抜けて間抜けな声を上げてしまった。

 少し触って、腕を抜くと何か納得した顔で頷いた。


「やっぱりかぁ…まあ、簡単に言えば坊の中にある風玉とシャードの本体核、あと坊と風の相性が重なって起きたのがさっきのやつって事」

「????俺の核?」

「まあ、アタイも詳しい事は風から聞けなかったが、さっきの坊が『竜巻』ていうざっくばらんな指示で風と相性がいい坊とその中にある風玉がありったけの魔力を使ってその分で動かせる最大の『竜巻』を発生させようとしていたようだ」

「ありったけ……ってまさか!」


 シャードが急に影に顔を突っ込むと影の中から「うわあぁー…」と呆れた声が漏れ出る。


「貯めておいた魔力の4割…2年分が無くなってやがる…」

「…え?」

「まあ、安心しなってさっき触って確認したが、その分の魔力の半分以上は風玉に変換したからさ」

「えっと、色々突っ込みたいけど、とりあえずさっきのは俺が原因?」

「…まあ、そうなるけども大ごとになる前に収めたから未遂って事で言わなきゃ何が起こったかは誰にもバレねぇだろうからさ」

「バレないって……まあいいや、あれこれ考えてもネガティブなだけだし、それよりありがとうティウラ」

「なーに、こっちも基本も教えずやらせたんだ、おあいこよ」

「とりあえずマスターは不用意に単語だけで風を使わないようにな」

「そうするよ」

「まあ、あれだけできるなら風と仲良くなるのはあっという間よ…あ、もちろん人間感覚でよ?多分」


 ティウラの言葉に不安を覚えながらも、その日はとりあえず威力調整のためにいつもの鍛錬を休んで費やした。

 今のままじゃ体が浮くどころか吹っ飛んでアホみたいな高さから落ちるなんて事も有り得なくないし……。


 なんというか生まれながらチートとかヤバい能力を持ってなくて逆に良かったのかもしれない。

 シャードの影やティウラの風を二人の助けなしに練習とかお試しとかして馬鹿したくないし制御できる気がしない。

 もうそこまで地球の知識は覚えてない…精々食べたことがあるくらいで自炊も社会に出てからバリエーションもなく、その多くを惣菜に頼っていたし、料理が趣味の後輩に何度か付き合ったが結局家じゃ作らずじまい……。


 あー駄目だ駄目だ、前世は前世、前世の後悔を踏まえて今はとにかくしっかりと夢のこの世界を旅することだけに集中して、そのための努力をする!

 その為にも学校に行って色んな言語を覚えたりしないとな、地球でも共通語はあっても現地に合わせた方が良いと思いながら翻訳機とか専門の人を雇って手間だったし…。


 あと4年もしたら試験だし、あまり家に負担を掛けないように最近は村で小遣い稼ぎして貯金(シャードの狩ってくる獲物が7割を占める)もしている。

 試験は兄さん達によれば筆記と実技と面接というか地球の時に見聞きした異世界ものと変わらない……もしかしてあの作者は異世界転生経験者か何か……いや、ないない…。


 実技は魔法でも武術でも得意な方で良いらしいし、筆記も俺は自信はないがウィス兄さんが言うには問題ないとのこと。

 面接は二人とも違う先生で内容は外に漏らさないように言われているからそこも心配だ。


 今はとにかく居合をもっと鋭くやれるようにしたり、仙力をもっと長時間出せるようにしたり、一通りの魔法がどれがどこまで使えるか試したり、ああ、あともっと木剣を量産してしっくりくるものを確実に作れるようにしたり……まあ、時間はあるし慌てず着実に身につけるしかないし、とにかく明日も頑張ろう………。

ここで第1章は締めようかと思います。

幕間を作るかどうか考えましたが、この物語はあくまで作者である自分が書きたい事を書き留めていく物なので思いつきだけで進んでいきたいと思います。


第2章は学園ですが予定(予想)では3章くらいに分ける長編のなると思いますのでまあ、のんびりと暇つぶしにでも読んでもらえれば幸いです。


それでは長くなりましたが次章もゆっくりお待ちください

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