影の本領
さてと、そろそろ本調子に戻りてぇし、ここらでいっちょ狩りするか。
マスターの父上殿の予想とこっそり影の中から見た地図からするとここだが……。
「(お、居た居た…ククク、火の周りで騒いでやがる)」
「(聞いてはいたが上位種が居るせいで殆どが進化済みか別種になってやがる……クヒヒ、久々…いや、初めてのご馳走にありつけそうだぜ)」
おっと、油断はせずじっくり偵察してから一体も残さず飲み込んでこんでくれる……とりあえずあの洞窟に行くか。
聞いた話じゃゴブリンのような群れる奴らは上位種になればなるほど知能が増すようだが、どこで覚えたのか戦技や魔法、さらには戦術まで使うやつもいるようだ。
しかも下っ端は大体が無から生まれるせいで人の手の入らない場所なんて魔物の源泉、1ヶ月もすれば村くらいは簡単に無くなっていてもおかしくない。
影の中だから襲われることも気づかれることもないが、仮に正面から狩人の1パーティが行けば、1時間保てばいいがあっという間に男は餌に女は……っと最悪だぜ、もう喰われてやがる。
「…………………」
「いや!!いやあああ!!!」
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたく…」
「(失禁)」
人間2獣人1に森人かよ………助けても、人間と気絶している獣人…あとは発狂している人間の方もダメそうだな…まあ、関係ねぇし、もうそろそろ食べ
「ねぇ…そこに誰か居るの…」
「(ん?森人…コイツも狂って)」
「今止まってくれたあなた、お願いがあるの…」
「(……どういう事だ…潜伏に気づいているのか?)」
少し考えたが、時間もまだ余裕があるし…仕方ねぇ。
殆ど明かりがないからさっさと柵の間を縫って近くまで寄る。
姿を晒すと面倒だから影の中から様子を伺う。
「ありがとう……お願いを聞いてくれるのね…」
「……その前に何故俺の事が分かった…」
「………………」
「……っち、まあいい、それで何かようか?外の奴らは今から狩るが………全員は助けられんぞ」
「分かっているわ…今ならまだ間に合うの、私の妹を助けて…さっき連れて行かれたの……お願い…」
「…………俺が何者か、それこそゴブリンよりクズな奴かもしれねぇ奴に頼むことか?」
「それでも今の私には何もできない……だから…」
「…ククク、いいぜぇ俺は悪魔だからな願いは叶えてやるよ、もう下げる事はさせねぇぜ」
「あ、悪魔……」
虚をつかれたのか目を大きく開いたのを見て自分がほくそ笑むのが分かる…さてさっさと見返りをどうするか考えておくぜぇ。
クククク、久々に悪魔の本業ができて楽しくなってきたぜ。
まだ行っていなかった通路を進んでいくと抵抗する声が聞こえて来る………。
「いや!!離して!!!助けて誰かあ!!!」
「ゲヒゲヘヘゲヒ」
「グゲグエゲゲ!」
「来ないで!!いやああああ!!!!」
…おっとまだ見ていたかった、このままいけば面白か……たが、もしマスターの耳にでも入ったら怒られるからな、チャチャっと
「(沈め)」
「ゲヒゲ……グヘ!?」
「ギギガ!!グゲゲゲ!!」
「!!!」
「(見た感じ騎士級2体だけか…こうなると騎士長級が居てもおかしくないな)」
「(これは本調子どころか前より良くなるかもな)」
そんなことを考えていると、騒ぎを聞かれたせいで遠くから足音が聞こえて来る……が、到着前には騎士級2体を完全に飲み込み終える。
「さてと、嬢ちゃん少しの間だけ大人しくしてな」
「え!誰か居るn」
「…よし、あとは」
「グガガガ!!グゲ!!!」
「ガガーガ!!ガガーガ!!!」
「(兵士級がぞろぞろと、まあいい纏めて食うか)」
夜目が効くからか松明すら持って居なかったのも合わさって、影を覆い被せてあっという間に誰も居なくなった。
さーてと、もう少し奥があったし行くか。
奥へ進めば進むほどそこらに金や宝石が散らばっている。
まあ、大方商人か狩人の持ち物だろう……まあ、どうでもいいが。
それよりもまさか騎士長級じゃなくて師団長級か…これは予想以上についているな。
マスターの本の中で出てきた金にきたねぇ貴族みたく着飾っていやがる。
「(それじゃあ、金と共に沈め)」
「!!ナ、ナンダ!!!ナニガオコッテイル!」
「(人の言葉まで理解できている……まあ、間違った進化だな)」
「ナゼダ!アトスコシデオウニ………」
「馬鹿がお山の大将が王になんて成れねぇんだよ」
さてとあとは残党を食ってから森人のとこまで戻るとするか…。
いや?今なら全然出来るな!そっちの方が早く終わる。
えーっと……………よし!ぬん!!
「グゲガギゴ?(なあ、なんか中の様子おかしくないか?)」
「ゲゴガガ?ゲゲ(やっぱりそう思うよな?中見るか)」
「グゲゲゲ…ガ?(ついでに人間も…ん?)」
「ゴゴガ(おいどうs)」
「おっし、これで全員か…いや〜これはこっちに来て良かったなぁ」
前より強くなったと実感できるし、ほんとマスターには感謝しかないなぁ!ついでに金目のものも全部取っておくか!
自身の影の中に全部収納して、足取り軽く上機嫌で森人の元へ向かう。
牢屋の前まで行くと俺が悪魔というのにも関わらずより縋って助けを求めてくる奴らはとりあえず影に入れて処理は後で考えるとして、牢を壊して森人の妹を出す。
「よう、お望み通り助けたぜぇ」
「…ありがとう…ございます……」
「お姉様!!おねぇさまあぁぁぁあぁあああ!!」
「当たり前だろうぅ?なんたって俺は悪魔だからな……なら、わかるよなぁ?」
「………………何なりと…でm「っつてな、残念だが俺は俺のマスターの願いしか聞かねぇし、俺はここに食事しに来ただけだからな!」え…」
「それにマスターならそういう甘いこと言うだろうからな、それじゃあさっさと帰るから影に入ってもらうぜ」
「…ほんとに、ありがとうございますっ…」
ゆっくりと影で包んでっと、いや〜大漁大漁!
ついでに帰りに肉でも狩ってきてお土産にでもするか!
魔物の階級について
魔物には2種類の習性があり、
ドラゴンのように個で生きるモノ
ゴブリンのように群れで生きるモノの2種類である。
群れで生きるモノの中には階級があり有名なのが王兵階級。
上から王級、近衛騎士級、師団長級、師団級、騎士長級、騎士級、兵士長級、兵士級、雑兵士級まであり、上に上がれば上がるほど能力の差が大きくなる。
王兵階級の特徴としては王級が生まれればその群れから新たに王級は生まれることがなく、また王級が死亡してもすぐに近衛騎士級が王級に上がる事はない。
なお、近くに同じ種族の魔物が群れを作ればどちらかに統合される事が多く、異種族であればどちらか一方が消えるまで争いが行われる。