悪魔を知らないのだが?
『悪魔にとって人は欲の塊』
『悪魔は欲から生まれるのだ』
『そのため、欲によって悪魔が生まれれば、その欲が人にとって悪であろうと悪魔にとっては善となる…』
『それでは、またどこかで…』
今日のお弁当はレタスのようなレイタスとダットの肉を挟んだあっさりめのサンドイッチだ。
贅沢を言えば、ケチャップかマスタード、もっと言えば照り焼きソースのようなアクセントが欲しいがある訳ないし、作り方も知らないからどうしようもないが、自分以外にも転生者とか居るだろうし誰かが作るだろう………それより、
「あうあえあい?(悪魔ってなに?)」
「ん?まあ、簡単に言えば召喚者の欲と適正が近いやつが行くきまりで…まあ、あんま適正と違うやつもたまに出て行くらしいが、それは置いといて、それに加えてここ130年くらい前に捧げ物がないと行く奴が居なくなって…まあ、俺は別になくても行かなきゃヤバかったが…まあ、なんだ、俺はアンタの声とか欲に惹かれて来たこの世界で言う亜人族に近い存在って奴だな」
「???」
「え?いや、そりゃあんなお粗末な召喚陣で出て驚くのは分かるが、俺としちゃあ渡りに船?みたいな奴だな、あのままだったら俺は上級の奴に消されてたし、アンタも俺が貰った下級の魔物に殺されてたしな」
「え、んん…どこで見てたの?」
「ん?まあ、こっちとあっちじゃ時間の進みが違うからな、丁度開いた瞬間に見て、どうにか小さい穴に出来るだけコアと一緒にこっちに来たんだよ、というかそろそろ契約の為の名付けしてくれよ〜
そうじゃなきゃ、ギリギリで消えちまうよ〜」
そう言って手を拝む様にして頼み込まれる。
よく見ると少しずつではあるが薄くなっている気がする。
しかし、悪魔ってどう考えても契約とか危なそうだよなぁ…。
「いやいや、全然危なくないよ〜、まず召喚者が居なくなったら困るの悪魔の方だぜ?フリーの悪魔なんて他の魔物同様でどんなに友好的でも殺されるし、そもそも俺の様な悪魔なんて召喚者がいねぇと1日も保たないで消えちまうから、な?頼むよ〜」
「うーん……ん?え、心読めるの!?」
「いや、そりゃあこっちに来たらとりあえず仮契約を結んですぐに消えない様にするのは悪魔界じゃ常識だぜ?とりあえず仮契約すれば相手の望む事がより詳しく知れるからな」
「え、じゃあ、助けてもらってあれだけど、家に魔物なんて連れてけないし飼えない?から帰ってもらえないかな?」
「うわお、辛辣!いやいやいや、今帰っていったらこの残り僅かの力もコアも上級の奴にボコされて完璧に消えちゃうからさ〜お願いだよ〜、俺便利だよ?」
「でもなぁ…」
「お願いお願いお願い〜」
「………契約に必要なのは名付けだけ?その後に魔力とか命とか取らない?食費とかもない?」
「ないないな…いや、まあ、できれば少し魔力が欲しいかな〜…あ、いや、欲しいです、出来るだけ少しにしますので…」
「…………分かったよ、と言っても名付けってどうしようか…なんかその悪魔界?で居た時の名前とかないの?」
「俺みたいな下級なんかには名前なんてものないし、上級でもそんな奴の方が少ないんだよなぁ」
「そっかー……どうしようかな」
「ほら、こうあるでしょ?なんでもは嫌だけど、こうカッコいいやつとか」
「嫌なんだ……まあ、じゃあ、僕の名前の由来の一つのヴェリルシアスノイドから取って、シアド…いやシャードかな?」
「おお、おおお!」
シャードと決めると、悪魔…シャードが少し光だし、それと同時に俺から魔力が取られる感覚に襲われる。
まあ、少しって言っていたが、その少しがどれくらいか聞いてなかったし、聞いても分からないか…
「おお……っと、危ない危ない、マスター大丈夫か?」
「大丈…ばないかな……もうあまり魔力取らないでね、身長とか止まるの嫌だし…」
「ああ…にしてもマスターってばなんかすごいのな?」
「え?何が?普通の村の子供だよ…」
「いや、まあ、そうだけど…え、もしかしてすごい魔術師だった?」
「はぁ?何言ってんの?」
「だって、転生してんじゃん、そう言うの契約して分かるから隠さなくてもいいよ〜」
「え“」
「いや〜、すごいね…いや待て?それだとあの召喚陣はお粗末だったしなぁ」
急な事にシャードの方を見たが、さっきと比べてはっきりと姿が見えるし、なんなら色は真っ黒過ぎてその場所だけ夜のようになっている様に見える。
「ちょっと待って、俺が転生者って分かるの?悪魔って」
「え、まあ、俺は初めてだけど、普通はコアが悪魔界にあってたまに帰ってきて話を盗み聞きしたけど、契約者が元聖職者だったーとか、俺の体を解剖しようとするからうざいーとか」
「マジか…シャード?一つ約束して?」
「ん?全然聞くぜ?なんたって俺にとっちゃ契約切られたら死活問題だし、戻る方法もほぼ不可能だから聞くぜ〜」
「ぜっっっっっっっっっっったいに、僕が転生者って言うのは言わないで!!」
「ん?まあ、無理難題じゃないから聞くぜ?」
良かった…そうじゃなきゃ、いつ言われるか分からないし、家族にそんな事話されたら………まあ、困るのか?
とりあえず、帰ってどうにか父と母に許可取……れるかなぁ?
まあ、もう疲れたし帰るけど…
「今そのまま帰ったらあれだし、どうにか隠れられないかな?」
「できるできる、まあ、これが俺の能力なんだけどな」
そう言うと、俺の影に触れると俺の影が水面の様に揺れてシャードがそこに溶け込んでいった。
そして、完全に溶け込むと腕だけ出してサムズアップしてきた。
「これが俺の能力で影に溶け込む能力だ、まあ、魔力量が多くないと俺とマスター以外はそんなに多く入らないし物しか入らないから微妙に使いづらいんだよなぁ〜」
「へー…て言うことは今って」
「ああ、めっちゃぎゅうぎゅう、これ以上もの入らない…元の俺だったら全部入らなかったから怪我の功名って奴?」
「……まあ、頑張って魔力量は増やすし、それなら目に見えて増えるのが分かるか?」
「頑張って広くしてくれたら荷物とかこっちに置けるから頑張ってくれよ〜」
そして家に帰って父と母、そしてウィス兄さんにシャードの話をした。
そのシャードは今、みんなの目の前で正座させられている。
「って事があって…」
「…ヴェス、その悪魔に何もされてないな」
「うん、何もされてな…あ」
そう言えば魔力そこそこ取られて疲れたし、全く何もされてないわけじゃないよな?
「何かされたんだな」
「ま、待ってくださいよ!契約の際に魔力を分けてもらっただけですって!俺だってあっちでギリギリで捧げ物の魔力とマスターの魔力で姿が保てるだけしか取ってないですよ!」
「と、言っているが本当にそれだけか?」
「うん、取られて疲れたけど他には何も要求されてないよ?」
「そうか…」
「まあ、いいじゃないの?別に悪さする子には見えないわよ?」
「悪魔って真っ黒なんだね、初めて見るからびっくりしたよ」
「そうなんだよウィス兄、シャードはね、影に溶け込んで物をしまえるんだって!」
「へー、そう言えば影から出てたね」
「………分かった…が、ヴェス」
「何?」
「もし、そのシャードが変な事しでかしたらヴェスが制御しなければいけないし、村や街では出してはいけないぞ、それが守れるか?」
「うん!シャードも良い?」
「もちろんですとも〜それにいざと言う時は体を張ってマスターをお守りしますのでそんじょそこらの下級には負けませんよ〜」
「なら良い、シャード」
「は、はい!」
「成り行きとはいえヴェスを助けてくれてありがとう、認めた以上はシャードも家族として迎え入れる」
「シャード君ありがとうね」
「シャードさん、後で体に触っても良いですか?」
「良かったね、シャード」
「…いや〜なんだか気恥ずかしいなぁ〜」
と言って頭をかいて顔?がにやけている様に見えた…。
とにかくシャードが居れば魔力量がどれくらい増えたか分かるようになって俺としても得してよかったよかった……。
設定メモ
悪魔について
悪魔の殆どが人の欲望から生まれるとされているが、
ゼロから生まれるのではなく、
コア+悪魔界の魔素+欲望=悪魔
となる。
そのため、殆どの悪魔がコアもしくは本体を悪魔界にあり、
殆どが召喚者が呼び出すたびに悪魔界から来る。
悪魔界にいる間は体力を回復したり、契約者が気に入らなければ呼び出しに応じないと言う事などをしている。
なお、シャードの場合ではコアが悪魔界ではなくコアごとこちらに来ているのでこちらの魔素か主人公の魔力、もしくは食事で回復するしかない。
それでは、また次回