海の底へ
明日の朝には西に向かうよ。
なぜ?
そんなことは僕にも分からないよ。
でも行かなきゃいけないんだ。
君も時期が来れば分かるよ。
ここから出たことがないのに恐くないの?
恐い・・・、いや、恐くもさみしくもないよ。僕はただ早く西へ泳いで行きたいんだ。
まだ空が暗いうちに目を覚ましたミロンは太陽を待った。
仲間たちは雲の上で寝ている。
ミロンは太陽が頭を出すと同時に尾びれを3回振り、スーッと進み出した。
これまで住んでいた空を離れるのは初めてだった。
毎日ただただ西へと泳ぐ。
朝陽に起こされ、昼間の太陽に元気をもらい、夕陽に今日を労ってもらう。夜の月や星の光は心と体を癒やしてくれた。
3週間泳ぎ続けたミロンの前方にようやく目的地が見えてきた。
満月の夜にだけ開くその穴に360度全方向から魚たちか押し寄せている。次の世界への入口だ。
次々と旅立って行く。
ミロンも流れにのりその穴へと飛び出した。
海へと進路を変更する。頭を下に向け加速する。
満月に照らされた魚たちはきらきらと輝き空と海を繋いだ。
海に来て月日が流れてもあの時のような衝動は無かった。
ミロンはやめた。
待つことをやめた。
きっと何も無い、そんなことはかなり前から分かっていた。
海の底へ向かう。
今度は自分の意志で。