9、盗難対策は異次元格納で
出たよ、出ちゃったよ刀。
みなさん、私はついにやりましたよ。刀、出せたんですよ。
周りには誰もいないけどね。
でもなんで?「出ろー」って言ったから?それとも念じたから?
…反対に、「消えろー」ってやったら消えるんだろうか。
「刀よー、消えろー。」
すぃー
「消えたー!」
どういう仕組みなんだろう。異なる次元にしまってるとかなんだろうか。
そして、刀が出たということは…
「いでよ、鎌ー。」
すぃー
出た出た、私の身の丈以上の鎌が出てきましたよ。
そう、お庭の草刈りに使うような小さいやつじゃなくて死神さんとかが持ってそうなやつ。
大鎌、かっこいいなぁ。
というかこれ、どこまでが私の指示の届く範囲なんだろう。どこかに置いてきても「消えろー」ってやってから「出ろー」ってやれば手元に来るんだろうか。
「狙ったー、獲物はー、逃がさないー♪」
少し離れたところに生えている木をめがけて大鎌をぶん投げる。
システムさんのアシストのおかげか狙った通りに刺さる大鎌。
「消えろー。そして出ろー。」
すぃー、すぃー
消えて、即座に私の手元に現れる大鎌。
「便利、圧倒的便利!」
はしゃぐ私。
しばらく遊んで、どうやら直接言わなくても念じるだけで出し入れできることがわかった。あと、今のところ消すのに距離的な制限がかかることはなく(投げれるだけ遠くに投げても消せた)、見えている必要もないらしい(投げた後うしろを向いていても消せた)。
浮かれていた私だがふと気づく。この武器、もしも壊れたらなおせるのだろうか。材質も製法も謎に包まれたユニーク装備、爺さんのことだからすぐに壊れるようなものではないだろうけどレーザーのことを考えると安心はできない。もしも戦闘で使う場合は切り札的な運用を心がけよう。
となると、早めに普段使いできるような代わりの武器を手に入れなくてはならない。どこかに落ちてたりしないだろうか。あるわけないか、そんなこと。
異世界ラノベのよくある展開で考えるなら洞窟とかダンジョンとかですごい装備をみつけるのだが、そんなことあるわけないよなあ。
とりあえず、リスが出てきたのと反対の方に進んでみようかな。リスが人里からやってきたとは思えないし。いや、この世界ではひょっとすると人里からくるのが常識かもしれないけどそんなのわかりっこないし。進む方向を決めたらさっそく前進だ。
「出発ー。」
街が見つかるといいなと思いながら、私は意気揚々と歩き出す。
あ、私お金もってないや…。
一転、しょんぼりしながら歩くのだった。