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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

イケメン勇者栗原りこ(♀)と、百合指向な私がイチャイチャするのはBLなのかGLなのか

作者: ました

1/30 誤字脱字修正

 百合。女性同士の恋愛や、それを想像させるような描写。またはそれらのある創作物。別にGLとも言う。


 たとえば女の子同士がお風呂できゃっきゃうふふと楽しくお話しするだけでそこが素敵な花園になる世界。


 百合指向な私の頭の中では、今一緒に大きなお風呂に入っている幼馴染みの彼女もその対象である。




「は~、今日の試合はキツかった~。わたしもう腕ぱんぱんだよ」




 1日の疲れを流すお風呂が唯一の心の癒しであると、私の愛しの幼馴染み栗原りこは、湯船につかりながら私のすぐとなりでほっこりと宣言した。




「明日は絶対筋肉痛になる。チィちゃんは大丈夫?」


「私は元から運動部だからねー」


「うらやまし~」




 癒し系ゆるふわ幼馴染み栗原りこは、チィちゃんこと私、宮石ちあきのことも心配してくれるよく出来た幼馴染みである。


 そして私もその優しさに最大限の感謝を示すことにしている。




「ふっふっふ。仕方ないなー、そんなひ弱な栗ちゃんに私が筋肉痛回避マッサージをしてあげよう!」


「うぇ!? いらないよ!?」




 よく出来た幼馴染み栗原りこはとても慎み深い。私がマッサージをしてあげようとするといつもすぐ断りを入れてくるので、私もいつもにこやかにそれを断るのだ。




「大丈夫大丈夫、痛くないから」


「そうじゃなくてくすぐっ……くっ、くすぐった、い、あははははっ」




 そして毎回嬉しそうに笑ってくれるので、私もとても嬉しい気持ちになるのである。


 ちなみにマッサージの効果のほどは自分や栗原りこその他で実証済みなので疑う余地はない。くすぐったがるのもただ彼女がくすぐったがり屋なだけである。




「だっあははっ、だ、だからっ……く、くすぐったいからやめてってば~!!」




 と、勢いよく立ち上がった癒し系幼馴染み栗原りこが私の魔の手から逃げ切るまでがひとつのマッサージセットとなっている。ただし今回いくつか難があったとするならば、ここがお風呂であり、湯船の外にお世話係の女の子たちの目があって、さらに栗原りこが立ち上がってしまって、またさらに付け加えればここが異世界であり、私と彼女が、今、男の体である、と言ったとことであろうか。


 よく出来た幼馴染み栗原りこがお世話係の女の子たちに気付き、その視線の先を察した後に発した悲鳴が「ひゃあっ」であったことは、異世界男性基準でも元世界男性基準でもセーフなのかアウトなのか判断がつかないが、幼馴染みの女の子栗原りことして再生されるならセーフだ。むしろグッドだ。




「やっちゃった、なんでこんなことに……」


「まーまー、人生いろいろあるよ」


「チィちゃんがくすぐるから~」




 栗原りこは少し抜けている。その体が今、完全なる男であることを除けば、いたって可愛い幼馴染みである。






 私と彼女が異世界に来たのは、数週間も前になる。


 突拍子もなくこちらの世界の神が私たちの前に現れて、奴は「勇者になってくれ」と言い、異世界に着くとなぜか男になっていた。異世界に来る前に「勇者用の体にしとく」とか言ってた気もするけど定かじゃない。私が安請け合いしすぎたんだろうか。この世界の神って奴は、男女差別もしないけど、男女区別も出来ないらしい。


 ともかく、私、宮石ちあきと栗原りこは異世界に勇者(♂)として降り立った。

 そしてあれよあれよと言う間にお世話係を付けられるような生活である。割愛。






 先ほどの事件によって栗原りこは「お嫁に行けない」とぼやきながら羞恥心と戦っている真っ最中ではあるけども、(と言うか勇者の体じゃそもそもお嫁には行けないけども、)正直お世話係の女の子たちはきゃっきゃしてまんざらでもなさそうなのが面白いところである。


 そう、正直、勇者はモテる。


 私と彼女は言うなれば神特製のイケメン勇者である。幼馴染み栗原りこが中性的爽やかイケメンであれば私は色黒チャラ系……ん? 小麦色? よくわからないけどイケメン勇者だ。


 彼女が初めてイケメン勇者となった自分の顔を見た時は「やだどうしようチィちゃん、すごいイケメンになっちゃった!」ととまどい半分ドキドキ半分で喜んで(?)いた。


 私はそのはしゃぐ様子を見て、彼女の元の姿としぐさをありありと思い描けて「コレ栗原りこだ」と完全に認識出来たのである。


 私と栗原りこは、勇者の体にとまどいはしたものの、どうにか慣れることは出来た。私に限って言えば、モテることよりも女の子に気軽にスキンシップ出来なくなったことにショックを受けていた。男がいきなり女の子に抱き着いたら普通にセクハラだ。それだけじゃなく、軽々しく女の子にスキンシップしようものならイケメン勇者が作用してお付き合いを匂わされたり一夜を所望されたり、さらには相手に失神されたりと色々と大変なことになった。


 今、私が女の子と認識出来ていて軽々しくスキンシップを取れるのはイケメン勇者栗原りこただ一人である。ちなみに私の脳内では元の声と姿で完全再現可能になった。


 しかしここで問題になるのは、私と彼女が傍から見れば男だと言うことである。女の子同士では大したことではなくても男同士では大したことになることは往々にしてあるのだ。スキンシップであったり言葉ややり取りであったり、一時期はいつも一緒にいるだけでも付き合っていると怪しまれてた節がある。


 それを打開したのは、やはり出来る幼馴染み栗原りこであった。




「2人って男同士で、夜の方はどうしてるんだ?」


「え?」


「付き合ってるんだろ?」




 それはお偉いさんのぶっこんだ質問だった。そいつはアホだった。それを聞いた私は唖然。ウブな幼馴染み栗原りこは顔を真っ赤に染めて、口をパクパクした後に叫んだ。




「チィちゃんは、距離感が近い子なんです!!!」


「は?」




 私について彼女はとにかく思いつく限りのことをペラペラシャキシャキと話した。曰く、私はとても寂しがり屋であり、知っている人が一人しかいなくなってスキンシップが過多になっているとか、本当は女の子の友達が大勢いて(いるけども)、栗原りこはただの幼馴染みである、と私を少し可哀そうな子に仕立て上げた。実際イケメン勇者栗原りこは女の子にも節度ある距離を保てていたので、問題点は私個人の女の子とのスキンシップ不足だけである。


 一方私はと言えば「こっちの世界では触ると女の子が失神する」とか「男には興味ない」とか「栗ちゃんは幼馴染み」とか援護射撃とも言えないことを言ったまでであった。


 とはいえ、逆にその件で私と彼女に一定数のBL支持層がついたのである。元は百合なのにBLとはこれいかに。


 そもそも私が今勇者の体で女の子と仲良くなったらノーマルなのか百合なのか。幼馴染み栗原りことどうにかなったら果たしてそれはBLなのかGLなのか。いやむしろこのままの方が栗原りこは攻略しやすいのかもしれない、私だってイケメン勇者だもの。って、いやいやいや。




「と言うか諸々どうでもいいから柔らかい女の子に抱き着きたい! きゃっきゃうふふとガールズトークがしたい! 私はいいとしてもせめて栗原りこをふわふわ可愛い女の子に戻すことを要求する!! 姿を見せろ異世界神! 今すぐ!」


「今すぐは嫌かな、服着てないし。と言うかなんの話をしてるの、チィちゃん? お世話係の子たちの話聞いてた?」


「え? なに?」




 いつの間にか自分の世界に入り込んでいたらしい。イケメン勇者であり可愛い幼馴染み栗原りこは羞恥心から立ち直っているし、お世話係の子たちは洗い場からいなくなっていた。




「夕食の時間だからもう出てね、って。みんな脱衣所に行っちゃったよ」


「ありゃ」




 とりあえず私の盛大な独り言を聞かれなくてよかったけども。栗原りこの姿と声を完全再現可能になった私の能力に未だ難があるとするならば、あの柔らかい感触が再現出来ないことである。


 異世界神、早くイケメン勇者栗原りこを柔らかくて可愛い女の子に戻せ!

(こいつ、きっと勇者能力を「幼馴染み再現」に割り振ってる……ガクブル)

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは面白い設定ですね! こういうBLもあるんですね。なんかすごいです。 感服しました。
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